東京医科歯科大学小児科 訪問 | えりっき脳内議事録(えり丸)

えりっき脳内議事録(えり丸)

Diary and memo written by a pathologist.

1/25(金)に東京医科歯科大学小児科のI先生の研究室を訪問しました。遅ればせながら、その時の記事です。

当ブログの愛読者の皆様は、私が自己炎症疾患を患っているのはご存知かと思います。そして、PIDつばさの会(原発性免疫不全症の患者会)に参加していることも御存じかと思います。I先生は、SCIDやCVIDなどの原発性免疫不全症の専門の先生です。PIDは死に直結する病ではありますが、I先生は小児科医らしい笑顔の絶えない先生でした。心身ともに健康であること、これが医者の一番の素質なのかもしれないね。「僕は昔から子供が好きでね、将来は保父さんになろうと思っていたんだけど、小児科でも子どもたちと触れ合えるっていうから、小児科医になったんだよ」という言葉が印象的であります。

I先生は、御自身は自己炎症には詳しくないとは言っていたのですが、当日は症例の相談ではなく、先生の取り組んでおられる事業についてお話を聞いてきました。つばさの会(PID患者会)とPIDJ(PID医療者会)では、Pierという患者の医療電子日誌を立ち上げ途中です。BMTが行われるようになってから、長期生存例が増えてきたため、最終的に患者がどういった転帰をたどったのかを長期フォローするのは医師の務めでもあり、また、疫学研究の重要な材料でもあります。現在の電子日誌プラットフォームは少々使いにくい部分もありますが、毎日の体調変化をなるべく細かく記録することで、医師側に発見があったり、改善案が思い浮かんだりするといいなと淡い期待を抱いて、私もせっせとPierに日誌をつけています。

簡単に、データベースを使ってみて感じたこと、問題点などを列挙しておこう。

①患者と医療者・研究者はある意味で利害関係にある。症例データベースというのは利害関係にある者全てににメリットがないと成り立たないシステムだと思う。誤解を恐れずに言うと、商売と一緒。現状、患者にメリットがないシステムと言わざるを得ない。患者側としては専門医への相談が出来れば一番なのだけれども、これを実現すると、医師の事務仕事が極端に増えてしまうので、実現は難しいのかなと感じた。妥協案として、どこの誰がいつ、自分のデータを閲覧したか、ログを残すというのはどうだろう。

患者同士で自分の体調日誌を公開するのは交流が目的であるから、ログを残す必要性は低いかな。むしろ、ログが残ることで閲覧をためらって、交流という目的が果たせなくなる可能性もありそうだ。

けど、研究班を筆頭に医療関係者は、必ずログを残し、個人情報を閲覧しているという自覚を持ってほしい。特に研究班のメンバーはこのデータベースを活用する立場だから、ログを残すだけでなく、このデータを利用して研究したり論文を書く場合には、改めてインフォームドコンセントを取るべきだ(自分の検体をどのように利用するかetc)。加えて、研究成果が出たら、患者サイドにちゃんと報告してほしい。

PID専門家ではない主治医も、勿論医療者なのでログは残す。彼らはPIDJやPierから疎遠になる可能性が高いので、担当患者がデータをアップデートしたら通知が行くようにしてはどうだろう。

②PIDJのデータベースとPierの互換性・・・。互換性があるにこしたことはないけど、そうだねぇ、書式がどれほど違うのか、PIDJのほうを見ていないので何ともコメントできないかな。

③ところで。医師がPIDJに相談する、こういうことができるようになっているんだけど、これって下手すれば守秘義務違反とか個人情報保護法に抵触することになりかねませんかね?難しい症例について医者同士で相談するということは良くあるけど、かなり危ないグレーゾーンな行為だと思う。

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参考になるかなと思って、私の熱型表をお見せしたところ、「あーこれこれ。こういうのが作りたいんだよねぇ。こういうグラフ&表形式がやっぱり分かりやすいよねぇ。」と仰っていました。ここからは、私個人の症例について軽くお話。「しっかし、すごいステロイドの量だね!小児科医としてはとても容認できないね!」と。いやはや、こればかりはコントロール不良と言わざるを得ないです(・・;) 確か、MEFVもTNFRSF1Aもwtだったよね?最近わかってきたことなんだけど、CINCA症候群の7割が低頻度体細胞モザイクらしいよ?一度、モザイクなのかどうか調べてみたらどうかな!分子生物学をやっていた身としては、自分の体のどこが異常なのか、とても気になるところではあるね。これについては、半年のうちに京大で調べてくれるそうです(N先生談)。でもまず、FMFの遺伝子診断を待ちわびている人に申し訳ないので、そちらを優先して欲しいな。

あと、エンブレルが効いていないのなら、一度はサイトカインプロファイルを調べる価値はあると思うとのアドバイスを頂きました。サイトカインストームだからおしなべて高値を示すんじゃないでしょうかと聞いたらば、IL-18やIFNγなどは症例によりけりらしい。それに、TNFを標的とする薬剤を使う場合に、TNFの発現量を調べてないのはおかしいでしょ?と。ごもっともなのですが・・・私も調べるべきだとは思ったんですがね、それをいうと主治医を責めることになりますので…ごにょごにょ。ま、とにかく!金沢でサイトカインプロファイルをやってる研究者がいるからさ、依頼してみなよ。

最後は。発熱といえばIL-1、だからキネレット®(アナキンラ)やイラリス®(カナキヌマブ)がよく効くかもしれんよねー、なんてふうに談笑しておりました。主治医は多分これらの薬の使用経験が無いから、結局つかえないんじゃないかという現実的問題は残りますが。