川瀬七緒『スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官』☆法医昆虫学的推理➕各々推理のコラボが秀逸 | 書物と音盤 批評耽奇漫録

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川瀬七緒『スワロウテイルの消失点  法医昆虫学捜査官』☆

 

東京・杉並区の古い家屋で、老人の腐乱死体が見つかり、法医昆虫学者の赤堀と岩楯刑事は司法解剖に立ち会う。

 

岩楯の相棒である深水巡査部長や、高井戸署署長、鑑識課長らも同席したが、大柄で太った老人の遺体にメスが入るやいなや、その場にいた者は皆、発疹や出血や痒みに襲われ、感染症の疑いが出てきてパニックとなり、岩楯らは隔離される。

 

赤堀は異常な痒みを訴える岩楯らに、痒み止めとしてハッカ油を渡す。

 

赤堀はそこから痒みの原因となった虫を突き止め、殺されたとおぼしき被害者の死亡推定月日を割り出す。

 

その後、岩楯と深水は痒みに耐えながら、赤堀と捜査を進めるが。

 

 

 

 

待ちに待った法医昆虫学捜査官シリーズの最新作☆

 

今作も法医昆虫学者赤堀と岩楯刑事が組んで、虫の生態から事件の真相を究明していくお話ですが、主要メンバーには、岩楯の新しい部下・深水が加わっています☆

 

この深水がヒネクレた奴というか、妙に醒めてて食えない小柄な若手刑事で、当初、赤堀を警戒して、まるで似た者同士の同族嫌悪みたいな関係になりますが、意外と能力が高く、過去に闇を抱えていたりして、実は中々の好キャラな相棒刑事だったりします☆

 

また、前回新たに組織された、赤堀が所属する捜査分析支援センターからも、技術開発部のエキスパートで、いつも仏頂面の波多野光晴が事件捜査に赤堀の助手として加わっています。(まあ助手と言っても、赤堀に説教ばかりしてて、年上の波多野さんの方がエラそうですがwでも優秀な助手☆)

 

代わりに、今回は同じく支援センターのメンバーで、長身美人プロファイラーの広澤春美は少ししか出てきません☆

 

それと途中、赤堀を襲撃して、捜査の邪魔をする少年夏樹も重要な役回りとなっています☆

 

今回は、最初に刑事たちを強烈な痒みに導く虫の探索から始まるわりに、途中からはあんまり法医昆虫学ばかりをメインにした事件捜査という感じではなく、岩楯ら刑事二人の地道な捜査や、夏樹のツバメの知識を駆使した捜査などが並行して描かれ、別に赤堀のワトソン役が岩楯や夏樹、波多野という感じではないです☆

 

それぞれが探偵役となって、おのおの捜査を進め、探偵役同士協力し合って殺人事件の真相を最終的に究明するという展開になっています☆

 

特に夏樹は問題ある子供ではあるけど、随所で活躍してますな☆

 

 

(**以下、ちょっとだけネタバレ注意**)

 

 

犯人を先に登場している人物の中から推理して言い当てるフーダニットものではなく、犯人は最後に正体を現すだけですが、これが中々凶暴な奴で、終盤のクライマックスはかなりヤバイ事態となります☆

 

その意味では、そのクライマックスに至るまでの刑事の地道な捜査や(犯人を直接割り出したのはこの刑事の地道な捜査だったりする☆)、赤堀の昆虫学的推理、または夏樹&赤堀のツバメの生態を通した推理のプロセスをそれぞれ交互にじっくり語っていき、それらがラストにだけ登場する真犯人の前で接続されていく、謂わば推理プロセスの醍醐味メインのミステリとなっています☆

 

また途中、岩楯らの聞き込み捜査に、記憶力抜群な家電量販店の新人女性店員が出てくるんですが、こちらも好キャラで、また次回作以降にも出てきてほしいですな☆

 

人物描写という点では、赤堀と深水、夏樹は、過去のトラウマという点で微妙にクロスしていますね☆

 

主人公の赤堀だけを極端に超人的な名探偵にはせず、謂わばチームで、おのおのが推理し捜査して事件を解決する展開になっていて、そのそれぞれの推理や捜査プロセスを楽しませる醍醐味を強調しているので、やはり堂々たる本格ミステリの佳作だと思いますね☆

 

今後とも是非とも続いてほしい名シリーズ作です☆