経済や法律をやる人は、その先に生の現実がある。
科学を志す者は、その先にリアルを見てはいない。知りたいだけ。
たとえそれが私たちの地上にはないとしても。2012/6/12
見るな触るなと言われてきた。だから見なかったし、触れなかった。
知らない理由は蓋をするところにある。2012/6/12
音楽を語ろうとしなければ、音楽は語りかけてくる。悠々と。2012/6/12
外のバイクがうるさいと、苛立ちながら窓を閉めるときいつも思う。
彼らはノイズで鬱憤を晴らし、僕は窓を力任せに閉めて、ああ何もかも同じじゃないか。何もかも同じじゃないのなら、笑って彼らに手を振れるなら、僕はどんなに幸せだろう。2012/6/12
世界は変えられる。これは真っ赤な嘘だ。人間ひとり、どうあがいたところで、プレートは動いて、人が働いて、草木が緑色をする。何も変わらない。何もかも。だから僕は世界を変えたいんだ。2012/6/12
歌詞のわからない英語の歌。英語だと知っているから英語に聞こえる。2012/6/12
無力でありたくない。英雄になりたい。皆にさんざんコケにされた挙句、死んでから讃えられてテキストに載る。山のような人間に影響して、おまえがいたかいなかったかが大事なことになる。馬鹿げていて、寂しくて、かっこいい人生。結局最後まで無力。2012/6/12
明日起きなければならない。でも眠くはない。
寝なければ起きられないかもしれない。でも眠くはない。
目覚ましが鳴らないかもしれない。でも眠くはない。
朝食が食べられないかもしれない。でも眠くはない。
彼女はきれいかもしれない。でも眠くはない。
厳しい環境かもしれない。でも眠くはない。
楽しいかもしれない。でも眠くはない。
天気が悪いかもしれない。でも悪くはない。
天気はよくなくてもいいかもしれない。2012/6/12
十人いれば十個のやり方がある。
百人いれば百個の、千人いれば千個のやり方がある。
一人だとやり方はない。2012/6/13
尊敬すると、ただ愛するだけではいられなくなる 2012/6/13
昔を引っ張り出して今に放り込んでも、たとえそれがどんなに輝かしかろうとも、腐敗臭を免れない。
夢を無理矢理ここへ連れてくれば、たとえそれが無愛想であっても、いい音色がする。2012/6/13
半分おれのときと全部おれのとき。後者はまず世間には住めない。2012/6/13
リスクを負った親切がどこまであるのか。
電話はほんとうにかかってくるのか。2012/6/12
抜きん出る、つまり他者より優れるということは、マイノリティであることを受け入れるということだ。
同時にそれは、幾らかの孤独感を携える覚悟が必要なことである。ある人格や価値観が本当に優れているとき、それは社会に広がる大衆には受け入れられない場合が多い。なぜなら、大衆に浸透する一般的、もっと言えば通俗的な価値観は、往々にして優れていることは少ない。これは、現代社会に蔓延する価値観が少なくとも優れてはいない、という論を前提としている。
誤解を招きやすいのが、ここで取り上げる「優れる」という概念が、通俗的ではない、つまり社会における評価には関係しないということだ。学校を例に挙げれば、成績が良い、足が速い、賞をもらう、などという一般的な評価とは縁のない評価における「優れる」であり、非常に雑な言い方をすれば、性格や生活態度である。(雑である理由は、それらを評価している価値観も通俗的である場合が多いからである。)
では「優れる」とは何か。それを一概に定義することは難しい。なぜなら、それは正義の指標ではなく、単純な量的概念だからである。生きる上で直面する様々な事象、もしくは直接体験せずとも想像することのできる事象について、どれだけ頭を悩まし、考え、苦しんできたか。そしてそこから自分の正しいと信じる方向性を導き出すという苦しい作業をどの程度繰り返してきたか。そういった思考や悩みの過程を表すスカラー量が大きいことを「優れる」と、ここでは定義している。重要なのはそれが決してベクトルではないということだ。正しい方向を決めるには、人類はまだ無知すぎる。
社会に蔓延する価値観が優れていない理由は、社会が十分に思考していないからである。はっきりと述べると、現代社会を取り巻く考え方は非常に感情的で、短絡的だ。何が正しいのか、どの方向に進むべきなのかについて悩み苦しみことを、現代人は過剰なまでに嫌う。いかにして苦難なく幸福を手にするか、そればかりを追求する傾向がある。利己心や社会貢献など、そういった類いの問題を議論しているのではない。そういった類いの議論に真摯に向き合い、頭を悩ましてきたかどうかが重要なのである。
