前回の記事

 

‐東アジアの今とこれから その2(朝鮮侵略に反対する明治期社会主義者の活動)‐

 

 

「諸君よ、今や日露両国の政府は各其帝国的欲望の達せんが為めに、漫に兵火の端を開けり、然れども社会主義者の眼中には人種の別なく、地域の別なく、国籍の別なし、諸君と我等とは同志也、兄弟也、姉妹也、断じて闘ふべきの理有るなし、諸君の敵は日本人に非ず、実に今の所謂愛国主義也、軍国主義也、我等の敵は露国人に非ず、而(しか)して亦(また)実に今の愛国主義也、軍国主義也、然り愛国主義と軍国主義とは、諸君と我等の共通の敵也、世界万国の社会主義者が共通の敵也、諸君と我等と全世界の社会主義者は、此(これ)共通の敵に向かって、勇悍(勇敢)なる戦闘を成さゞる可からず、」

 

『与露国社会党書』より

 

「朝野(官民)戦争の為めに狂さざるなく、多数国民の眠は之が為めに昧み、多数国民の耳は之が為めに聾(ろう)する<=耳が聞こえなくなる>の時」

 

(『週刊平民』一九〇四、四、一七)

 

 

廿世紀之怪物 帝国主義(『山星書店 初版本 和本 古地図 史料他 在庫販売目録』より)

http://shohambon.yamabosi.jp/?p=5979

 

 

幸徳秋水はこれより先、すでに1901年『廿世紀之怪物 帝国主義』(二十世紀の怪物 帝国主義)によって、「帝国主義は所謂愛国心を経とし、所謂軍国主義を緯となして、以て織り成せる政策にあらずや」「愛国心」「軍国主義」の本質を説きました。

 

帝国主義は、資本家が商品と資本を輸出するための市場と原料資源の独占を要求するところから生まれ、その結果市場の争奪、軍備拡張、帝国主義戦争へと発展していくことを明らかにしていましたが、日露戦争の目的と本質についても、これが「殖民地又新市場の拡張」のための帝国主義戦争であることを述べました。

 

「戦争の目的は、殖民地及び新市場の拡張に在らん、殖民地及び新市場拡張の目的は果たして何れに在りや、国民多数の貧困は之が為に除かるべき乎」

 

「日本が朝鮮、満州、西比利を取れりと仮定せよ、之が福利を受くる者は、唯(た)だ政治家、資本家の階級ならんのみ、何の地位なく、些の資本なき多数労働者は、能(よ)く何事を為し得べき乎」

 

「否(い)な戦争は常に政治家、資本家の為めに戦はるゝのみ、領土や市場は常に政治家、資本家の為に開かるゝのみ、多数国民、多数労働者、多数貧者の与り知る所にあらざる也」

 

(『週刊平民』、一九〇四、八、二一「社会党の戦争観」)

 

 

これらの言論から、幸徳らは反戦活動を通じて、合わせて戦争による朝鮮、中国への侵略への反対活動も行っていました。

 

したがって彼らは、明治政府日清戦争と日露戦争ならびにその勝利と平行して、『日韓議定書』(1904年2月23日)『第一次日韓協約』(同年8月22日)『第二次日韓協約』(1905年11月17日)『第三次日韓協約』(1907年7月24日)時の大韓帝国へ強要し、朝鮮への干渉を日に日に強くしていく中、これに反対してたたかう朝鮮民衆と、その闘争「日本と日本人に危害を加える『反乱』『暴動』『暴徒』『暴民』『乱民』」などと攻撃し、日本人の中に朝鮮人敵視と侵略心を煽り、着々と朝鮮併呑のプログラムを進めていくのを系統的に暴露し続けていました。

 

当時の社会主義新聞を閲覧すると、

 

『卑劣なる主戦論』(『週刊平民』、一九〇四、一、一七)

 

『敬愛なる朝鮮』(『同』、一九〇四、六、一九)

 

『韓国の土地を掠奪するの企画』(『同』、一九〇四、七、一〇)

 

『朝鮮併合を評す』(『同』、一九〇四、七、一七)

 

『義戦論者に問ふ』(『直言』、一九〇五、三、一九)

 

『満韓殖民政策と平民階級』(『日刊平民新聞』、一九〇七、一、二〇~二五)

 

『社会主義者有志の決議』(『大阪平民新聞』、一九〇七、八、一)

 

『韓国の末路』『咄!戦争の目的』(『同』、一九〇七、八、二〇)

 

『日韓両国の平民』(『週刊社会新聞』、一九〇七、一二、一五)

 

『韓国の排日運動』(『同』、一九〇八、一、一二)

 

などなど、幾多の記事や論説を掲げて日本帝国主義の朝鮮侵略を鋭くウォッチしています。

 

以下の内容から、朝鮮侵略反対運動の状況を見ていきましょう。

 

すでに『敬愛なる朝鮮』は、日清・日露の両戦争が、日本の政治家が言うように「朝鮮救済」「朝鮮の独立擁護の正義の戦争」だろうかと疑問を投げかけています。

 

「試に之を朝鮮国民の立場より観察せよ、是一に日本、支那(清)、露西亜(ロシア)諸国の権力的野心が、朝鮮半島てふ空虚に衝ける競争に過ざるに非ずや」と論じましたが、『朝鮮併呑論を評す』においては「見よ、領土保全と称するも、其結果は只より大なる日本帝国を作るに過ぎざることを、・・・・・・」と指摘しています。

 

当時の東アジア情勢(ビゴーの風刺画より)

https://matome.naver.jp/odai/2134528834829345901

 

もちろん今の時代は、わざわざ「新市場」を求めるためだけに、莫大な戦費を投じて、どこかの国へ戦争を仕掛けたり、膨大な領土を抱えて、その維持や警備、はたまた自社のみで、全ての施設を賄うという、時代遅れなやり方はしません。大企業にしろ、海外を含めた外注化などを通じて、網の目のような『サプライチェーン』を構築するのが常識です。

 

しかしながら、「独占」という形態は未だに残っていて、特に情報産業を筆頭とした、アメリカの最先端企業などは、自国が作り上げたインターネットを武器に、文字通り「先取特権」の論理のごとく勢いで、次々と新たな検索エンジンや、各種SNSの開発に力を入れています。

 

また、時代遅れになった前述の帝国主義のシステムにしても、その「遺産」を継ぐ国々、特に欧米諸国が、近代に学術経済・金融システムを作り、その「ルール」我々『非欧米』の後発者に押し付け、一方的に国債を格付けしたり、そうした裁断者としての振舞いをやめようとはしません。

 

ここで幸徳の言葉を思い浮かべてみます。

 

日本が朝鮮やその他の国を植民地としても、それで儲けるのは「一部の特権階級」のみであり、その他大勢の一般人にとって、満足させるのは「己の小さなナショナリズム」だけに過ぎず、貧乏人は一生苦しいまま、現代に置き換えてみても、それが最も「先鋭化」した世界となり、超富裕層の上位何人だけで、全人類のおよそ半分の富を「牛耳っている」状態で、彼らが運営する『企業帝国』なるものが、政治や経済・言論に深く介入し、殊にアメリカの政治では、軍と産業が一体となって、中東やその他の地域で火種を作り、過去の帝国主義の「焼き回し」を続けています。

 

ゆえに、今も『帝国主義』は形を変えながらも生き続けています。

 

 

<参考資料>

 

・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房

 

・山星書店 初版本 和本 古地図 史料他 在庫販売目録 『廿世紀之怪物 帝国主義』

 

http://shohambon.yamabosi.jp/?p=5979

 

 

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