書物と音盤 批評耽奇漫録

書物と音盤 批評耽奇漫録

本や音楽他のレビュー中心



先週まで、濱口竜介監督特集上映「突然、偶然、必然」にずっと通ってました⭐︎



新作である、前に書いた稀有な傑作『急に具合が悪くなる』公開記念の特集上映です。


https://ameblo.jp/erroy3911/entry-12970285351.html?frm=theme


見逃していた自主映画時代の作品やドキュメンタリーと、前に観た再見となる作品が混じってましたが、どの映画も面白く、特に再見した『ハッピーアワー』『PASSION』『親密さ』の素晴らしさはやはり圧倒的でした。



総尺5時間17分の大作『ハッピーアワー』はどうしてこんな凄い大大傑作が作れてしまうのかがかねてから不思議で、この映画に関して濱口監督と野原位、髙橋知由によって書かれた本『カメラの前で演じること 映画「ハッピーアワー」テキスト集成やパンフレットなども読んでいるのですが、




どうやら脚本以外のサブテキストというものの存在が大きく、その上で市民参加による「即興演技ワークショップ in Kobe」から生まれ、ほとんどの登場人物を演技未経験者がつとめ、演技経験のない4人の女性たちが主演した(ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞)ことがこの映画の特異さに繋がっているようなのですが、だからといって、演技のワークショップからこんな大大傑作がそうそう生まれたりすることはほとんどありませんので、これはやはり濱口監督作品の中でもほとんど神がかった大大傑作だなと思いますね。



映画学校の生徒らを起用した4時間超えの大作『親密さ』も、"濱口竜介マジック"の傑作としか言いようがなく、確かにジョン・カサヴェテス映画の影響は感じられるものの、それでもどうして途中休憩後の後半の延々続く舞台の場面があんなにヒリヒリするほどリアリティーがあるのか、こんなことよく出来るなと驚くしかなく、これも濱口竜介監督にしか撮れない映画ではないかと改めて思いました。



『PASSION』は脚本の見事さ、演出の緊迫感、その上での映画的な素晴らしさが緊密に結合した、未だにこんな濃密な恋愛映画はやはり稀な、実に隙のない傑作だなと再確認致しました。


エリック・ロメールからの影響は確かに感じるのですが、でも濱口監督のロメール的な映画は、他の初期の佳作『永遠に君を愛す』や傑作オムニバス『偶然と想像』(3作目の「もう一度」が特に秀作)もそうですが、ロメール映画特有の"人間を俯瞰から見た嫌らしさ"やまるで人間という存在を根源的に憎悪しているようなシニカルさみたいなものはそれほど感じないんですよね。




そんな見方はあまりされないみたいですけど、個人的にはロメール映画にはいつもそういうものを強く感じるので、何であれをフランスのオシャレな恋愛映画、青春映画みたいに観て満足していられるのか、個人的にはさっぱりわかりませんけど、でも濱口監督のロメール的な映画にはそういう嫌らしさはあんまりないんですよね。


ロメール映画特有の、かなり主観的に人生を生きていて、それ故の無神経な客観性の無さを思わせるキャラクター(それを悪いとも思わず自己正当化し、結局無意識のうちに言ってることと真逆の行動を取り、さらにそれを自己正当化する奴)というのがあんまり出てこなくて、それはやっぱり日本人で描いてるからそうなるのかな、そうしないと不自然になるということなのかなとも思えるのですが。



その他、『何食わぬ顔』(long version)は東大映研時代の全編8mmフィルムで撮影された映画で、映画内映画をすでにやってますね。


繊細な人間関係やそれぞれの想いや気持ちを想像させるところに、映画に没入出来る魅力があり、ジョン・カサヴェデスだけでなくゴダールやヴェンダースの影響も感じられます。


真夜中にサッカーで戯れるシーンで、やたらにYシャツの白さが魅力的に際立つところは、蓮實重彦の映画評論「ジョン・フォード、または翻える白さの変容」の影響かもと思いました。


いずれにしても学生映画としては、かなり大したものですね。



また、酒井耕との共同監督作でトータル7時間を超える東北記録映画三部作(『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』)も感慨深いドキュメンタリーで、

特に東北三部作の第三部『うたうひと』は、東北地方伝承の民話語りのドキュメンタリーで、語り手たちの民話や昔話がひたすら面白くて引き込まれました。


さらに聞き手であるみやぎ民話の会の小野和子の民話解釈が秀逸で、実に濃密な伝承映画の秀作。




『なみのおと』『なみのこえ気仙沼編/新地町編』は、東日本大震災の被災者同士が語り合う、劇映画的な(途中から小津安二郎的正面切り返し)ドキュメンタリーで、こちらも対話の臨場感に引き込まれました。


後の濱口監督の大大傑作『ハッピーアワー』に繋がってる気がする作品。



その他、『天国はまだ遠い』はちょっと韓国映画『マジシャンズ』を想起させる幽霊譚で、スリリングさと情緒豊かな描写が融合した佳作。



濱口監督作品の個人的な好み順に順位を付けるなら以下の感じかな。


⚫️濱口竜介監督作品ベスト10⚫️

❶『ハッピーアワー』

❷『PASSION』

❸『急に具合が悪くなる』

❹『親密さ』

❺『悪は存在しない』

❻『うたうひと』 

❼『ドライブ・マイ・カー』

https://ameblo.jp/erroy3911/entry-12774754713.html?frm=theme

❽『何食わぬ顔』 (long version)

