以前に読んだ本を読み返してみる春です。
「The Mousewife」by Rumer Godden
日本語でも「ねずみ女房」という題名で石井桃子さんによる訳が出ています。
ここに出てくるのは、「普通の」ねずみの奥さん。夫がいて、子どもたちがいて、日々の暮らしを忙しく過ごしています。
その彼女が、ある日心を奪われるようなことに遭遇します。
そして、自分の全身全霊をかけて、大きな大きな体験をします。
深い深い感動をもたらす体験は、時として普段のありふれた日常生活を忘れさせてしまうような強い力を持っています。
ですがそれに溺れるのではなく、同時に現実を生き抜いていかなければならない。ねずみに仮託してありますが、それが人生というものなのでしょう。
これ以上真摯に、「普通の」女性の生き方を扱った物語を私は知りません。それほど私が愛着を持ってやまない本です。
かつて少女であった一時期を持つすべての方へ捧げたい、素晴らしいお話しです。