この震災のとき、私の住んでいるさいたま市もずいぶん揺れたわけですが、全国各地の被害状況が明らかになってきてからも私は心の中ではどこか楽観的な部分がありました。
余震はまだ起こるにせよ、最悪の時期は過ぎた。ならば今はどれほど大変でも、あとは復興するだけ。だから、自分の本分を守ってがんばっていくだけだ。
そして、まずまずは平穏だった暮らしが戦争に突入してから何年にもわたって状況が悪くなっていった第二次世界大戦の経験者に比べれば、なんということは無い。
日々の状況が下り坂になっていく不安の中での何年にもわたる生活は、どれほど精神的にきびしいものだったであろうか、と思う気持ちがありました。
しかし、余震はあの大地震から一か月たった今も被災地を苦しめ、原発の状況も悪化しています。
震災後すぐにレベル7と発表があったら、良きにつけ悪しきにつけ、今の状況とはずいぶん違うことになっていたでしょう。
相手は目に見えず、すぐには影響を及ぼさない放射能。
冷静に、かつ迅速に自分や家族、社会の安全を守るために何が出来るのか、考え続けることの難しさが、しみじみと湧き上がってきます。
決して放射能こわいこわい、とパニックになっているわけではありません。
”ファインマンさん”シリーズのユーモラスなエッセイで知られる20世紀を代表する物理学者のひとり、リチャード・ファインマン氏はロスアラモスでマンハッタン計画に関わった人ですが、そのひとですら「考えることをやめないのは難しいことだ。」ということを言っています。
これから日本がどうなっていくのか、考えることをやめてしまったときが本当の危機である。
と、心に銘じるこの頃です。