真実のノート -2ページ目

最終話『真実のノート』

今の俺が、佐奈の為に出来る事

現状では、間違いメール から、知り合った変なメル友になる事位しか出来ない。


次の日 返信がくるかと恐る恐る送信したメールに、佐奈から、憎まれ口な返信が届いた。

『アハハ… メールでも あいつの口調は 変わらないや』

思わず、笑みが零れる。
今、佐奈が俺の横にいて、まるで 話しているようなそんな、気になってくる。

俺はタンスの中から 深緑色のセーターを取り出してしみじみと眺めた。

ボロボロで、お世辞にも上手いとは言えない編み目

高1のクリスマスイブ
俺は、少し前から このセーターを、佐奈が俺に編んでいてくれる事に気づいていた。
だけど、恥ずかしがって中々、手渡してくれ無いから、俺は無理矢理 あいつからこのセーターを奪い取ったんだ。


あの時のあいつの顔

今でも はっきりと覚えてる。

いつも、強気なあいつが
今にも、泣き出しそうに瞳を潤ませたんだ。


俺は、たまらずに あいつを抱き締めた。


そして、その瞬間に このセーターは、俺の大切な宝物になったんだ。

最終話『真実のノート』


考えた末、俺は 佐奈に

『もっと 夢みたいな場所を知っている』とメールで誘導して、ビルの屋上に登らせた。

続いて、俺も自宅マンションの屋上に上る。

遠くの方に、きらびやかな街の夜景が見えた。

『登ったよ』

素直に俺の誘導にしたがった佐奈からメールが届く。意地っぱりだが、素直な所は一年前と少しも変わらない。

(間違いない!俺の送信メールの先にいるのは佐奈だ。)
確信を深め、次の指示を書き入れると、送信ボタンを押した。

俺が佐奈に見て欲しかったもの、それは あの宝石のようにきらびやかに輝く、夜の街だった。こんな事をしても今の佐奈の状況を変える事など、出来やしないし、無意味なのかも知れない。今、佐奈も見ているだろう夜景を、眺めながら、俺は佐奈に問いかけた。


佐奈 何故、お前は 今 夜の街にいるんだ?

しかも、○ックスとシンナーだなんて…


想像しただけで、側にいてやる事の出来ない自分に腹がたった。

最終話『真実のノート』

メールを送信してから、少しの時間を置いて、再び 受信音が鳴った。

メールを開いて見る。
だが、直ぐに、俺の目は 大きく見開かれた。


そのメールには


『幸せですよぉ~、夜の街と○ックスと シンナーで夢見心地です』


そう、書かれてあったのだ。

『さ・・な・・』

口から、名前が漏れた。
心が、衝撃で震える。

もし、このメールが、佐奈からのものであるなら、俺は、この後、どうしたらいい!


立ち上がり、部屋の壁に、もたれかかりながら、俺は 次のメールの内容を真剣に考えていた。