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働きアリのブログ

働いても働いても遊べません

途中のなんでもない駅から乗ってきた今どきの娘二人。
20代か。

混雑した電車に乗込み、ヘトヘトサラリーマンに混じってドア脇に立って話している。
22時。
すでにどこかで飲む・食べるしてきたの話をする。
「○山でいいの?」
東○山は味噌たれの焼き鳥で有名な場所。
「うん。むしろキボンで」
「あたしは好きだからいいけど、連ちゃんでもいいの?」
「うん。あたしも大好き。だから行きたい」
「さっきさー、今いちだったよね。分かる」


背の高いほうがやや間を置いて、意を決したかのように話す。
「ってか。4人で居てさ、焼き鳥注文してさ、なんで女子は2本づつなわけ?」
「あー、奴らね。あたしらにはやらねーみたいな勢いでね」
「自分らばっか喰ってさ。追加頼もうとしたら、聞いたよね?」
「うん」
「『もう喰えないでしょ?』『デザートでいいよね?』だって!サラダと焼き鳥2本と豆腐であたしら晩飯おしまい?」
「もうちょっとねー、あってもいいよね」


「焼き鳥のおいしい店行こうっていったの奴らじゃん。焼き鳥の店行って、もも2本しか食べてないって、ひどいよね?あたし変?焼き鳥好きなんだけど。おごってもらってるから文句言えないって悲しいじゃん」
「で、飲み直しね(笑)あたし、焼き鳥なら10本は食べるよ」
「あたしなら20本はいける。大好きだしさー。でも一人でお店入って食べるのは辛いのよねー。一軒目で10本食べたら、今度別の店入って10本頼むの」
「あはは。わかる。わかる」
「そんな時、男が一緒だとたくさん注文しても、男が食べるからって思ってくれるじゃん。だから、気がねなく食べられるよねー。さっきだって4人で40本頼んでたじゃん。あ、10本は食べられると思ってたのに、2本しか食べさせないってひどいよ」
「奴らから、今度誘われたらどうする?断るよね。」
「断る。女子の焼き鳥好きなめてるし」
「○山の店だと、注文たくさんしても変な顔されないよ。焼き鳥好きが集まってくるから。」
「そうなの?」
「うん。埼玉の女子はむしろ○山で堪能してる。ガンガンやろう!」
「わー!楽しみじゃん」


「そのかわり。割りカンだよ」

「あ、あたし、食べた分払うよ。自分の分は自分で払ったほうが気がねないしさー」


そうだね。自分の分は自分で払おう。

堪能したいなら、そうしたほうがいい。

あと10分で○山に着く。見届けないけれど、がんばれ、焼き鳥女子。

多忙で毎日帰りが遅い。

遅くても電車は相変わらずの混雑ぶり。

ピークを過ぎると間引くので、余計に混雑する。

朝も同じパターンなのだが。


また、途中のジャンクションになる駅から人が押寄せて乗ってくる。21時だ。

一杯ひっかけて上機嫌の爺さんが2人乗ってきた。

いいなー。私の夕飯は何時だろうか。22時か23時か?


