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‐シリーズ『日米同盟』の正体 その3(ケネディ時代のアメリカ極東戦略③)‐

 

 

『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房(一二七頁より) (⑬)

 

こちらは1960年代のアジア・太平洋地域における、「駐留米軍」の規模を表した資料です。

 

日本に駐留するアメリカ軍は約4万人で、当時米国領だった沖縄には5万韓国(南朝鮮)に4万フィリピンに1万南ベトナムにの1万6千5百タイに4千、それらを統括するアメリカ太平洋艦隊(本体)は、5万5千人の兵力です。

 

また註釈に、台湾にも4~5千人の米軍がいるとされて、さらに南ベトナムの米軍について、『解放民族戦線』の報告によれば、2万5千人ともされています。

 

どうしてこのようなことになったのか、1960年末頃から、アイゼンハワー政権の末期からケネディ政権の成立期にかけて、アメリカ太平洋軍はその全勢力をあげて「中国孤立化」「封鎖の配備」を計ったのが起点でした。

 

同時に、対中国戦略攻撃は、ソ連の格報復を抑制し、戦争を他の地域に波及させないという「限定局地核戦争」が想定され、1963年6月21日、ハリマン米国務次官は、アメリカが「ソ連、イギリスとともに、実験禁止問題で合意に達する原因の一つは、(核兵器の)拡散を防ぐことができ、中国が核戦力を獲得するのを、われわれは協力して防ぐことができることだ」と述べました。

 

現代では、北朝鮮の『非核化』問題や、それによる「核兵器の不拡散」が話題でしたが、それと「まったく同じ話」が、当時の中国を取り巻く環境で議論されていました。

 

そのすぐ後の、同年7月25日、ソ連の首都モスクワで、ケネディ大統領(当時)が取り結んだ部分核停条約(『米英ソ三国の大気圏内、大気圏外、水中での核実験の停止に関する条約』の略称)も、当面における地下実験の道を残し、核兵器の「製造」「貯蔵」「使用」「輸出」の可能性には何ら影響がなかった点から見ても、地下実験が、アメリカ製小型の戦術的核兵器が━中国周辺、たとえばインドシナ半島で使用の可能性が濃厚━の開発に深い関係があったと理解されるべきでしょう。

 

世界政策を持っているアメリカとしては、いかに極東戦略を重視するといっても、ベルリン問題を抱えるヨーロッパを無視ないし軽視することはできません。1963年秋に、西ドイツを舞台に行った『ビッグ・リフト(大空輸)』演習に続き、翌年1月における、日本(沖縄=当時は米国領)で実施した『クイック・リリース(緊急発進)』演習は、ヨーロッパで西ドイツアジアで日本頼るべき「両脚」として見ていた裏付けがありました。

 

特に、第六次日韓会談と絡み合って提起されつつあったポラリス原子力潜水艦の極東配備が、候補基地4ヵ所のうち、3ヵ所が日本(横須賀、佐世保、沖縄<同>)であることは注目に値します。

 

それに前後して、F105D戦闘機(サンダーチーフ)の日本配備が完了し、これは日本が「中国封じ込め」政策との関係で見る時、まさに陸・海・空三軍における全ての点で、対中国第一線基地に再編成されつつあることの証拠でした。

 

は日韓会談━終局的には自衛隊の「対韓派兵」であり、アメリカ原子力潜水艦の「日本寄港」で、は既述のサンダーチーフ戦闘機の日本配備という具合に、その「すべての矛先」が、中国大陸に向けられていることについて、いまさら説明は要さないでしょう。

 

このような中国に対する積極作戦のためには、まず対ソ戦略を強化するという側面(例えばソ連の潜水艦が日本海から外海に侵出ししないようにするための朝鮮海峡における通過阻止作戦(⑩)━この場合、当然日韓両国の軍事協力が不可欠なものとします)があります。

 

一般にマリアナ補給線といわれる米本土=ハワイ=南洋諸島=小笠原諸島=日本を結ぶ線の確保という側面(この場合は、日本本土のローラン基地と小笠原の日本への返還拒否が不可欠のものである)が必然的に随伴します。

 

こうした「日本の軍事的再編成」にともなって、朝鮮38度線(軍事境界線)付近に配備された核部隊(⑪)台湾、南ベトナムに配備された核部隊は、局地戦闘に適合する部隊に改編されつつあります。

