ラクな座り方 | 音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

♪アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

先日のワークショップに参加してくださった私の古い友人でもあるピアノ教師のMさんは、
今回初めてアレクサンダー・テクニークを体験されました。

 

彼女の相談は
「生徒さんのレッスンで長時間座っていると、とても疲れてしまう」ということです。

途中で姿勢を直してみたり座り方を工夫してみたりしても、どうすれば楽に座っていられるのかどんどんわからなくなり、日常生活の中でも楽に座れなくなってしまったそうです。

 

普通、立ちっぱなしで疲れたので座って休む、というのはよく聞きますよね。

座っていて疲れてしまうというのは、実際には結構たいへんな問題ではないかと思います。

いつでもどこでも寝ころがれる環境にいられる人はそう多くないですよね。
(ちなみに、ボディチャンスのスタジオではどなたでも結構気軽にコロンと横になれますよ。笑)

 

ワークショップではいつも最初に「頭と脊椎(胴体)」をよりよいバランスにすることで、全身のバランス調整機能が上手く働き出すことや、それによって体重が骨格によって支えられるようになり、表面の筋肉での頑張りが減らせることをお伝えします。

そして立つ姿勢でその楽な姿勢バランスを体験していただくのですが、
椅子に座るときもそれと同じプロセスをたどって、脚のかわりに坐骨に体重をのっけるようガイドします。

 

Mさんの座り方を見ると背中が少し反り気味で、骨盤が前に倒れています。

アレクサンダー・テクニークを意識して頭の重さを脊椎にじょうずに乗っけても、
ここで坐骨にうまく乗れないことで腰周りの筋肉がより働くことになってしまいます。

座っていても、姿勢を支える為に筋肉が余分に仕事をするせいで疲れてしまうのです。

 

 

「良い姿勢」の意識がとても強いMさんはなかなか骨盤を緩やかに立てることができず、
坐骨に体重を乗せることが難しいようでした。

 

そこで、尊敬するK子師匠直伝「私の手の上に座ってみて~」をやってみました。
坐骨の感覚はそう鋭敏ではないので
椅子の座面におしりの骨のどこが接しているのか分かりにくい時があります。
坐骨の下に手を入れて手のひらの上に座ってもらうと、
私の手の骨の感触を感覚の鈍いおしりの骨でも捉えることができます。

私の方でも、手に「ごつっ」という坐骨の感触があり、
そこへかかる重さがぐっとふえれば体重が乗っかった証拠です。
「これこれ、これで坐骨に乗りました」「あ!わかった!ここですね!」という感じです。

(この実験は女性同士、男性同士、お友達など、抵抗なく試せる人間関係であれば可能ですね)

 

で、改めて椅子に座り直していただいて順番にガイドしました。

・首が緩んで、頭が繊細に動けて身体全部が協力してくれることを思いましょう。

 

・頭が本来の高さにふんわりとのっかって、体重を骨格が支えてくれて、それが坐骨にのっかります。

 

・骨盤を含めた上半身をひとつながりだと思ってみて。

 

・お腹や背中の余分な緊張を手放して、骨盤の傾きを微調整しながら坐骨の上にふわりと乗ってみよう。

 

・頭は常に上方向へふわふわと行きたがっているように。

 

・そして呼吸に合わせて肋骨もいきいきと上下動をさせてあげましょう。

 

Mさんは「とってもラクです。これなら長く座っても全然疲れなさそう。」
とニコニコしてくれました。


さらに、Mさんは生徒さんの横に座ってお手本を弾くときに、鍵盤に手を伸ばすのが大変で腰が痛くなるということでしたので、その動きも一緒に探求しました。

 

すでに坐骨の上にうまくのって座れていることで、
股関節の可動性がかなり良くなっています。


上体を鍵盤の方へ移動させるのがとてもスムーズに行くようになりました。

腕の可動域を解剖学の情報を使って確認したあとは、全身が必要なだけ動くようになり、楽に遠くの鍵盤に手を届かせることができました。

 

上半身と下半身のつなぎ目にある「骨盤」はカラダの要(かなめ)のようなものだと思っています。

骨盤が適切な角度になっていないと、カラダのいろんなところの動きを阻害します。

もちろん「頭と脊椎」がより良いバランスであることが最優先で、
その良い状態を骨盤まで伝えてあげることが全身の動きやすさ、ラクさにつながると思います。

 


Mさんはピアノ教師ですから生徒さんにも自分にも「良い姿勢でピアノに向かう」ことを意識するよう言ってきたと思います。

その「良い姿勢」が実は実際の身体の構造からすると少し不自然なバランスだったので、どうしても疲れが出てしまっていたのです。

 

 

これは日本の学校教育の中に根強く存在する「きをつけ!」の姿勢がもとになっていて、それが『良い姿勢』とされていることが原因です。

この件については数々のアレクサンダー教師が事あるごとにその危険性を伝えています。

 


「きをつけ」の害についてはまたいずれ書くとして、みなさんにお聞きしたいのは
「きをつけ」でずっと立っていることを長く続けられますか?
また、それはラクですか?

「きをつけ」がラクな姿勢であってはいけないとすれば、
「良い姿勢」とは人間にとって辛い姿勢ということでしょうか?


きっと違うと思います。身体に負担をかけない良い姿勢だってあるはずです。

本来の骨格に体重を任せて適切なバランスで座ると、それはとてもラクですし、
「良い姿勢」でもあります。

 

 

文章で伝えることは本当に難しいので、もし具体的に体験されたい方は、ぜひアレクアンダーのレッスンを受けてみてください。

 

立つこと、座ること自体の負担が減ることで、人間がどれだけ「やりたいこと」を楽しくラクにやれるようになるか実感できると思います。

 

 

~Mさんからの感想メール~

 

順子さんのブログを時々読んだりしていてアレクサンダー・テクニークには興味があったので、今回ワークショップに参加できてよかったです

 

順子さんに触ってもらって頭の位置を直してもらった時の感覚は(順子さんも言っていたように)数日たってしまうともうわからないですが(泣)、最近は日常生活の中で力みそうに(?)なると頭に力が入らないようにと時々意識しています

 

座り方を直してもらった時は本当に感じたことのない不思議な感覚で身体がすごく楽になって、これならずっと座っていられると思いました
 

他の方々のレッスンもとても興味深かったです。

体と心(気持ち?)のつながりの深さも、改めて考えさせられました。

また順子さんがみなさんに自分自身や自分の身体をもっと信じて、というようなことを言いながら話かけていたのが印象的でした。

 

ちゃんと自分で良いものを持っているのに、いろんなもの(特に外的要因や自分自身?)に縛られたり、邪魔されたりしていただけで、それから開放されたらほらできるじゃないって感動しました。
 

体の仕組み(骨や筋肉)も理科や保体の授業でやったくらいで、実際にどんな役割でどう使うのか意識したこともあまりなかったので、これからは知識として知っていることを少し使えるようになれればいいなと(腕はどこからとか)思いました

 

雰囲気も和やかで、あっという間の3時間でしたすごく楽しかったです
ありがとうございました! (M.Sさん)


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慣れないとすぐにいつもの姿勢バランスになりがちなのは普通のことです。

頭の位置を「正しくやろう」と探すよりも、Mさんのように気づきを大事にしていくと良いと思います。

 

Mさん、こちらこそご参加ありがとうございました!
 

 

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楽に座る1