❾『偶然と想像』

➓『永遠に君を愛す』


11『天国はまだ遠い』

12『なみのおと』

13『なみのこえ 新地町』

14『なみのこえ 気仙沼』

15『寝ても覚めても』

16『THE DEPTHS』        

17『不気味なものの肌に触れる』

18『Walden』



ちょっと前ですけど、岐阜県羽島市歴史民俗資料館・映画資料館へ行き、



そこでやっている企画展『映画のまち岐阜100年の物語展』を見ました⭐︎


https://hashima-rekimin.jp



これはかって岐阜柳ヶ瀬に青雲館という映画館があり、その後改築または8回にわたる館名変更を経て1977年より現在のロイヤル劇場になったのですが(1977年当時は新作封切り館、今は名画座)、今年2026年は青雲館時代から数えて100年目なわけです。


そこで、100年に渡る青雲館の全上映番組を網羅しつつ、その時々の上映形態や世情を映画ポスターやパンフなどとともに辿る展示による企画展が催されたものです。


岐阜県出身の映画監督や、岐阜がロケ地の映画のポスターやパンフも紹介されています。




この企画展の冊子も戴けたのですが、こちらには展示されていた様々なかって岐阜に存在した映画館の解説や、映画の新聞広告、または青雲館時代からロイヤル劇場時代に至るまでの上映番組表が掲載されていて、読み応え満点でしたね。


子供の頃、まだ小学生くらいの頃は、東映まんがまつりとかゴジラやガメラ映画ぐらいしか映画を観に行ってなくて、中学生になってから、やっと自分で好きな映画を観に行くようになったのですが、ところがその小学生くらいの頃、入ったことない映画館が色々あって、それが中学生の頃にはかなり閉館してしまっていました。


なので、あの映画館はどうなって、どういう映画館だったのか、よくわからないところもありましたが、それが全て解説されていて、なんだかとってもスッキリしました。


新東宝の映画を昔よく観たという声を聞いたこともあったんですが、一体どこでやっていたのかもよくわかりませんでしたが、それもはっきり判明致しました。


全体的には、自分が生まれる前や幼少期の全く知らない時代と、中学生の頃から、現在に至るまでのよく知っている時代の両方の映画館の企画展という感じで、個人的にもとても感慨深いものでしたね。


ロイヤル劇場の番組表なんて、新作封切館としてスタートした最初の「007私を愛したスパイ」の時から観に行ってるんで、その時代から今の名画座時代に至るまでの番組表を見てるだけでも、なんだかとても和みますね。



2階には大型映写機や新旧の映画ポスターも展示されていて、こちらも興味深く拝見しました。


映画館の映写機だけでなく、8ミリ映写機や8ミリカメラなどもあり、その中には、自分が自主映画を作っていた時に使っていたカメラや映写機なんかもあって、なんとも懐かしかったですね。


そんな、とても素晴らしき企画展でした⭐︎




夏季の地上波新ドラマが始まってますが、今ところ観てるのはBSドラマ一つプラスして10個ですね。


どれもまあまあ面白いですが、


特に面白いのは、下記の5つ。(数字は順位)


大空港〜GATE24〜

https://www.tv-asahi.co.jp/daikuukou/


VIVANT

https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/


さよならノワール

https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/


GTO

https://www.ktv.jp/gto2026/


晩酌の流儀5

https://www.tv-tokyo.co.jp/banshaku5/


ですかね。


⚫️「大空港〜GATE24〜」は、途中で外人の声が急に日本語吹き替えになるところが不自然と言えば不自然ですけど、まぁそこはテレビなんでわかりやすくしないと誰も見ないので大目に見るとして、いずれにしても、今季のドラマの中では個人的に一番面白いですね。


なんだか傑作映画「入国審査」と、



中山七里の「こちら空港警察」が合体したような面白さというか、

https://ameblo.jp/erroy3911/entry-12859539875.html?frm=theme


毎回パニックサスペンス映画のような緊迫した面白さが味わえるところがかなり気に入っています。


⚫️「VIVANT」は前季ほどの醍醐味はありませんけど、それでも第12話は目まぐるしい展開が面白くて、割と復活してきてる感じはしますね。

今後また、さらに面白くなることを期待しています。


しかしながら、原作・演出・プロデュース担当の、謂わばメイン創作者である福澤克雄がパワハラを告発されて現場から離れてしまったので、

https://news.yahoo.co.jp/articles/ad59cb9fee526a3be82fb33d6bfd97049418908a


それを引き継げる人材が果たしているのかどうかが今後の課題かもしれませんけどね。


⚫️ 「さよならノワール」は毎回、わりとしっかりしたドラマが描かれていて、小池栄子も好演しており、中々良い出来だと思います。


⚫️復活した「GTO」と「晩酌の流儀5」は安定した面白さをちゃんとキープしていますな。



他に、

❻大追跡~警視庁SSBC強行犯係~ Season2

❼名探偵のままでいて

❽夫婦と16歳~狂気の隣人~

❾今夜もシリアルキラーと待ち合わせ


それと、BSドラマの、

➓心配無用ノ介天下御免


も、まあまあ面白いといったところですかね。



ただ、映画『侍タイムスリッパー』からのスピンオフドラマ「心配無用ノ介天下御免」は、

https://bs.tbs.co.jp/shinpaimuyounosuke/


時代劇と現代劇の融合の割合というか具合が毎回違うので、今後場合によってはもっと面白くなるかもしれませんね。