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鬼は外!#5
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目の前には鬼……じゃなくて、鬼の面をした真山先生。
仁王立ちして、こちらを見ている姿に、私は手の中にある個装された豆たちを握りしめた。

投げろ、と言われても、そんなの出来ない。
普通に考えれば、無理だろう。

思わずジリジリと少しずつ後退すると、先生も徐々に私に近付いてきた。
その距離は決して近くはない、けど。


「逃げるのか」

「え、と……これはその、反射的に」

「…………俺から逃げられると?」

「、あ」


ガタンと脚が机に当たって、大きな音をたてた。
私を見つめる先生の瞳から目を逸らせなくて、ただ先生を見つめて、その場で固まった。
そんな私を先生は小さく笑うと、一気に距離を縮めてきた。


「あ、……な、何を」

「噛まれると、邪気を払うというだろう」

「それは、ししまいじゃ……」

「似たようなものだ。少し黙れ」


肩を抱き寄せられ、顎をつかまれ、私は一切の身動きを許されなかった。
甘く苦い一時が訪れ、放心状態な私。


「これで男共も払えればいいんだがな」

「え?」

「…………俺だけを見ていろ」


耳元で囁かれる言葉に、先生のスーツをぎゅっと掴んで、胸元へ顔を寄せた。
小さく頷くと、肩に回った先生の腕が更に私を抱き締める。


そんな一時を一気に終わらせたのは、クラスメイトの声だった。


「鬼は外!鬼は外!!」


ガラリと教室の扉を開けたクラスメイト達の呆然とした顔は忘れられないと思う。


「…………△△、あとで職員室に来い」

「はい……」


フッと浮かべた笑みに胸がドキドキと高鳴った。
真山先生が教室から出ていった後、クラスメイト達に「呼び出し大丈夫か」と心配されたけど、私は笑顔を浮かべた。





Fin.





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鬼は外!#4
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午後の授業が終わり、終礼が終わったところで、クラス委員が全員に小袋に入った豆を配り始めた。一人三個。早速開けてボリボリ食べている男子やら、誰に投げるか話し合ってる女子やら様々だ。


「今年の鬼は、ご厚意で先生方になってもらうことになりました」


朝に斗真が言ってたのが当たった!とびっくりしている間に、担任の先生がお面を着けていた。


「鬼は外、福は内!」


誰からかそう声が上がり、豆が投げ付けられ、豆まきが始まった。
先生ということで、各々が狙いを定めて豆を投げ付けに行くみたいだ。


(先生も、大変だなぁ……)


手のひらに置いた豆を見下ろしてると、急に辺りが静かになった。慌てて顔を上げると、教室には誰一人いなくて、出遅れてしまったことに気付いた。


「え、置いていかれた?」


友達も既に行ってしまったみたいだ。私は椅子を鳴らして立ち上がり、教室から勢いよく出て、何かにぶつかった。
鼻の頭を打って、痛みに目を瞑ると、聞き覚えのある声が、私の耳に届いた。


「何をしている」

「ま、真山先生……」


鼻を押さえて視線を上げると、赤い鬼のお面を着けた先生が立っていた。
お面がミスマッチすぎて、私は堪えきれなくてプッと吹き出したが、鋭く睨まれ、咳払いで何とか誤魔化す。


「真山先生はどうしてここに?」

「生徒を探してな」

「さ、探す……?」


鬼なのに?探す?
理解できない私に、真山先生はフンと鼻で笑っていった。


「俺に投げてみろ、と言ったんだ」

「…………」

「そうしたら、散々に逃げて行ったというわけだ」

「……そ、それは……」


投げたく、ないかも。
後で怖いって斗真が言ってた意味も何となく分かるし。


「ちょうどいい」

「え、」

「投げろ」

「ええ!?」


先生の命令に、私は冷や汗をかくのを感じた。










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鬼は外!#3
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「○○、今日もお弁当?」

