恋慕
4月×日
京都は雨、
これでは、やっと咲いた桜が散ってしまうではないか。
私が桜を好きになったのはここ数年で、それまで然程興味は無かった。
けれど、
いちど桜を恋うことを憶えてしまえば、
まるで熱に浮かされたように
その魅力の虜になる。
まだ蕾も膨らむ以前から焦がれつづけ
一旦 咲き始めれば、
舞い散る花びらの一枚一枚をさえ 惜しむ。
来週まで咲いているだろうか
日曜のお花見までに、散りやしないだろうか
はらはらどきどき、
どきどきはらはら
こうしている間にも
はらりはらり、
はらりはらはら
こんなにやきもきするくらいなら
桜なんて見なくたっていい。
なんて思ったりもする。
あなたのことなんかもう、しらないわ。
気がついたら、私はあなたのことばっかり
考えていたくなんてないの。
他にだっていくらでも、楽しい事だって考えることだってあるのだし
あなたの一挙手一投足に一喜一憂して、
翻弄されて私なんか私なんかなんかばかみたい
どうして私だけが、この身を
焦がさねばならないの?
あああなたさえ、いなければ
あなたにさえ 出会わなければ
そんなのは知らずにすんだ
こんな気持ちはしらなかった
しらなくたってよかったの
しらなくたって いつまでも、
いつまでも ひとりであそんでいられたのに
ああどうか、きみよ、
次の金曜日まで
あの人に逢える日までは、咲いていておくれ。
嗚呼、どうか、
再来週の水曜日、
あの娘に逢える日までは 咲いていておくれ。
ああ、どうか、来年の今頃
まだ、顔もしらない誰かに出会うころまで
どうか散るのをこらえておくれ、
どうか、どうか
10年後の今日
ふたたび巡り会うまでは
どうかその身を散らさないで
永遠に、咲きつづけて。