好き好キッシュ
久しぶりに料理をする。
一人で住んでいた頃よく作った、グラタン皿で作るパイ生地なしのキッシュ。
家族に何かちゃんと作るのはたぶん、一年ぶりくらい。
いつも作るのが面倒で、料理らしい料理はほとんどしないのだけど、お昼にサッポロ一番塩ラーメンのためにキャベツを切っていたら急に私の両手がうずき出し、料理欲が沸々と湧き上がってきた。
作ろうと思い立つまでに時間がかかるのだけれど料理は嫌いではなく、やり始めると結構楽しい。
切るのが楽しい。
炒めるのが楽しい。
ルンルンルン。
そう言えば一時期料理にはまっていたことがあった。
その日の夕飯の献立を考えることや材料の買い出しに一日のエネルギーの大半を注いでいた。
そしてそれまで絶対になれないと思っていた主婦になれるかも、などとほざいていた。
今考えたらほんものの主婦の人たちに失礼な話である。
一年365日、毎日家族のために食事を作ることが義務付けられているなんて、考えただけで息苦しい。
すごいなお母さん。
トン、トン、トン。
玉ねぎを切る。
しいたけを切る。
ハムを切る。
ふと「ECCENTRICS」という漫画のモノローグが頭をよぎる。
「台所からコトコトと包丁の音がする
私を育てるために 母が
今日もなにかを
殺しているのだ」
トン、トン、トン。
卵を割る。
牛乳を加えて、かき混ぜる。
きょうも、食べるために。
生きるために。
チーズをのせて、オーブントースターでこんがり焼き上げる。
出来上がりは及第点。ちょっと水っぽいけど。
まあ材料からいって、それほど不味くはなりようがないのだが。
「これピザや」と指摘して後無言で食べている弟に無理矢理「おいしい」と言わせて満足する。
ほんとうに偶にしか作らないので、家族は皆私が作ったことに驚きその後、聞かなくてもやたらと褒めてくれる。
一年ほど前にカレーだったかビーフシチューだったかを作った時も、彼らは顎が外れる位に口を開けて驚いていた。
弟など私が一切何も作れないと思っていたらしく、「すごい」とまで言った。
市販のルー使いよんやからこんなもん誰でも作れるわい!ガシャーン!(ちゃぶ台をひっくり返す)
彼の言葉に逆にプライドを傷付けられたような気もするが、料理に関して傷付くほどのプライドもなく、単にすげーだろとえばってみせていたような気もする。
そういや二年ほど前、何を血迷ったのか「男性を餌付け作戦だ」などとのたまい、煮物など作ってみたりしていたこともあるな。
遥か昔の話である。
料理はたまにするに限る。
