いかりばくはつ | えりっき脳内議事録(えり丸)

えりっき脳内議事録(えり丸)

Diary and memo written by a pathologist.

○○願を出した.しかし,受理されなかった.
秘書さんは,私の決断に賛成してくれたけれど.
ま,身辺整理して,出てきましたけどね.
急に1か月ちょいの時間的猶予ができましたが,
ポリクリ(学部5年・6年の臨床実習)に向けての準備期間に充てるとします.

以下,問答に言葉足らずだった部分を補足して記述.

教授: 今後に活かすためにも,理由を聞かせてほしい.
自分: そのような理由は,ともすれば悪口になりかねないので,口が裂けても言えない.

教授: 順風そうに見えてたんだけど・・・
自分: いつも溜息ついて雰囲気が暗い人が職場にいたらどう思いますか?
     ふつうは嫌ですよね.特に私のような特殊な立場の場合は,妬み・やかっみも多いだろうから,
     平然とするのが得策だっただけです.
     私は内心を読まれにくい,逆に言うと,自己を表現が下手な人間なのだと思います.

教授: 速まった結論を出すんじゃない.
自分: いいえ,早まっていません.年度末が来るたびに,決断を決めあぐねていたのです.
     思えば,1年目の時点で,早々に見切りをつけるべきだったと思います.
     今までの結論として,この大学院3年間は,後悔以外の何物でもない.
     「あなたはまだ社会に出ていないからね」何かにつけてそう言われるならば,
     MD/PhDコースの存在意義はもはやない.臨床医の殆どと研究医のわりと多くの人が,
     このシステムに批判的だったのだから,やはりそうなんだろう.
     というか,出る杭は打たれる日本社会で無謀なことをすべきではなかった.

 結局のところ,博士号が欲しかったわけではない.研究者になりたかったのである.しかし,この3年で,時間に見合うだけの成長ができず,また,研究者としての将来像を描いたとき,これではロクな研究はできないという結論に至った.決して研究が嫌いなわけではない.寧ろ好きである.しかし,将来的なビジョンを描くと,この道は無いなというのが私の結論だ.博士号を取ってしまうこと,それは今でも魅力的に感じることのある研究に対する道が残されるということである.欲張りな私は,きっとまた,決断が揺るぐだろう.それは,教授の言う通り,選択肢を狭めないという意味で有用であるかもしれないが,決断が揺らぐ事自体は,精神衛生上非常に悪いことであると,今回の件から感じた.揺らぎたくない,だから,博士号はいらない.
 
 特にコレがしたい,という熱い思いは,日本社会では,特に若手と上部との関係において,「かっこ悪いこと」だったり「倦厭されること」のようだ.今の若者の価値観を,上層部は知っているだろうか?可も不可もなく穏便にやりたい,波風立てたくない,安全路線重視,これといって意欲があるわけではない,そういう価値観が主流なことに,もう少し気づくなり,理解を示してもいいかもしれない.「男なら一発大成功を」というのも,それは個々のスタンスとして自由であると思うし,それが悪いとも思わない.だが,どれだけの人が,一発大成功を手にすることができるだろうか?リスキーな行いを避けるのが最近のトレンドなのだ.ま,3年間で,私の思考も見事に,一発大成功タイプから安全重視タイプに変わってしまった.別に他人の意見に流されたわけではなく,緩く安全にというのも大成功に匹敵する賢い生き方だと思うようになっただけだ.

 教授は,どうやら私の不満を,「同期の大学院生と比較して,結果を出せなかった」のを不満に思っているようだ.それは全く見当違いだ.見当違いにも程がある.ここまで人の考えを読めない人っているのだろうか.同期に対して負の感情も正の感情も持ち合わせていないし,優劣を比べたこともない.同期の大学院生,だけれども彼らはMD/PhDコースではないから,社会人経験がある普通の大学院生である,そういう認識でいる.社会人経験あり,何かにつけてその事を持ち出してくる人もいるので,イラッとすることもあったが,そこは重要な点ではない.

 結論としてはね,MD/PhDコースで9~10年かけて医学研究者を育てるというのは,日本では受け入れられないと思うな.医学研究は,何度も言うように,理学系・生物系とバッティングする分野だ.そして,実験手技的には彼らの方が医者上がりの研究者より数段上だ.ただ,研究成果を疾患に繋げるという点では,医学系の方が得意ではあるかもしれない.そうは言っても,現状の医学研究を見ると,プロテインXがプロテインYをリン酸化することが分かりました的な内容の研究が多いので,理学系・生物系に有利に決まっている.しかも,彼らは臨床傍らに研究をしているのではなく,1日中研究をしていて,時間的にも有利である.だから,私は,そのような理学系・生物系の大学院生・ポスドクの人に,少し医学を学んでいただいて,医学研究を行ってもらうのが効率的であると思う.医者は技術職という面が強く,アメリカのMedical Schoolの様に,日本の医学部は医師養成学校というスタイルでいいんではないだろうか.医師不足と言われ続けてるんだし,大学院に戻って研究するよりかは,臨床をやった方が社会的貢献としても,いいんじゃない?

アメンバー限定記事にしようかとも思いましたが,別に隠すことではないので
オープンに全員が見られるように公開します.