私は髪の毛がつるつるになっても私だろうか。
ものすごく痩せてやつれはてても?人相がかわるほど太っても?顔に深刻なダメージを負っても?
あるいはものすごい宝くじが当たって(その前に買わなくてはですが)億万長者になっても?
それでももちろん、私。私に決まっています。
そんなことを考えていると、昨年子どもと一緒に読んだ一冊の本へと連想が浮かびました。「夜と霧」。アウシュビッツサバイバーの人が書いた本です。
いきなり連れてこられた収容所で、全裸にさせられて建物の中まで走る白人女性の写真。混乱と不安の中にある彼女の姿は心を刺すものですが、このあと彼女たちがたどる運命はどこまでも過酷。髪の毛やメガネはおろか一切のものをはぎとられ、毒ガスで動物のように「駆除」されたり、極端に劣悪な環境での生活の中で、ついには痩せこけて枯れ木のようになって朽ちていった大勢の人の運命。地獄とはこのことかと思いますが、昔々のおとぎ話ではなく、ほんのつい先ごろに、本当に起こったこと。
そのような状況にあって、この「夜と霧」の著者のまなざしは、人が人であることの最後の砦が「精神/spirit」としかいいようのないものであることを感じさせてくれます。
私がこの本を読んだのは、高校一年生の夏休みに子どもがこれを読んでレポートを出すという課題を与えられたから。神保町まで一緒に本を探しに行って、気になったからです。
こんな「骨のある」宿題を出したのは現代社会の先生だとか。たいしたものだと、密かに尊敬しています。
私には、人に愛着を込めて思い出していただける「トレードマーク」はありません。
その分しっかりと「精神/spirit」を磨いていきたいと思います。
夜と霧に書かれたユダヤ人の置かれた理不尽な扱いには胸が痛むばかりですが、希望もあります。
実はナチスドイツの占領下にあったヨーロッパで、ダッハウユダヤ人強制収容所や各地の村や町を、日系アメリカ人の部隊422が解放し、今でも現地で深い尊敬を受けていることを、日本人はあまり知らないと思います。
私も映画を観るまで、知らなかったことです。
家族を日系人収容所に残したまま、根強い人種的偏見のため他の部隊では考えられないほど前線につぐ前線の戦いを強いられながら、持ち前の勇猛果敢さで「自尊心」を守った、誇り高い戦士たち。
どのぐらい尊敬されているか。
帰還の際に現職の大統領から直接出迎えられた唯一の部隊であるという事実が証明しています。本当に、史上最強のアメリカ陸軍部隊なのです。
私たち日本人が「日本人らしく」ある強みが、形を変えて美しく結晶したのが彼ら「誇りある」日系人の受け継いでいる「精神/spirit」だと思います。
こちらもオンリーイエスタディ。20世紀が残した遺産を、21世紀に私たちがどう受け継いでゆくのか。そんなことを考えました。