ほとんどの人々が様々な事象への思考や吟味を投げ捨てている社会で、その社会傾向に抗うかのように思考に苦しむ人々はマイノリティであることから逃れられない。そして考えを深めれば深めるほどに、通俗的な社会との間を隔てる壁は分厚くなり、孤独感は増していく。そのため多くの人々はマイノリティであることを諦め、いわば放棄して、俗世間に飲み込まれていくのである。世の中は更に思考しなくなっていく。
しかしながら、世界的に大きな、偉大な業績を成し遂げる人物は、確実にマイノリティである。これは疑いようのない事実である。なにしろ、偉大である人物は少数なのだから。つまり、進歩できる人間は、マイノリティである。孤独を恐れ、通俗的な評価ばかりを気にしていては、偉大なる業績を残すことはできない。
このように、優れることには苦難がつきまとい、孤独を受け入れる必要がある。しかし、それは決して寂しいだけのものではない。マイノリティはその小さな集団の中で最も強固な絆を得ることができる。なぜなら、彼らには共有できる苦難や思考の経験が豊富にあるからである。そして彼らが社会を、世界を進歩させ、支えている。彼らの輪に入るかどうかは、個人の選択に委ねられている。
同時にそれは、幾らかの孤独感を携える覚悟が必要なことである。ある人格や価値観が本当に優れているとき、それは社会に広がる大衆には受け入れられない場合が多い。なぜなら、大衆に浸透する一般的、もっと言えば通俗的な価値観は、往々にして優れていることは少ない。これは、現代社会に蔓延する価値観が少なくとも優れてはいない、という論を前提としている。
誤解を招きやすいのが、ここで取り上げる「優れる」という概念が、通俗的ではない、つまり社会における評価には関係しないということだ。学校を例に挙げれば、成績が良い、足が速い、賞をもらう、などという一般的な評価とは縁のない評価における「優れる」であり、非常に雑な言い方をすれば、性格や生活態度である。(雑である理由は、それらを評価している価値観も通俗的である場合が多いからである。)
では「優れる」とは何か。それを一概に定義することは難しい。なぜなら、それは正義の指標ではなく、単純な量的概念だからである。生きる上で直面する様々な事象、もしくは直接体験せずとも想像することのできる事象について、どれだけ頭を悩まし、考え、苦しんできたか。そしてそこから自分の正しいと信じる方向性を導き出すという苦しい作業をどの程度繰り返してきたか。そういった思考や悩みの過程を表すスカラー量が大きいことを「優れる」と、ここでは定義している。重要なのはそれが決してベクトルではないということだ。正しい方向を決めるには、人類はまだ無知すぎる。
社会に蔓延する価値観が優れていない理由は、社会が十分に思考していないからである。はっきりと述べると、現代社会を取り巻く考え方は非常に感情的で、短絡的だ。何が正しいのか、どの方向に進むべきなのかについて悩み苦しみことを、現代人は過剰なまでに嫌う。いかにして苦難なく幸福を手にするか、そればかりを追求する傾向がある。利己心や社会貢献など、そういった類いの問題を議論しているのではない。そういった類いの議論に真摯に向き合い、頭を悩ましてきたかどうかが重要なのである。
ほとんどの人々が様々な事象への思考や吟味を投げ捨てている社会で、その社会傾向に抗うかのように思考に苦しむ人々はマイノリティであることから逃れられない。そして考えを深めれば深めるほどに、通俗的な社会との間を隔てる壁は分厚くなり、孤独感は増していく。そのため多くの人々はマイノリティであることを諦め、いわば放棄して、俗世間に飲み込まれていくのである。世の中は更に思考しなくなっていく。
しかしながら、世界的に大きな、偉大な業績を成し遂げる人物は、確実にマイノリティである。これは疑いようのない事実である。なにしろ、偉大である人物は少数なのだから。つまり、進歩できる人間は、マイノリティである。孤独を恐れ、通俗的な評価ばかりを気にしていては、偉大なる業績を残すことはできない。
このように、優れることには苦難がつきまとい、孤独を受け入れる必要がある。しかし、それは決して寂しいだけのものではない。マイノリティはその小さな集団の中で最も強固な絆を得ることができる。なぜなら、彼らには共有できる苦難や思考の経験が豊富にあるからである。そして彼らが社会を、世界を進歩させ、支えている。彼らの輪に入るかどうかは、個人の選択に委ねられている。
