【本棚から】日本人が知らない、日系アメリカ人の英語絵本を少々。中篇 | 英語よみきかせの講師育成。英語で世界の絵本を紹介するDJ!Ms.Miyuki

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日系アメリカ人が書いたすぐれた英語絵本(原書)について。もう一冊。

Grandfather's Journey
By Allen Say
ISBN 978-0-547-07680-5

こちらは自分のおじいさんのことを書いた本。ダイバーシティを尊重した教育がお題目ではないカリフォルニアの学校で、私の子どもも小学校の時に読んだことのある本です。

若い時にアメリカで過ごした日本生まれの日本人の、筆者のおじいさん。日本に戻ってきて若いころからの許嫁の女性と結婚し、サンフランシスコでの生活の中で著者の母である娘さんを授かります。

家族三人のアメリカでの生活。でも望郷の思い断ち難く、一家はもうお年頃になっていた娘さんを引き連れて日本へ帰ります。

生まれ育った場所から引き離されて、父母の懐かしい故郷とはいえ、日本の国に住まわされることになった娘さんのことも気になるところですが、彼女の生きた様も、別の作品で美しく、静謐に語られています。

カリフォルニアでの日々を愛おしみながらも日本で暮らして落ち着きを迎えようとするとき、家族の生活も第二次世界大戦に翻弄されます。

すっかり老境に入ったおじいさんと、孫の筆者が最後に会ったとき、おじいさんはどうしてもカリフォルニアにもう一度行きたいといっていたそうです。

日本で生まれ育っていた筆者は、もうすぐ大人になろうかという時に、まるでおじいさんの人生になぞらえたかのように、日本を離れます。

そして筆者のlife long journeyは続いていくのです。

おじいさんのホームタウンは小さい村だそうですが、当時アメリカへ渡ることが出来た人の多くは、次男や三男ではありますが実はそれなりに資産はある階級の方。ただで船に乗ったわけではありません。私たち日本人の多くは漠然と、出稼ぎや人減らしのような印象をもっている場合が多いと思いますが、その偏見も正されるべきところです。

また、日本にしか生活していなかったらなかなか実感がわかないのですが、外国であっても、ひとたび足をつけて生活していくうちにはおのずから愛着は育っていくもの。日系人を「いつか帰ってくるつもりだったのに帰ってこなかった人」だったり、「日本よりアメリカのほうが好きになってしまった、出て行った人」と思うのなら、それは大きな間違いです。人にはいろいろな事情があります。

何年日本に住んでいる人でも、外国人で、それが扱いにくい人であれば「帰れ」という言葉が(冗談であっても)こぼれてしまうのを目にするたびに、日本の国の持つ無意識の残酷さを感じることがあります。日本人同士でならそんなこと、言わないですものね。

日本政府は二重国籍を認めていないので、日本人の中には、日本国籍を放棄して別の国籍を取得する人が時々いらっしゃいます。この方たちを指す言葉は行政用語で「元日本人」です。私の日本人の友達がアメリカ国籍を取得したら「日本人」から「元日本人」へ。行政とはそのようなものなのかもしれませんが、

私には、本当に違和感のある言葉です。