Half-A-Room -134ページ目

異文化コミュニケーション

「あ、きんにが出てる。」

テレビを見ていた時、おばあちゃんが不意に言った。

「きんに?って誰?」

私は訊ねた。

「ほら、きんに。」

おばあちゃんが指差した画面には、なかやまきんに君が映っていた。


おばあちゃんはスマップが好きだ。

月曜夜10時、「SMAP×SMAP」の時間になると、彼女は言う。

「あ、スマッシュ見なきゃ。」


おばあちゃんは韓国人俳優のクォン・サンウに夢中だ。

彼の出演したテレビドラマや映画のDVDを買い集めている。

ばあちゃんは彼のことを

「サンウ」

と呼ぶ。

うん、これはまあ、正しい。



なかやまきんに君の「君」は名前の一部だと思うけれども、おばあちゃんは彼は「なかやまきんに」という名で、皆が呼ぶ時にそれに「君」をつけて「きんに君」と呼んでいるのだと思っているのだろうか。

南海キャンディーズの山ちゃんとしずちゃんの「ちゃん」も、もはや名前の一部なのだろう。

しずちゃんの名字は「山崎」なのだからしずちゃんも「山ちゃん」なのではないか、と私は常々思っているのだが、それは触れてはいけないことだろうか。


私はなかやまきんに君のことを「きんに」と呼ぶ人をおばあちゃんしか知らない。

というか、家庭外できんに君についての話題が出たことすら、今まで一度でもあっただろうか、いや、ない(反語)。

この際だからきんに君について少し言及してみる。

私はきんに君のことはどちらかと言えば、好きである。

我が家では私が小学生の頃から週末の昼にはテレビで必ず吉本新喜劇がかけられていて、私はその環境を少し憂えながらも抗えず、新喜劇のギャグを真似しながら大きくなった。

そのため新喜劇に出ている芸人さんたちのことは皆他人とは思えず、つい応援してしまう。

だからきんに君にも活躍してほしい。


おばあちゃんはクォン・サンウのことを、「サンウが、サンウが」とまるで恋人の自慢でもするように嬉しそうに話す。

彼女に勧められてサンウ主演の「マルチュク青春通り」という映画を観たが、映画もサンウも、正直私にはその魅力を量りかねた。


家庭内にも異文化コミュニケーションは存在している。

駅前留学せずとも、訓練の場は半径1メートル圏内に用意されているのだ。