「狂言綺語・流転」 | 愛と幻想の薬物

愛と幻想の薬物

病んだ精神を癒やすために、体験を基にし、エッセンスとしてのホラを加えながら『さいはての地』での記憶を辿ります。
妄想、現実、ありがちな経験をもとにした物語です。

―留置場にて―

 

 

とても不思議に感じられたことがあった。

 

今朝起床して布団を収納しに房を出て戻った後、

房内の厠(かわや)で小用を足していたら

 

ふと

『新しくもう一度誕生して違う生命となって輪廻の流転に戻っても、そうなっても、別に良いかもしれないな』と思った。

 

 

悟道を知ってから、そんな事を考えることは無く、そんな思いを持つ時が来るなど予想外であった。

これを思ったその時、ほんの一コマ、一瞬の閃きに

 

『小学生くらいの少年として、畦道(あぜみち)を早足で歩いているようで、地面を蹴りながら進む、自分の足先(靴も靴下も履いていた)を見ている映像』が、生々しく頭に浮かんだ。

 

同時にその少年らしき者の気持ち、また生きている感触や、その少年の心情が暖かいものとして感じられ、伝わってきた。

 

幻覚や不可思議な出来事というのではなくて、もっと単純な、ふっと湧いたイメージなのだけど、

なにより

「もう一度、生まれ変わってもかまわない」

と思ったことが不思議で、自分でも「何があったのだろうか?」と疑問に思うくらい衝撃だった。

 

 

 

…二日前に「歎異抄(たんにしょう)」、前日に「オーデュポンの祈り:伊坂幸太郎、著」を読んだことの影響はあるかも、と後に思い考ええたのだが、

その理由は忘れてしまった。