GOTH リストカット事件 乙一「GOTH リストカット事件」

著者:乙一(おついち)
価格:1575円(税込)
出版社:角川書店
評価:★★★★☆

粗筋:「僕」とそのクラスメイトの森野は、死体や処刑方法等の人の異常な部分に興味を示す種類の人間。彼らは自らの興味から様々な猟奇的な事件に首を突っ込んでゆく。

感想:主人公の名前を出さない小説というのは案外多いなあ。西尾維新とか、安部工房とか。それだけでミステリアスに感じるんだから私は本当に単純な人間だ。相変わらず淡々とした文章で、かなりグロテスクなんだろうけどそんなにグロテスクなものを感じず、悪く言えば臨場感が欠けているのかもしれないけど、それがやっぱり楽しいので短所でもなんでもない感じ。一つ一つが軽く捻ってあって、「犬」と「声」は、普通に騙された。主人公達が異常な行動を普通にとってしまう上に、人の異常な行動も簡単に認めてしまう人たちだから、そういうのがぜんぜん分からなくなる。やっぱりお話作りが上手いなあ……。そして案外森野が可愛いと思う。

FINE DAYS―恋愛小説 本田孝好「FINE DAYS―恋愛小説」

作者:本田孝好(ほんだ・たかよし)
価格:1680円(税込)
出版社:
祥伝社
評価:★★★☆☆

粗筋:近付くと死ぬという不吉な噂を持つ、美しい少女を思い出す話。死期の近い父親の頼みで、彼の元恋人とその子供を捜す、末っ子の話。誰とも余り関わらない不思議な青年と、罪悪感に刈られながら生きる私との話。あるランプにまつわる恋人達の話。計4編の短編集。

感想:やっぱり私がこういうテイストの話が好きなんだと思う。盗作だとかそういうわけではなくて、恐らくこういう感じの雰囲気を持つ話は他にも色々あるんだろうなあと思った。だけどやっぱり面白かったです。個人的には3話目が一番すきなのかもしれない。恋愛小説と打っている割には余り恋愛な感じはしなくて、でもやっぱり恋愛だったかもしれない。一番分かりやすいのは「シェード」かな。よくある感じの構成ながら、矢張り「イエスタデイズ」がいい。少しミステリっぽくて、最後に少し余韻を持って終わる「眠りの為の暖かな場所」は、この本の中では個人的にベストでした。読んでいる間の雰囲気がいい作品。


三月は深き紅の淵を恩田陸「三月は深き紅の淵を」
著者:恩田陸(おんだ・りく)

価格:1890円(税込)
出版社:講談社
評価:★★★☆☆

粗筋:ある著者が自家出版して極限られた人たちに配り、しかし、すぐに回収されてしまった幻の本「三月は深き紅の淵を」。作者が奇妙なルールを付けた事からもその本は、本に携わるものたちの間で話題となる。様々な人たちがその本を巡って、或いは関わって繰り広げる四つのお話。

感想:「麦の海に沈む果実」を読んでいるのと読んでいないのでは大きく差が出る作品だと思う。この本に出てくる「三月は深き紅の淵を」は、「麦の海に沈む果実」とは違った作品みたいです。同じ表題の作品で、作者のルールも全部同じなのに、内容が少しずつ違ってて、結局どれが本物の「三月は深き紅の淵を」なのかが分からなかった。一つ一つの話が面白かったというよりは、結局「三月は深き紅の淵を」という本は一体何なのか?という事に重点を置いて読んでしまう。というか、もうその本の印象が強くて強くて作品の中に引き込まれてしまう感じ。でも結局その辺が明らかにされることはなかったので少し未消化。でも全体としてはかなり面白かったし、多分明らかにしてはいけない類の話題なんだろうなあと思います。でも気になる。そんな感じ。
ただ、「回転木馬」に少しずつ出てくるのは「麦の海に沈む果実」の登場人物と、その本のワンシーンでした。少しずつ違うんだけど。それが、「回転木馬」の主人公の書いた物語なのかそうじゃないのか、その辺も分からず混乱しそうに。
恩田さんの作品はいつもこんな感じです。

(装丁が京極夏彦だと知って吃驚しました。すっごい綺麗)