#最近見た映画はこれ/「千夜、一夜」。死の気配漂う港町に清水靖晃の荘厳なSAX音が響く儚き秀作 | 書物と音盤 批評耽奇漫録

書物と音盤 批評耽奇漫録

本や音楽他のレビュー中心

 

 

最近見た映画はこれ

昨日、 久保田直監督の『千夜、一夜』を観ました。

 https://bitters.co.jp/senyaichiya/#


映画冒頭から、まるで全てが終わっているかの如く静謐な死の気配が立ち込める港町に、清水靖晃の荘厳なSAX音が鳴り響き、実に感無量でした。

 

そこで失踪した夫を30年も待ち続ける田中裕子の枯れた抒情が胸に迫ります。

 

過去の世界を生きているのか、はたまた死の一歩手前で佇み続けているのか、

 

失踪したのか拉致されたのかもわからない夫のことを長い間待ち続けて生きていく、まるで過去を生き続けているかのような田中裕子の佇まいが、全てが終わっているかのような寂れた港町の風景と同化していく、その儚い気配が全編を貫徹しています。

 

久保田監督はドキュメンタリー出身の監督だから、こういう死の気配すら漂う港町の儚き抒情を醸し出す風景を撮るのがかなりうまいです。

 

同じく夫が失踪したが新しい人生に進もうとする尾野真知子や、ダンカンとの葛藤を通して、待ち続けることの切なさが如実に伝播してくる、実に深みのあるハイクオリティな秀作でした。

 

同じネタで投稿する

 

他の投稿ネタを確認する