感情と感覚が覚えている | 愛と幻想の薬物

愛と幻想の薬物

病んだ精神を癒やすために、体験を基にし、エッセンスとしてのホラを加えながら『さいはての地』での記憶を辿ります。
妄想、現実、ありがちな経験をもとにした物語です。


昔。


俺は芸術と生きていた。

沢山の不平不満を口にしながら
自分のなかに育まれる感情や感覚を、
その時々の手段で形として生み出して表現した。

その殆どは、
いま振り返れば生ゴミみたいなもので、
欲望しか伴わないマスターベーションで吐き出される精子みたいなものだ。

ただその時々、
幾つかは『まとも』とは言えない歪(いびつ)ながらも、
一つの体を備えた有り様で

人の目や耳に晒すことで
僅かながらも
生きていた。


ある日俺は生きることに負けた。

それから俺の中の芸術は
たぶん死んだ。



あの日からの黄泉がえりを試みようと、もがくことがあるけれど。


命を亡くした僕は
『俺』にはなれない。


それでもしぶとく諦めきれない。

忘れえぬ感情や感覚の躍動が、
押し潰されたままの僕の中から
這い出ようと
足掻く。