オカマバーAladdinのヒロキです!!
私は過去に、いくつかのWebサイトを持っていた。
そのうちのひとつは“真っ黒”だった。
違法性のあるファイル…当時「フル着うた」とか「着うたフル」と呼ばれていたものの海賊版を作ってばら撒いて、小遣いを得ていたのだ。
いわゆるガラケー全盛期に、音楽を無料で聴きたがる浅ましい層を中心に広まった闇の技術。具体的には2000年代中盤から後半あたりの流行だろうか。
私はJ-pop楽曲のフルコーラスのファイルを中華サイトから毎週ごっそり落としてきては、3g2または3gpのファイルに圧縮変換し、サイト上で広くへ向けて配布していた。陰キャのわりに2004年前後のJ-popに妙に詳しいのはこのため。
小遣いを得ていた…と言っても、ユーザーとダイレクトに金銭のやり取りをしていたわけではない。
1.海賊版ファイルのダウンロードページに鍵をかけ、
2.「鍵を知りたくばこちらの指定するURLから出会い系サイトまたはオークションサイトのいずれかひとつにジャンプし会員登録せよ」と掲げ、
(※すべて登録自体は無料、悪さをするものでもない優良サイトたちである。その中でもハッピーメールやワクワクメールはアプリ化し、今でも親しまれているはず)
3.登録完了メールをこちらへ転送するように指示。
4.私は紹介によるアフィリエイト収入を得て、ユーザーは海賊版ファイルを得る。
……このような形をとった。
誤解のないように言っておくが、犯罪自慢ではない。どこからどう見たって著作権侵害も甚だしく、今でも深く深く反省している。
当時高校生だった私は徐々に物事の分別がつくようになり、高校生であるうちに海賊版ファイル作りをやめた。サイトも閉じた。前日や当日に鍵を手にしたばかりのユーザーもいる中で急遽の閉鎖・更新停止は心苦しかったが、金銭的にはユーザーの誰ひとりとして損をしていないので、まぁいいかと思えた。
それまでに公開したファイルたちとそのダウンロードページは全く別の外部サイト(海外サーバー)に格納していて、私はそれをあえて宙ぶらりんのまま放り出しておいたので、実際のところは「予告もしに突如ダウンロード不能に陥る」ということはなく、すでに鍵を突破したユーザーから抗議らしい抗議の声があがることもなかった。
罪の告白をしてみたい気分だったので前置きが長くなったけれど、私が書きたかったのはむしろ、ここから先のこと。
私は過去に、いくつかのWebサイトを持っていた。さきほどご紹介(?)したものを含めて8つだ。今日はその中から、精神のゴミ捨て場のようなナンセンス系自己満サイトの話がしたい。
そのサイトでは、「みずからの身体をいろいろな方法で傷つけ、修復の様子を追った写真」を時系列順に掲載していた。単に刃物で皮膚表面を切りつけることはもちろん、火で焼く、薬品で溶かす、肉片として完全に切り取る、等々。
当時はまだまだ、「傷は乾かすもの」という感覚が根強い社会であった。そんな中で私は一足早く現代でいう「湿潤療法」のようなものに辿り着き、その有用性を説いていたのだ。
具体的には、「傷口をよく洗ってワセリンを塗り、サランラップで蓋をする」というやり方をとった。そうやって潤いを保ちながら瘡蓋らしい瘡蓋を作らずにじわりじわりと塞がっていく傷を眺めることを好み、だから人にも見せたかったし、「こうすると綺麗に治るよ」と伝えたかった。
その活動に対しサイト上のフォームを通じて届いたメールのうち、特に印象的だったものがある。
みずからを「芸術家」と称するそのメールの送り主は、他の人と違い、私の熱心なファンとかそういう感じではない。
メールの中身はというと自身の芸術に関することがたくさんたくさん綴られていて、最後は「あなたの活動から受け取った衝動をもとに作品を作りたいが、影響を受けすぎてしまうかもしれない。だから、公開中のあのページを含むあなたの発想そのものを丸ごと買い取らせてくれないだろうか」と締め括られていた。
30万円ほどで快諾。
売却にあたり当該のページを非公開設定にしたほうがよいかと尋ねたが、「私は自分の筋を通したかっただけであり、あなたが制限されることは何もない」「そのままの形で続けて一向に構わない」と言われた。
住んでいるところがそう遠くなかったのでお茶でもしようかという流れになりかけたけれど、実現することなく疎遠になって、しばらくののち活動に飽きた私はサイトをそっと閉じた。
……数年前のこと。東京方面へ行った際に、六本木の「森美術館」へ立ち寄った。時間潰しのような気持ちでふらっと入ったのに、なかなかに思想の強い展示がずらりと並んでいて、ちょっぴり面食らった。
ちなみに私は例の人の作品を見ていない。現場には10をゆうに超えるアーティストたちの作品がひしめき合っていて、さらにそのうちのいくつかは映像作品だったので、すべての作品を見るにはとても時間が足りなかった。
例の人の作品も展示されていると知ったのは会場を後にしてから30分ほど経ったタイミング。それを見るために戻るにはちょっと遅かったし、たぶん時間があったとて、わざわざ戻ったりはしなかったんじゃないかと思う。
「修復」をテーマにしつつ壊れたものをなおすためのさまざまな方法を作品づくりに応用している例の人とは、今に至るまで全くコンタクトを取っておらず、私の売却した「私の脳内にあったもののひとつ」がどのような作品としてリインカネーションを遂げたのかは知らない。
そもそも「ヒロキで作品をつくる云々」が単なる建前で、気がふれているように見える私に同情してくれただったのかもしれない。
こうやってぼんやりと想い馳せることはするが、会いたいとか作品を追いたいとか、そういう欲求が生まれることはない。私も日々、私自身のことで忙しい。ただなんとなく、例の人が芸術を続けているらしいというその気配をほんのり喜んでいる。それだけ。
人生や人付き合いって、長く付き合うことよりもちょっと触れ合っては他人に戻ることのほうが、ずっとずっと多いような気がしてる。
他人に戻ってしまった後にも、
どこかで祝福できたらいいよな。
そういう人間として生きていきたい。
おわり。
今週の出勤予定
1月30日(金)22:00〜5:00
1月31日(土)22:00〜5:00
1月の最終週、
色々あって頑張りたい週です。
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ヒロキより


