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初詣

まだ初詣に行っていなかった。


ということを思い出し、市比賣(いちひめ)神社という神社にお参りに行くことにした。

市比賣神社は何年も前から行きたいと思って目をつけていた神社だ。

なぜかと言うと、名前が可愛いからである。


父にどこへ行くのかと聞かれたので、「初詣に」と答えると、「何ゆってんのもう28日やで」と言われた。

いやだって今年まだ行ってなかったし、初めて行くんだから初詣でしょ。

「何でそんな突発的に思いついたように行くんだ」と言われたが、何でって言われても。

お父さん私そういうことのできる人になりたいのよ。

こう、思いついたらすぐ行動する人になりたいの。

急においしい牛乳飲みたくなったから北海道行くとかさ、そーゆーことに労力を惜しまない人に憧れてるの。

理由とかさ価値とか求めちゃいけないのよお父さん。

だからこれはその第一歩ですよ今思いついたから今行くのっ!


と心の中で反論しておいた。


なかなか場所がわからず右往左往する。

前に通ったことがあり、あーここだったのか覚えておこうと思っていた筈なのにおかしい。

自慢ではないが私は地理に弱い。

前にどっちが北か南かわからないと言ったら笑われたことがあるが、私からすればそんなことわかる方が不思議である。

地図の読めない女、かも知れない。

あの本は読んでいないけれども、地図が読めないくらい、話の聞けない男よりは随分ましだと思う。

いやでも私は地図は一応読める(はず)。

地図を見れば大抵目的地には辿り着ける(はず)。

ただ「この通りをこう行けばあの道に出る」とかそういうことが覚えられない。

京都の道路はかなり分かり易いはずなのに、何度通ってもなかなか頭の中に地図が出来上がってくれないのだ。


辺りをうろうろうろうろして、やっと見つけた。

外観は想像していたのとかなり違っていた。

勝手に、広くて緑の多い神社をイメージしていたのだが、小ぢんまりとしていて、小ぎれいな、最近作られたような何となく現代的な感じ。

何だか神社っぽくない。


入口付近で「京都十六社朱印めぐり」のポスターを見ていたら、急に電気が暗くなった。

気のせいかなと思っていたら、何と鉄格子(のようなもの)が降りてきて門が閉められようとしている。

慌てて門に近づくと、神社の方が鉄格子越しに「何か御用事ですか」と訊ねてくる。

鉄格子は既に彼の体の四分の三くらいまで降りてきている。

「もう閉めはるんですか?」

「そうなんですよ、6時で閉まることになってるんで」

ええ~!!がびーん。聞いてないよ~!

「あの~私、お参りに来たんですけど~、場所がわからなくて迷ってしまってぇ~」

とか何とかモゴモゴ言いながらねばっていたら渋々開けてくれた。

いやどうもすいません。


いちばん奥に入ってお参りをする。

五円玉があればお賽銭に使おうと思ったがなかったので、代わりにこの間絵の教室で鉛筆を買った時、先生にお釣りにもらったぴかぴかの十円玉を入れる。

先生は「はい、きれいな十円です」とか「平成十七年の十円ですよ」とかいちいち恩着せがましくコメントをつけながら、何枚もぴかぴかのをくれた。

ここでこれを使わなければ一体どこで使うというのだ。

綱を揺らすと、小さな鐘がカラコロ、と鈍い音を立てる。

何回礼をして何回手を叩くのか、記憶があやしかったので、一回だけお辞儀をする。

手と手のしわとしわを合わせて、しあわせ。

熱心にいくつもお願いをする。

たくさんお願いしすぎたような気がする。

十円では無理があっただろうか。


手前の方にもう一箇所お参りをするところがあったので、もう一度お参りする。

ここでも一枚、ぴかぴかの十円玉を入れる。

ここの鐘は大きくて、金属の騒々しい音が響く。思いっきりガランゴロン鳴らす。

ここには二礼、二拍手、一礼と書いてあった。そうかそうだった。

神妙に、二礼、二拍手、一礼。

一回目の拍手が弱かったのでもう一度やり直す。

さっきお願いしすぎたので、今度は何も言わずに手を合わせる。


名残惜しく、せっかく来たのでと思い、迷惑も顧みず絵馬を読んだりしてだらだらしていたら「もういいですかー」と神社の方。

そうですよね早く帰りたいですよね、すいませんホント。


ふう。今年はどんな年になるのでしょうか。