シャーロッツビルの事件は凄惨なものでした。


事の発端は、シャーロッツビル市の議会が、南北戦争の南軍側の将軍だったリー将軍の銅像を撤去するという決定をしたために、これに反発した右翼たちが、デモの許可を取り、撤去反対デモを行いました


どうしてそうなるかというと、アメリカは、まだ『南北戦争の分裂』を、引きずっているからです。


アメリカが、今でも、レッドステイトブルーステイトに分かれていると言われているのも、その名残りです。



歴史というのは、常に「勝った側」が書くものであって、そして、南北戦争は、絶対的に北軍側が正義だったのだというふうに、言われていますが、裏では、いろいろあったということです。


それは人間という主体が行うことですから、当然さまざまな「事実」が混在していたわけです。


もちろん、奴隷制は悪ですが、北軍側が、潔癖だったのかというと、そうではなかったと、南軍側の子孫たちは、聞かされているし、思っています。


つまり、そういう背景があったのです。



この許可デモに対し、未許可のアンチデモ者たちが詰めかけました。


この人たちは、許可デモの参加者たちに対し、かなりの暴力を振るったというふうに、許可デモ側の人たちは、言っています。


大メディアで放送されたものは、圧倒的に、許可デモ側が暴力を振るっていたとか、車が突っ込んだ場面だけだそうです。


許可デモ側の人たちは、警察が、アンチデモ側に便宜を図っていたように見えたとか、自分たちを守ってくれなかったと、言っています。


また、車を突っ込ませた犯人は、アンチデモ側の暴力に腹を立てて、仕返しのために犯行に及んだと言っている人もいます。


実際には、どうだったのかは、詳しい事実は錯綜していて、長い間の分析と注視が必要です。



そうしたことを差し置いて、米メディアのNPRは、この批判の矛先を真っ先にトランプ大統領へと向け、今回の事件(シャーロッツビル)について、トランプ氏の発言だったり、これは日本の大手メディアでも報道されていた事実ですが、昨日の朝日新聞でも、第一面で大きくトランプ氏の「差別容認」発言を厳しく批判していて、理由は「アンチデモと車で突っ込んだ人間」の「両方が悪い」という、所謂「アイデンティティ・ポリティクス」に乗っかった、「差別・反差別」に対する『どっちもどっち論』を展開した形となりました。


しかしながら、今回の事件、殊にアメリカの差別事情を、日本の「差別事情」同列に並べて語ってよいものなのかと、私は一抹の疑問を覚えます。


というのも、冒頭でお話したように、南北戦争を筆頭に、アメリカの歴史民族や政治主体の混淆によって、極めて複雑怪奇な「アイデンティティの層」をなしていて日本のような「アジア蔑視、自国&白人尊崇」という構図には、とうていなりえないのです。



このような「複雑性」を念頭においた上で、今回のシャーロッツビル事件を捉えると、トランプ氏が大統領になる上で用いた『アメリカファースト』にせよ、貧しい労働者階級の白人層を助けるためのスローガンであり、それをアメリカのリベラル左翼の人たちは強引に「白人至上主義者」「ナチス」と置き換えましたが、事実そのような人がいたとしても、すべてを「悪である」と断罪するのは、甚だ強引すぎる結論でしょう。


もちろん、トランプ氏が『アメリカファースト』という言葉をどういうつまりで使ったのか、ちゃんと有権者たちは理解していました。彼は「広汎なアメリカ一般大衆の利益」こそが、ほかの国や、グローバル企業の狭い利益よりも、先んじるべきだと言ったのです。


それを、NPRをはじめとする米の大メディアや、日本のマスコミ然り、曲解して「アメリカの白人が優越する」と置き換えたことでした。



彼らの言葉(アメリカ大手メディア)を変えれば、『アメリカファースト』というのは、選挙人投票で白人至上主義者を有利にして、北東やウェストコートの、人口密集地の票を抑えてでも、彼らの都合の良いリーダーを選出するためのコードだったというわけです。


だから、それから演繹して「トランプは白人至上主義者が立てた候補者」であって、それに正当性はないという論理が組みあがったわけです。



次回は、本事件におけるアメリカ政治の実態と、平和主義者でリベラルと称されるオバマ前大統領の「本性」について述べたいと思います。



<参考資料・ご見識>


・Michikoさんのブログ『Cluttered talk blab blab blab』「"Exceptionalism" and "America first" 」記事


・拙ブログ『‐トランプ氏は傍若無人な大統領なのか 総括‐』(https://ameblo.jp/epikutetosu/entry-12301910829.html#c12949933464 )記事のMichikoさんのコメントより