
ここのところまたモンテッソーリ教育に新しくスポットライトが当たりはじめたのでしょうか。このような本を手に入れました。私たちはモンテッソーリ教育のおよそ100年の歴史を実績と自負していますが、新しい教育方法はそれ以上にアップデートされたものだと思う方ももちろんいらっしゃいますからね。
黄色い表紙の新書は、福岡教育大学の永江誠司教授という方がお書きになった本。神経心理学という、脳の機能的な側面から心理の領域を扱う学問の先生のようです。ですのでこれは、モンテッソーリ教育者が自画自賛したものではなく、神経心理学・発達心理学の先生が脳の機能と発達の観点からモンテッソーリスクールで行われている教育の理由を探り、解説なさっている本です。
モンテッソーリ教育についてきちんと理解を深めて解説いただいていることがよく分かります。以前に私が、誤解の多い言葉と書いた「敏感期」についてもきちんとした説明がほどこされていて好感が持てます。
ここに書かれていることは、きちんとした水準のモンテッソーリ教育が行われている現場であればどれも当たり前の光景。私たちモンテッソーリティーチャーが行うのはお上品教育でも天才児教育でもありませんが、うまく環境が整えばまるで「まれにみる(?)天才児のたくさんいる光景」と見る人がいてもおかしくないほど高度に社会的な関係が、自己中心的と思われがちな幼児のクラスでも形成されることがあります。またモンテッソーリティーチャーならば当然それは目指すべきこと。天才児を量産する意図ではなく、子どもひとりひとりがもって生まれた可能性を広げていくお手伝いとしてです。
自由闊達さこそが第一、という視点の方からみれば、モンテッソーリスクールの持つある種の静謐な環境は子どもらしさが抑圧された静寂と受け取られるかもしれませんが、すべてのお子様とはお約束出来ないまでも、多くの子どもは自己を抑制するということにも楽しみを見出すものです。もちろんその子の発達の段階にふさわしいアクティビティが提供されたうえでのことではありますが。ためしにお子さんにこれ以上無いというほど小さな小さな声で話しかけてみたり、目をつぶってもらって安全ピンを床に何本か落とすような微細な音を出し、その音が何回聞こえたかあててもらうゲームなどをやってみてください。面白い発見があるはずです。
私はモンテッソーリ教育こそが世界一だとお約束することは出来ません。教育には王道は無いからです。また、きちんと運営されていないモンテッソーリに通わせるくらいなら、他のスクールに通わせたほうがいいかも。モンテッソーリならば良いはずだというのは思い込みにすぎません。
ですが、きちんとしたモンテッソーリの環境でならば、お子様の持って生まれた才能をきちんと伸ばすお手伝いが出来るということは、申し上げることが出来ます。
お子様のスクール選びの選択肢にモンテッソーリをお選びになる場合も、普通のスクールをお選びになる場合も、教育については専門家の意見は参考にしつつも、ご自分の直感を生かしつつお子さんの様子をじっくり見て、性急な判断を下さないことを強くおすすめしておきます。
子育ては先が長く、ある意味一生続くもの。小手先のハウツーに飛びつくのではなく、その理念をしっかりと理解する我慢強さがなによりも求められると思っております。