母が死んだ日のことの続き。
4. 搬送先が決まらない?
特養駐車場の救急車内で母の搬送先を見つけるため、救急隊員が連絡を各所に入れている状態で、子どものドラムレッスンが始まりました。
搬送先が決まり次第、連絡をもらえるはず…
全神経を携帯電話がポケットに入った臀部に集中して、レッスンを見学していましたが、45分のレッスン時間が呆気なく経過。
「え?搬入先決まらないままなの?」
先生やスタッフの方との話を早めに切り上げ、外に出ると、特養から電話がかかってきました。
「お母様は++病院に搬送されました。」
「わかりました、場所を調べて向かおうと思いますが、場合によっては弟に頼みます。でも、私も向かうようにはするので、何か重大なことなどがあれば連絡ください。」
「わかりました。」
もうすぐ夕飯時。一旦病院に行ったら、なかなかご飯を食べさせることができないから子どもに何かを食べさせてから出ないといけない。こういう時くらい、弟に頼んでも良いでしょう。不穏無空気を感じ取ってか、子どもの機嫌が悪くなってきています。
弟にはメールをし、次にかかってきたLMNの遠藤さんにも弟に連絡をするようお願いしました。
「よし、ドーナッツを食べに行こう」
なにはともかく、子どもを蔑ろにはできません。
5. 不思議なモード
ドーナッツなら、簡単に食べられるし、夜遅くなった時のために持ち帰りも頼みました。
滅多に食べられないドーナッツを夢中で食べる子どもの横で、病院の場所を検索。自転車なら20分ほどの距離。でも、自転車のバッテリーはあと14%。携帯のバッテリーはもっと悪い10%を切りました。
弟に現状を知らせるためメールをすると…
心停止?
え?
LMNには弟に行かせるよう連絡を取ったけれど、特養には基本私連絡と伝えたはずなのに。なんで?
なんで私にはその連絡がないの?
と、携帯を見ると、なぜか携帯電話が「おやすみモード」になっていました。
緊急連絡先の、特養と家族からの連絡しか受け付けない状態になっていたのです。普段午後9時から午前6時まで、おやすみモードに自動的に設定されるようになっていますが、日中になるなんて、こんなことは初めてです。
おやすみモードを切ると。特養や弟からの電話の合間に、19件もの携帯電話からの不在着信が…
母に付き添っていた特養のスタッフの携帯電話なのかもしれません。
「👶さん、ドーナッツ食べたら、おばあちゃんが運ばれた病院に一緒に来てほしいんだ。おばあちゃんの具合がとても悪いらしくて、もしかしたらもう起きないかもしれないから、お母さん会っておきたいんだ。良い?」
「死んじゃうの?」
「…そうかもしれない。」
「いいよ。病院行く。」
ドーナッツを急いで食べてくれようとします。が、私の心は不思議と静かで、もう全てが済んでしまったんだなと感じていました。
「いいんだよ。ゆっくりで。ゆっくり食べて」
それから隣の席のサラリーマンに向かって声をかけました。
「すみません、すみません。あの…」
充電器を持っていたら借りたいと思ったのですが、サラリーマンの方はイヤホンをしていて何度呼んでも気がつかない様子。
仕方ない。今日はそういう日なんだ。フローに任せて、行けるように行こう。そう思って、私も1つドーナッツを手に取りました。
その日、仕事を午前中にした後、どうも気分が乗らなくて、実家の片付けをしてアルバムを見ていました。私の生まれたばかりの頃の母を見て、母の人生について考えながら、写真の写真を撮っていました。
心停止、したのか…そうか…
とても落ち着いて、ドーナッツのグレーズに歯を立てて口に広がる甘さを感じていました。
続きます。
が、ここからホラーに転調します。