「ううん、今日は学食。早く行こう」


友達と連れ立って、食堂へ向かう。同じように食堂に向かう生徒達に混じって、白衣の後ろ姿を発見した。


「あれ、若桜先生じゃない?」

「ほんとだ。先生もお昼かな」


私達の声が聞こえたのか、先生が後ろを振り返った。
隣の友達が小さく悲鳴をあげる。実は友達は若桜先生の熱狂的なファン、だったりする。
振り返った先生が、生徒達の間を縫ってこちらへやって来る。


「やぁ、君達もお昼?」

「はい。あ、すみません…聞こえましたよね?」

「まぁ、それなりにね。確か君は」


私を見て、若桜先生が首を傾げて考え込む。
眼鏡の奥の瞳が鋭くて、何を言われるのか冷や汗が出た。


「確か、真山先生にパシリにされてる子だったね」

「え……」

「今日も何やらさせられていただろう?」

「あ、はい……」


真山先生…!と隣でギラギラと熱い視線を送ってくる友達は無視して、若桜先生を見上げた。


「…………まぁ、気を付けてね」

「え?」


ぱちんとウインクを投げて寄越した先生を穴があくほど見つめる。若桜先生、何か知ってるの?


「そろそろ行かないと、君達も。いっぱいになってしまうよ?」


ハッと気付いて、先生が指差す方向を見ると、ガヤガヤと騒がしい食堂がすでにごった返していた。
私は頭を下げると、若桜先生ー!なんて恥ずかしく叫んでる友達を引きずって、食堂へ急いだ。






……………………

ヤッバイ!節分終わっちゃったよ…
でも終わりまで行きます~
創作サークルには載せられないなあ。






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鬼は外!#2
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職員室に行くと、真山先生の机の上からプリントを取り上げた。ちゃんと付箋で50部と書かれている辺り、誰かに頼むつもりだったんだろう。

少し癖のある字だけど、先生らしい字。そっと付箋の文字をなぞって、職員室の端にあるコピー機に向かう。


「お、△△」


向井先生が先にコピー機を使っていた。その横に並んで立った。


「おはようございます」

「おはよう。コピーか?もしかして真山先生?」

「は、はい、何で分かったんですか?」

「机から取るのが見えた。随分嬉しそうだったな」

「え…、そ、そんなことない、ですっ」

「ははは。真山先生かっこいいもんな、うん」

「だ、だからっ」


からかうような視線で、向井先生は楽しそうに笑う。見透かされそうで、心臓がドクドクと大きく脈打った。


「向井、今日の授業は完璧なんだろうな?」


背中から声が聞こえてきて、私と向井先生は振り返った。
多分怒ってはいないと思うけど、険しい顔つきの真山先生が仁王立ちしていた。

何となく向井先生の方を見上げると、「大丈夫です」と普通に返事していた。


(向井先生は、真山先生怖くないのかな)


