損害の類型 | 言葉の海を漂う

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フリーランス在宅翻訳業12年目の主婦。翻訳や生活のこと。

英文契約書の責任制限条項では損害(賠償)の用語がズラッと並べられます。


IN NO EVENT SHALL EITHER PARTY BE LIABLE TO THE OTHER OR ANY THIRD PARTY FOR ANY INCIDENTAL, CONSEQUENTIAL, PUNITIVE OR INDIRECT DAMAGES OF ANY KIND ARISING OUT OF OR IN CONNECTION WITH・・・・・・


以下は英文契約書によく登場する損害(賠償)です。


special damage(s) :特別損害 ○被害者が現実に被った損害で、特別な事情による損害です。契約違反によって直接生じるのはgeneral damages (通常損害)ですが、special damages の対象となるのは売手が契約どおり商品を提供しなかった場合の逸失利益(lost profits)などです。



general damagesspecial damagesが、現実に被った損害として救済の対象となるcompensatory damages(填補的損害賠償/補償的損害賠償)です。




incidental damage(s) :付随的損害賠償(金)○ある契約違反に合理的に付随する損害の賠償です。たとえば、代替品を調達するための調達費用や、製品に欠陥があった場合(担保違反;breach of warranty)に買い手が実施するリコールの費用や欠陥物品の返送費用などです。




consequential damage :間接損害、派生損害; indirect damage(間接損害)と同じと考えて良いでしょう。 ○契約違反の結果、派生的に生じる損害です。契約違反の結果生じた人体や財産の損害です。具体的には、欠陥商品の引渡によって買主に生じた負傷や、屋根の修繕がまずかったために生じた天井や床の破損などです。incidental damageよりも間接的な性質であるといえます。




punitive damages : 懲罰的損害賠償 こちらの詳しい説明は先日のブログ記事をご参照ください。




nominal damage:名目的損害賠償 ○契約違反や権利侵害があったことは認められるが実質的な損害がない場合に、裁判所が認めるごく少額の賠償金。一応勝負をつけるために裁判所が名目的に被告に課す賠償金という感じでしょう。




(注)punitive damagesconsequential damagesnominal damagesは損害賠償の類型なので、「懲罰的損害」などと訳さないよう気をつけましょう。「懲罰的な損害」はありませんね!


その他のdamagesについては、「損害」と「損害賠償金」のいずれに解釈すべきかは、文脈にもよります。たとえば損害の類型を意味するときは「損害」、裁判所から支払いを命じられたときは「損害賠償金」です。




このような損害の類型を、たんに辞書の訳に従って字面で訳していると、「懲罰的損害」のような過ちをおかしがちです。それぞれのおおまかな意味を理解しておくとよいですね。