僕には殺人衝動がある。何かの拍子で僕の前頭葉に傷が一筋でも入れば、僕はたちまち衝動を抑える押し蓋を失って、恐るべき殺人鬼へと生まれ変わってしまうだろう。まだ一度も試していないのが唯一の僥倖だ。
僕はずっと思い悩んでいた。いったい誰が世の中をこれほどに窮屈にしたのだろうと。
悩みは悩みを引き寄せるらしい。僕は彼女に出逢った。知り合ってすぐに、彼女は運命の人だとわかった。彼女は人生に絶望し、そして死に場所を探していた。その理由は‥‥省く。
「わたしもう、生きている気がしなくて‥‥」
僕は手を叩いて喜んだ。もちろん実際は喜悦の声など上げてはいないし、そんなことおくびにも出さない。それらしい慰めの言葉を探し当てて背中をさすってやった。
かくして僕は、いとも容易く、彼女をそばに置くことに成功した。運命の人にはそうそう出逢えるものではない。彼女さえいれば、もはや風前の灯なのにまったく消滅の兆しの見えない、良心という厄介者を傷つけずにすむというものだ。僕は最もすばらしい殺し方をじっくりと考えることにした。
さて、やっぱり刺殺だろうか。質感を求めるならば、絞殺も興味深い。毒殺だけはあり得ないな。この一回で僕の衝動に蹴りがつくような、そんな最も体験的でシュールな方法はないものか。
彼女との生活が続くうちに、彼女はなぜか元気を取り戻していった。
「わたしを救ってくれたあなたになら、もう殺されたってかまわないわ」
こう言われる度に僕は胸を踊らせ、自分に与えられた幸福を噛み締めた。
ある日、二人で夕食を済まして帰路についていたときのこと。僕は生まれてこのかた初めて自分と同類の人間に出逢った。彼は包丁をまるで子供のように振り回し、辺りの人々に次々と襲いかかっていく。同じ衝動を抱えているにしても馬鹿なやつだと思った。殺し損ねた怪我人でそこら中が溢れ返っているじゃないか。
ふと気がつくと彼女の姿がない。大地震のようなこれまでにない焦燥感。時が止まるとはまさによく言ったものだ。僕はそれはそれはひどい形相で周囲を見回し、狼狽した。
彼女をやっと見つけたとき、自分の重大な過失に気がついた。僕が最もよく知っている筈なのに、僕が最も忘れていた。彼女は優しい。そして気高く、美しい。
怪我人の傷口を紙や布で覆うのに必死な彼女の姿を見つけたのは、彼よりも僕の方がコンマ数秒早かった。こいつめ、いったい何が気に食わないというのだ? あろうことか、彼は逆上して彼女に襲いかかろうとしたのである。殺し損ねたのは自分だろうに。
クラウチングスタートを構えていたわけでもないが、僕の駆け出しはこの上なく瞬発的だった。畜生め、僕にとって彼女がどれほど大切だかわからないのか? おまえなどの殺人衝動につき合っていられるものか。くそ、彼女は僕の‥‥、そう僕の‥‥。
腹部に雷が落ちた。しかし不思議なのは赤い雷に見えたことだ。ゴロゴロという雷鳴の代わりに、彼女の大きな叫び声が聞こえてくる。駆けつけた警官に彼が取り押さえら‥‥いく‥‥が朦朧‥‥て‥‥、彼女‥‥が‥‥。
夢をを見た。僕の中の夢を見た。身体を忘れた僕は傷だらけ。美しく咲くように噴き出す赤い血潮をただ呆然と眺めた。あれ? 誰だろう? 止血をしているのは。あの‥‥、いいんです。僕はいいんです。僕みたいなのは‥‥、僕みたいなのは‥‥。
目覚めると僕はベッドの上に横たわっていた。眩しい蛍光灯の光が、もう一度僕に目を瞑らせる。
「ああ、気がついたのね。よかったわ。あなたが死んじゃうと思ったら、そう思ったらわたし‥‥」
僕の目覚めと入れ換えに傍らの彼女がおいおい泣き始めた。彼女の眩しさもたまったものじゃなかったけれど、両目は開けておく。涙を拭う彼女の頭を優しく撫でてやりながら、僕はふっと笑った。
「‥‥何がおかしいのよ」
そのくしゃくしゃに濡れた膨れっ面がとどめの一撃だった。
だってこんなにおかしいことってあるかい? 殺すためにそばに置いてきた人を、人殺しから命がけで守るなんて。それなのに、こんなにあたたかいなんて。
僕には殺人衝動がある。何かの拍子で僕の前頭葉に傷が一筋でも入れば、僕はたちまち衝動を抑える押し蓋を失って、恐るべき殺人鬼へと生まれ変わってしまうだろうと思っていたけど、僕は変わった。まだ一度も試していないのが唯一の証拠だ。