酒臭い2人はひどい混雑にもかかわらず、周囲に聞かせるように大声で話す。

「結局、金なんですよ。あいつら。今の若者は仕事のヤリガイもなにもない。金さえもらえばホイホイどこへでも行く」

「何年居たんだ?そいつは?」

『そいつ』とやらが造反したのか。

「10年経ってない。まぁーだ30になったばかりだというのに、次のところは7百万の金を出すと言うんですよ」

「いくらもらってたんだい?そいつは?」

「うちの会社じゃ、課長だけど、3百万ちょっとですよ。ニョウボ、コドモが居るんで」

「倍か?すごいな。事務か何かか?」

「いえ、営業です。なんでも大学は2つ出たとか言っていたんですが、うちの会社じゃーそんなの関係ない。皆、おんなじような金額でやってるんだから」

「で、どこへ行ったんだ?」

「聞いてくださいよ。ひどいったら。そいつ、同業行ったんですよ」

「業界の経験を活かしてってやつかー。ひどいな。下手したら、客も持っていかれるぞ」

「ええ、ええ。持って行く気満々です。そうやってあっちで上手くやるつもりです。いくらそんな金が出るからって、入れてもらった会社出ていくなんてひどい話だ」


爺さんの一人はたいそう憤慨している。


・・・・・30代で3百万は安くないか?女房、子ども扶養で。


「あんたんとこは皆そんな感じの給与か?」

「あたり前ですよ。従業員にそんなに金を出す会社がありますか?」

「まぁ、なんだ、外資系とかなら金を出すな」

「とんでもありませんよ。仕事があるだけましです。余計な金を渡すと遊ぶことばっかり考えます。せっせと働かせるためには、なんだ・・・」

「どうしたら、そんな安月給で納得するんだ?」

「・・・言ってやるんですよ。『お前みたいのはどこへ行っても通用しないゾ』と」

「へぇぇ。それで?」「『社内でお前の評判は最低だゾ』『お前の仕事をあいつが狙ってるゾ』ってね」

最低な爺だな。身なりからして経営者か。

「ふぅん。でも、たまには、今度の奴みたいなのが出てくるんだな?」

「この不況なんだから、給料もらえるだけでありがたいと感謝してもらわなきゃ困る」

「・・・・・・・・・・・」


片割れの爺さんが何かを思い出そうと窓の外に目を凝らす。

「O林さんよ。こないだの、えーーっと、何て言ったっけ、一緒にXX工業大で話した、おたくの社員の・・・」

「△沢ですか?」

「あ、△沢君って言う、あの子はどこ出てるの?」

「あいつはツマラン奴ですよ。国立がダメだったから、OO大出て。OO大って言っても所詮、私立ですから」

「そんなことないでしょう」

イヤイヤイヤイヤ・・・・・しきりにかぶりをふる爺にもう一人がとどめを刺す。


「うちの社長がね。OO大なんだよ。後輩にあたるから、一度一緒に飲みにでも誘えないかなー。いい子だよね」

トンドモ、メッソウデモ、アノ馬鹿ガ・・・・・ツカイモノニナゾナリマセン・イツデモクビニシテヤルカラ・・・・。などとしきりに謙遜する爺だった。事の重大さに気づいていないようだ。

「ね。そんなに困った子なら、うちでいいかな?金なら、人並みに出すから」

「え?」

「おたくは、結局、普通に出せないんでしょ?」

「え?何をです?」

「お金。おたくじゃ従業員にお金、出せないんでしょ?」

問題の本質は他人に言われて気づく事もあるのだ。

「こないだ名刺もらったから、△沢君には連絡させてもらうよ」

ニンマリ笑って、爺の一人が相手の顔を見た。

不況だからこそ、埋もれていた人がやっと動くのかもしれない。


ピンチだがチャンスだ。転職会社のキャッチコピーを思い出した。


22時を過ぎて、バカなほうの爺と一緒に田舎の駅のホームに下りた。

爺は熱でもあるかのようにボォーーーとホームに立ったままだった。


勘違い爺はそのままそこに居るがいい。

あ。
電車逃した。

しょーがないなー。
とぼとぼと階段をホームに向けて下りる。
朝の1本は田舎駅を利用する者にとっては貴重な時間ロスに繋がる。

今朝は早く会社に着きたかったのに。
どーすっか。
どーするもねー。仕方無い。待つしかない。

ホームの中ほどにベンチがあり、若者が大きなバッグとともに占領している。
サンドイッチやら、おにぎりを頬張っている。
朝飯食べ損ねたのか。

苦笑しながら、通りすぎようとすると
ッズ。ズズゥーー

麺をすする音。
ラーメンの匂いが朝のホームに漂う。
強烈。

梅雨も近いし、気温も高い。

臭い匂いは勘弁して欲しい。


もーっちとなかったか?選択肢が?匂いが凄いだろう??
駅外のコンビニでお湯を入れて、ここまで持ってきたんか。
まー丁度、3分くらいだな。

そのうち、下り電車が到着し、大勢の乗客が下りる。

「なんだ?」
「臭いぞ」
「異臭だ」
「クスリの匂いがする」
「げ?くっさー」

口々にそう言って通りすぎていく。
しまいに、
「腐った肉の匂いがする」などと言う輩も。

そこまでじゃないだろう?
な、食べてる奴がいる以上はさ。



腹ごなしした連中が、ゴミをジュースの自販機の缶入れに突っ込み、移動した。
匂いだけが残った。

まだ電車の中が臭いよりましか?


待っていたのぼり電車がやってきた。
ドアが開いて、客が下りる。

中年のおばさんが頓狂な声を上げる。
「まぁーーー。何?この匂い?」
「ゴミが置いてあるんだわ」
「誰かがもどしたんじゃないの?」

我々が電車に乗込んでも電車のドアは閉まらず、発車しない。
何?


ややあって、駅員がホームに駆け付ける。
ハンカチで口を抑えている。
匂いのするあたりの車両からは、乗客が他へ移動する。

そこまで臭いか?


ああ、確かにさっきのラーメンの匂いになんか混ざってよりパワーアップしている。
これは?
ラーメンの匂い以外に何か臭い。

何だろう?

あ。あいつだ。

飯を食べていた連中と同じ車両にくたくたのスーツを着た若い会社員が乗っていた。
スーツがいつ洗ったんだかペカペカに光っていて、シャツの首周りが茶色に汚れている。
プーさんというわけではないが、こういう格好をしたプログラマーが居たっけなー。

多分、単独じゃ、臭いといっても騒がれるほどではないところへ、強烈ラーメン臭の彼等がそばに寄ったので、倍増。いや、5倍位に臭い場所になってしまった。

飯喰っていた連中とその汚スーツの彼がのんびり車両の長い椅子に座っていた。
何事もないように。

臭い同士だから、気にならないんだろーなー。


電車はドアが閉まり、彼等の周りの人は避難した。
私も失礼ながら、隣の車両に逃げた。
電車が動くと空気も動く。
しまった。隣くらいでは、まだ匂う。

次の駅に着いて、もう1つ隣にさらに移動した。


臭いのは、かんべんしてよ。

さらに2先の駅で別の始発電車に乗換えた。


もちろん会社は遅刻。
だが、あのまま1時間30分もあの匂いを嗅ぎ続けてはいられなかった。

遅刻より、臭くない空気を選んだ。