他の教育実習の先生は恐れをなして、あんまり近付かないって聞いたけど。

私は少し怖い時もあるから、ちょっとびくびくしてしまうんだけど。


「コピーは終わったか?」

「ま、まだです……」

「ごめん、俺が占領してたな。代わるよ」

「すみません、ありがとうございます」


ペコリと頭を下げると、プリントを引き上げた向井先生が、「頑張って」と声を掛けてくれた。それに微笑み返して、私はコピー機に向き直った。


「………………あの、見られてたらやりにくいです……」

「…………」


真山先生は何も言わずに、溜め息だけを吐いて、離れていった。
不思議に思ったけど、溜め息を吐かれるのは毎度のことだから、特に気にしないで、コピーを始めた。

順調にコピー機が動き出して、吐き出されるプリントをぼーっと眺めていると、突然エラー音が鳴り、コピー機が止まった。……紙詰まりだ。


「もー、最悪……」


屈んでコピーの外側を開けて、中を覗いた。詰まっている紙は見えたけど、引っ張ったら千切れそうな感じだ。

困ってしまって、どうしようか考えていると、隣にそっと誰かが同じように屈んできた。


「っ、先生……」

「紙詰まりか?」

「はい……」


肩が触れあった。先生が手を動かす度に、ふわりと先生の香りがして、顔が熱くなる。きっと真っ赤になってる。


「あ、ここで……っ」


詰まってる箇所を指差そうと手を伸ばしたら、手と手がぶつかった。慌てててを引っ込めると、一瞬先生の手が小さく動揺したように見えた。


「ここだな」


でも先生は普通で、普通に紙詰まりを直してくれ、再びコピー機が動き出した。


「赤いな。熱が上がったか?」

「っ、大丈夫ですっ」


反論するも、赤い顔を隠せなかったら意味はない。先生のせいで赤いのを、やっぱり気付かれていて、先生は意地悪に笑った。

そんな先生が好きだから、仕方ないんだけど。


「もっと精進しろ」


そう言った先生の瞳がすごく優しくて、しばらくぼーっとしてしまった。




真山先生、全くカードを持っていないので、全然どんな先生か知りませんが、勢いで書きます。
鬼畜教師だろ、なるようになる!

尚、真山先生を知り尽くしたら、書き直すぜのスタンスですので、苦情はご遠慮ください。


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鬼は外!
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2月の代表的なイベントと言えば、バレンタインデーだって、誰もが思うと思うけど、藤城にはもうひとつイベントが待っている。

節分。豆を撒いて鬼を払う行事だ。

言い出しっぺは誰かは知らない。何で学校で?なんて思ったのは、一年生の時だけで、今年は楽しみにしてたりする。


「おはよ、○○」

「あっ、おはよ、斗真」


登校途中で、幼馴染みの斗真に会った。そのまま二人で通学路を歩く。


「今日は豆まきだよね」

「ん?ああそうだったな」

「斗真は楽しみじゃないの?」

「子どもじゃねーだろ」

「それはそうだけど。あっ、今年は鬼誰かな?」


去年は生徒会が中心になって、文化部の有志が鬼役をしていた。一昨年は、逆に運動部の有志が鬼役をしたって聞いてる。

斗真は興味なさそうに私の話を聞いてるように見えたけど、突然あっ、と声を出した。


「え?何?」

「いや、もしかしたら鬼、先生かもな」

「え~?それはないんじゃない?」

「そうか?あり得るだろ」

「うーん……先生に豆を投げるなんて」

「だよな。向井とかなら投げやすそうだけどな、真山とか若桜とか後が大変だそ、きっと」

「…、そ、そうだよね…」

「?何?」

「な、何でもないよっ」


真山先生の名前が出てきて、一瞬ドキッとしてしまって、慌てて誤魔化す。変な奴、と斗真は別に気にしないで、目の前の校門を潜った。私も彼に続くと、背後から声を掛けられた。


「……朝から真山かよ」

「真山、先生だ。お前は2年の如月だな」

「…………」

「朝の挨拶は?」

「お、おはようございます……」

「よろしい。さっさと教室へ行け。△△、お前には用事がある」

「……は、はい…」


真山先生に睨み付けられて、私は縮こまった。そんな私を哀れみながら、斗真は先に校舎へ入っていった。

校門の近くで先生は挨拶活動なるものをしていたみたい。他にも生徒会の役員やらが校門に並んで、登校してくる生徒と挨拶を交わしている。

その人達から少し離れて、私と真山先生は立っていて、端から見れば何か注意されている生徒と鬼教師という図に見える、と思う。


「如月と登校しているのか?」

「たまたまそこで会っただけです」

「そうか。仲は良さそうだな」

「はい。幼馴染みなので……あの、先生、用事は…?」


てっきり何かを言われるか、命じられるかと思っていたけど、全くそんな素振りが見えないので、そう切り出した。

すると、先生は眉間にグッと皺を寄せて、私を睨み付けた。


「用事を言いつけられたいのか」

「え、だって……」

「分かった。職員室の俺の机にプリントが置いてある。それをコピーしておけ」

「え、」

「分かったな」


真山先生は私に背を向けて、挨拶活動へと戻っていった。


(な、何かしたかな……?)


首を傾げるも、理由は見つからなかった。



To be continued...