前回の続きです。
「土壌の汚染度と空間線量率が必ずしも比例しない」問題、
もう少し言えば「土壌の汚染度が高いのに空間線量が低く出る」問題について、
ド素人なりに考えてみたいと思います。
「測定対象と使用機器と単位」の関係は、多くの場合次のようになります。
空間線量・・・サーベイメーター・・・cpm、シーベルト
土壌・・・Ge半導体検出器、NaI(TI)シンチレーション検出器・・・ベクレル
まず空間線量を計測する際の注意点を見てみました。
モニタリングポストでの計測は別問題とさせて下さい。
元々地上20メートルとかの数字だし、生活上の参考にしてる人はあまりいないと思うので。
ここでは地上1mでのサーベイメーターの計測で考えます。
放射線計測の留意点 (名古屋大・井口哲夫氏)
http://www.aesj.or.jp/11fall-symp/presentations/20110919iguchi.pdf
いきなり難解でした(^_^;)
文系の頭では半分も理解できませんが、大事だと思われる所。
●高精度な標準線源と、厳格な測定条件のもとでの校正が必要
●正確な測定の為には、校正を行った時と常に同一方向での測定が必要
●測定器の感度が低い、測る線量が低い程、測定値がブレる
(測定下限0.1μSv/h~1分間測定で10カウントの場合、±30%)
●気象条件によって数値が変動する
●よって、測定には高度な技術が必要。特に、低いレベルの線量での実測は専門家でも至難の業
元々、空間線量を測る行為自体がものすごく難しい事なんですね。
ものすごく簡単に理解すれば、ですけど。
空間線量の測定はγ線のみ測るのが基本で、β線が入ると誤計測という事になってます。
でも、なぜそうなのか、実はいまだに僕は理解出来てないんです。
α・β・γ線全部、バックグラウンドまで含めて、その場で感知出来る放射線の総量を出した方が
良いのでは?と素朴に思うのですが。
次に、土壌の汚染度を計測する場合について。
放射性物質の分析について (農水省PDF)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/data_reliance/pdf/rad_kensyu.pdf
公的機関での土壌サンプルの分析は、基本的にγ線のみの測定になります。
α・β線は実測無し。理由は上記のPDFに書いてあります。
実測すると時間も手間もかかるので、スペクトル分析でγ線の比率からα・β線核種の量を仮定する(α・β線の他にγ線も放つ核種)。また、福島事故で放出された核種の割合から仮定。
この場合、すぐ思い浮かぶ問題としては
●実際に比率通りかどうかは、実測しないので本当には判らない
●γ線しか測れない=γ線を全く出さない核種は計測不能
土壌サンプル調査でも、放射性物質の量を100%把握する事は難しい、と言えそうです。
ここまでが前置き。
ここからはド素人の妄想に近い話なので、話半分でお願いします。
疑わしく思えたのは、次の二点でした。
①空間も土壌も、そもそも数値に信頼性なんてあるんだろうか(誰が測っても、という意味で)
②土壌の汚染が高いのに空間が低く出るのは、α・β線が何か関係してるんじゃ?
まず①について。
ここを疑ってしまうと、もう定量的な捉え方自体に意味が無い、という話にもなりかねません。
実際そこまでは思わないのですが、環境って実験室の中とは違いますもんね。
例えば「放射線の強さは距離の二乗に反比例する」という法則は間違い無いですが、
放射性物質がカオスな動き方するのが環境だと思うんです。だから内部被曝が怖い訳で。
また、そもそもの「土壌の汚染度と空間線量率は比例する」という考え方ですが、
もちろんこれは平均化すれば、という話ですよね。
原子力委員会のグラフを見ても判ります。
第16回原子力委員会 資料第2号
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo16/siryo2.pdf
このグラフで例えば1μSv/h前後の空間線量を見ると、対応する土壌汚染は
約1万~148万ベクレル/㎡(約150~22800ベクレル/kg)の幅があります。
でも全体を平均化すると、確かに比例関係にはなっている。
なのですが、やっぱり僕が気になるのはこの誤差の部分です。
正確に言えば、誤差を誰かの都合で悪用される事が気になる訳ですよ。
すいません。所詮文系なもんで。
それから②についてですが、平たく言えば土壌は一応、α・β線をγ線からのスペクトル分析で
カバーしてるんですよね。
土壌汚染の単位であるベクレルには、別にα・β・γの種類がある訳でもない。
でも空間では遮蔽するので、α・β線の分が反映されない。
故に、空間線量は土壌の汚染度に比べて低く出る傾向があるのでは?と思います。
参考に、セシウムが出す放射線の解説を挙げます。
原子力資料情報室 - 「セシウム137」
http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/13.html
同・「セシウム134」
http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/12.html
セシウム137
ベータ線を放出してバリウム-137(137Ba)となるが、94.4%はバリウム-137m(137mBa、2.6分)を経由する。バリウム-137mからガンマ線が放出される。
放射線エネルギー(100万電子ボルト) ベータ線, 0.514(94.4%),
の寄与が大きい。1.18(5.6%); ガンマ線, 0.662(85.1%、バリウム-137mから放出される).
セシウム134
ベータ線を放出してバリウム-134(134Ba)となり(99.9997%)、軌道電子を捕獲してキセノン-134(134xe)にもなる(0.0003%)。多くのガンマ線が放出される。
放射線エネルギー(100万電子ボルト) ベータ線, 0.0886(27.3%), 0.415(2.51%),0.658(70.2%);ガンマ線, 0.563(8.4%),0.569(15%),0.605(97.6%), 0.796(85.5%), 0.802(8.69%), 1.365(3.0%)他
また難解な数字が(^o^;)
でも本文から何となく判った事は、セシウム137は一回崩壊してバリウム137mになる。
この時に強いβ線を出す、という事です。
一般に測定するセシウム137のγ線は、二回目にバリウム137mが崩壊する際に出すγ線を
測っている形。
セシウム134は137に比べるとβ線は少ないそうです。
という事は。
土壌のセシウム測定の場合、γ線からのスペクトル分析でβ線もベクレルに含まれる。
しかし空間線量では遮蔽される為、特に137の持つβ線の分が抜けてしまう。
以上の結論が出ました。
専門の人が見たら一発でゴミ箱行きかと思いますが、
まあ素朴な疑問ですのでそこはよしなに。
