昔。
俺は芸術と生きていた。
沢山の不平不満を口にしながら
自分のなかに育まれる感情や感覚を、
その時々の手段で形として生み出して表現した。
その殆どは、
いま振り返れば生ゴミみたいなもので、
欲望しか伴わないマスターベーションで吐き出される精子みたいなものだ。
ただその時々、
幾つかは『まとも』とは言えない歪(いびつ)ながらも、
一つの体を備えた有り様で
人の目や耳に晒すことで
僅かながらも
生きていた。
ある日俺は生きることに負けた。
それから俺の中の芸術は
たぶん死んだ。
あの日からの黄泉がえりを試みようと、もがくことがあるけれど。
命を亡くした僕は
『俺』にはなれない。
それでもしぶとく諦めきれない。
忘れえぬ感情や感覚の躍動が、
押し潰されたままの僕の中から
這い出ようと
足掻く。