契約書で書かれる商品の保証(warranty)には2つあります。
明示の保証 (express warranty)
黙示の保証(implied warranty)です。
明示とは「はっきりと示す」という意味ですから、明示保証は、契約書に文言で記載される保証です。
今回は黙示保証のほうを、
U.C.C.(アメリカ統一商事法典)と
CISG(国際物品売買契約に関する国際連合条約:別名「ウィーン売買条約」)
の観点から掘り下げたいとおもいます。
*ちなみに、
U.C.C.(Uniform Commercial Code)は商取引に関するアメリカのモデル法で、各州が独自の修正を加えたうえで採用しています。
CISGは世界的に広く受け入れられた国際売買法の統一をはかる条約です。
世界の主要な国(イギリスなど一部の国は未加盟)が加盟しており、日本も2008年に加盟しました。
適用は任意であり、適用しない場合は、契約書にCISG適用排除の旨を明記しておきます。
CISGでは、黙示の保証として「商品適格性(merchantability)を有すること」と定めています。その要件として、通常使用される目的に対する適合性 があります。
U.C.C.はもう少し細かく指定しています。
商人(merchant)による売買契約である場合、保証の排除を明記しないと、製品に商品性(merchantability)があることが黙示的に保証されます。
U.C.C.の実際の規定は、ここ
から見られます。
以下6つあります
1 当該契約における取引で異議なく合格するもの
2 代替可能な製品(fungible goods)の場合は当該種類において公正な中等品質である
3 当該製品が使用される通常目的に適合している(fit for the ordinary purposes)
4 各ユニット、全体のユニットにおいて、種類、数量、品質の面で、契約によって認められる変動の範囲内である
5 契約で決められたとおりに、適切に包装、梱包、ラベリングしてある
6 容器またはラベルがある場合は、商品が記載されている内容に適合している
また、上記項目以外にも、交渉過程(course of dealing)や取引慣習(usage of trade)から発生する黙示の保証も含まれます。
見てきたようにこの「黙示の保証」というのは、売主にとってはかなりリスキーなので、多くの契約書では、No warranty、Limitation of Liabilityなどとして、保証を排除する旨記載されています。
「商品性や特定目的に対する適合性を含むいっさいの明示、黙示の保証を排除する」といったふうに書かれることが多いようです。
ただし、とくに商品性や通常目的に対する適合性の保証を排除する場合、目立つように明瞭に(conspicuous)記載されなければなりません。免責条項がすべて大文字(次の記事参照ください)で書かれているのをよく見かけますが、こういう理由からです。
やむを得ず黙示保証をせざるを得ない場合は、保証期間を限定したり、売主の責任を代金減額と修理に限るなど具体的に責任の範囲を定めたりすることが多いようです。