Half-A-Room -148ページ目

電車

バスや、電車や、タクシーや。

乗り物に乗るといつでも、

降りるのがおっくう。


最寄りの駅を素通りして、

このままぼんやりしながら、いつまでも乗っていたい。

永遠に、つめたい夜に吸い込まれて。


たぶんそれは、私には、帰る場所があるから。

だから私は逃げたくなる。


私を追いかけて来ないで。

どこまでも、どこまでも、

走っても、走っても逃げ切れない。


電車を降りて、真っ暗な道を、まっすぐに家路に向かう。

目の端にとらえる、オレンジの明かり。

私はほっと胸をなでおろす。

きょうも無事に帰って来られた。

きょうもこの家は変わらずにここにある。







駅の名前がアナウンスされる。

降りなきゃ。


だけどからだが動かない。


とびらが開く。

何人かが降り、何人かが乗り込んでくる。

みんなうつろな顔をしている。

無遠慮に、きっぱりと、扉が閉まる。


ああ、ついに、閉まった。


いつかこうなる日が来ると思っていた。

だけど、それが、今日だとは。



あたしにはもう、帰る家は、ないのだ