 

殊に、在韓米軍の上陸部隊に関して言えば、アメリカの国防総省が、空陸軍の「空輸能力増大」と「ドル防衛政策」によって、米軍常時駐留から有事駐留に転換されつつあるので、米本土━ハワイ━沖縄━韓国間のビッグ・リフト如何によっては、駐留兵力削減の可能性が出ています。

 

アメリカ上院外交委員会のフランク・チャーチ民主党議員などは、ビッグ・リフト作戦の可能性や、アメリカの財政問題などから、韓国からアメリカ軍の「撤退」ないし「縮小」を強く主張していました。(⑫)

 

ハワイの太平洋総司令部から独立させて、韓国司令部の創設も検討されつつあります。主に韓国の海軍(当時)は、フィリピン・タイと合わせて、米第七艦隊の管理下にありますが、目下のところに中国周辺に駐留しているアメリカ軍ならびに各国軍の総数については、すでに述べた通りです。

 

いわば中国の周辺国は、すべて『米国の駒』というわけですね。

 

いずれにしても、ケネディ暗殺以後、ジョンソン政権になっても、アジア政策と太平洋戦略の基本については、原則的に変化はないどころか、半世紀以上過ぎた「今現在」も、それは進行中です。

 

すなわち、軍事戦略では中国を主要敵国とし、韓国、台湾、南ベトナム(当時)など、アジア大陸の周辺━米国から見れば「前方地域」に、陸空軍兵力を展開、その「後衛」にある沖縄や、ハワイに、これを支援する局地的な機動攻撃兵力、米本土に戦略予備軍をそれぞれ配置し、敵側からの侵略を「前方地域(韓・台・南越)」で積極的に抑制する、いわゆる前方戦略を採用しました。

 

さらに、全面核攻撃には核報復で対応し、通常軍備による局地戦には通常軍備で、ゲリラには対ゲリラで柔軟に反応する構えです。そして、これを実施するための拠点日本が据えられました。そうした関係から、日韓国交正常化がアメリカにより希望され、促進されているのが現状です。

 

駐日米大使(エマソン代理大使)は東京で日本外務省に、ラスク国務長官はワシントンで、日韓両国大使に、それぞれ対韓経済テコ入れを持続的に申入れしつつあり、ハワイの療養先から7月3日帰任したライシャワー大使は記者会見にて、「原子力潜水艦(ポラリス)の(日本)寄港問題はまだ過ぎ去った問題ではなく、日本政府との間でなお技術的問題を研究中だ」と語りました。(⑭)

 

【註釈】

 

⑩朝鮮半島は日本海と東支郡海に対して、隠蔽の機能を果たしているから、南朝鮮(韓国)だけでもおさえておけば、北朝鮮からだけでは、対馬海峡、東支那海を通る交通線を制することはできない。

 

⑪米第一師団ならびに歩兵師団は、ラクロス、オネスト・ジョン、280mm原子砲(アトミック・キャノン)、など核弾頭と普通弾頭のどちらでも着装可能な火力によって支援されており、さらに歩兵三人で運ぶことが可能であるという超小型原爆デイビー・クロケット(120mm~150mm無反動砲で超小型の核弾頭を撃ち出すもの)もすでに各師団に持ち込まれている。

 

ラクロス ミサイル(MGM-18)

https://ja.wikipedia.org/wiki/MGM-18_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

 

オネスト・ジョン ロケット弾(MGR-1)

https://ja.wikipedia.org/wiki/MGR-1_(%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88)

 

280mm原子砲(アトミック・キャノン)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%A0%B2

 

The Atomic Cannon Devastation! Full HD!!!  

https://www.youtube.com/watch?v=5N0Balj2tLw

 

デイビー・クロケット(携帯用戦術核兵器)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88_(%E6%88%A6%E8%A1%93%E6%A0%B8%E5%85%B5%E5%99%A8)

 

⑫Nation,1964,4,6

 

⑬New York Times,1963,11,3

 

⑭1964年7月4日各紙。

 

(『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房 一三〇~一三一頁より)

 

 

<参考資料>

 

・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第三巻 勁草書房 

 

・ウィキペディア(画像資料)

 

・Youtube動画 『The Atomic Cannon Devastation! Full HD!!! 』

 

 

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