彼女との生活が更に続くうちに、僕はなぜか元気を取り戻していった。
「僕を救ってくれた君のためなら、もう殺されたってかまわないな」
こう言う度に僕らは胸を踊らせ、自分達に与えられた幸福を噛み締めた。
僕はずっと思い悩んでいた。いったい誰が世の中をこれほどに窮屈にしたのだろうと。
悩みは悩みを引き寄せるらしい。僕は彼女に出逢った。知り合ってすぐに、彼女は運命の人だとわかった。彼女は人生に絶望し、そして死に場所を探していた。その理由は‥‥省く。
「わたしもう、生きている気がしなくて‥‥」
僕は手を叩いて喜んだ。もちろん実際は喜悦の声など上げてはいないし、そんなことおくびにも出さない。それらしい慰めの言葉を探し当てて背中をさすってやった。
かくして僕は、いとも容易く、彼女をそばに置くことに成功した。運命の人にはそうそう出逢えるものではない。彼女さえいれば、もはや風前の灯なのにまったく消滅の兆しの見えない、良心という厄介者を傷つけずにすむというものだ。僕は最もすばらしい殺し方をじっくりと考えることにした。
さて、やっぱり刺殺だろうか。質感を求めるならば、絞殺も興味深い。毒殺だけはあり得ないな。この一回で僕の衝動に蹴りがつくような、そんな最も体験的でシュールな方法はないものか。
彼女との生活が続くうちに、彼女はなぜか元気を取り戻していった。
「わたしを救ってくれたあなたになら、もう殺されたってかまわないわ」
こう言われる度に僕は胸を踊らせ、自分に与えられた幸福を噛み締めた。
ある日、二人で夕食を済まして帰路についていたときのこと。僕は生まれてこのかた初めて自分と同類の人間に出逢った。彼は包丁をまるで子供のように振り回し、辺りの人々に次々と襲いかかっていく。同じ衝動を抱えているにしても馬鹿なやつだと思った。殺し損ねた怪我人でそこら中が溢れ返っているじゃないか。
ふと気がつくと彼女の姿がない。大地震のようなこれまでにない焦燥感。時が止まるとはまさによく言ったものだ。僕はそれはそれはひどい形相で周囲を見回し、狼狽した。
彼女をやっと見つけたとき、自分の重大な過失に気がついた。僕が最もよく知っている筈なのに、僕が最も忘れていた。彼女は優しい。そして気高く、美しい。
怪我人の傷口を紙や布で覆うのに必死な彼女の姿を見つけたのは、彼よりも僕の方がコンマ数秒早かった。こいつめ、いったい何が気に食わないというのだ? あろうことか、彼は逆上して彼女に襲いかかろうとしたのである。殺し損ねたのは自分だろうに。
クラウチングスタートを構えていたわけでもないが、僕の駆け出しはこの上なく瞬発的だった。畜生め、僕にとって彼女がどれほど大切だかわからないのか? おまえなどの殺人衝動につき合っていられるものか。くそ、彼女は僕の‥‥、そう僕の‥‥。
腹部に雷が落ちた。しかし不思議なのは赤い雷に見えたことだ。ゴロゴロという雷鳴の代わりに、彼女の大きな叫び声が聞こえてくる。駆けつけた警官に彼が取り押さえら‥‥いく‥‥が朦朧‥‥て‥‥、彼女‥‥が‥‥。
夢をを見た。僕の中の夢を見た。身体を忘れた僕は傷だらけ。美しく咲くように噴き出す赤い血潮をただ呆然と眺めた。あれ? 誰だろう? 止血をしているのは。あの‥‥、いいんです。僕はいいんです。僕みたいなのは‥‥、僕みたいなのは‥‥。
目覚めると僕はベッドの上に横たわっていた。眩しい蛍光灯の光が、もう一度僕に目を瞑らせる。
「ああ、気がついたのね。よかったわ。あなたが死んじゃうと思ったら、そう思ったらわたし‥‥」
僕の目覚めと入れ換えに傍らの彼女がおいおい泣き始めた。彼女の眩しさもたまったものじゃなかったけれど、両目は開けておく。涙を拭う彼女の頭を優しく撫でてやりながら、僕はふっと笑った。
「‥‥何がおかしいのよ」
そのくしゃくしゃに濡れた膨れっ面がとどめの一撃だった。
だってこんなにおかしいことってあるかい? 殺すためにそばに置いてきた人を、人殺しから命がけで守るなんて。それなのに、こんなにあたたかいなんて。
僕には殺人衝動がある。何かの拍子で僕の前頭葉に傷が一筋でも入れば、僕はたちまち衝動を抑える押し蓋を失って、恐るべき殺人鬼へと生まれ変わってしまうだろうと思っていたけど、僕は変わった。まだ一度も試していないのが唯一の証拠だ。
彼女との生活が更に続くうちに、僕はなぜか元気を取り戻していった。
「僕を救ってくれた君のためなら、もう殺されたってかまわないな」
こう言う度に僕らは胸を踊らせ、自分達に与えられた幸福を噛み締めた。