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会いたい、んだもん #3
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私は、川沿いにいた。

私の情けない主張に、先生は「すぐ行く」とだけ返事して電話を切り、それから20分経たない内に、また先生からの電話が鳴った。

ルームウェアにコートを羽織ったという出で立ちで、リビングから何事?と顔を覗かせたお母さんには、斗真に会ってくると嘘をついて、家を出た。

先生の車が家の前に横付けされていて、開いた助手席の窓から先生が乗れ、と短く命令した。

そして、車を走らせて、人気のない川沿いに来た。


「先生、」

「会いたいなら会いたいと言え」

「あ……その、」

「お前にはやはりまだ躾が必要だな」


運転席から腕が伸びてきて、不自然な体勢で抱き締められた。
額に当たる先生の服のボタンが少し痛かったけど、とても安心できて、目を閉じた。
ポンポンと撫でられる背中が温かくて、口では躾とか怖いことを言ってるのに、優しくて泣きたくなった。


「先生、私……先生ともっと電話したい」

「そうか」

「テレビ電話したい、」

「そうか」

「ショッピングに行きたい、遊園地に行きたい、アイス食べたり、映画見たり」


溢れだした我が儘に、先生は相槌をたくさん打ってくれ、先生としたいたくさんのことを吐き出した私は、少しだけすっきりした気分になった。


「今は無理でも、いつか出来ますよね?」

「そうだな、」


先生は私をそっと離すと、眼鏡の奥に意地悪な瞳を見せて言った。


「お前の『先生』がなくなったら、1つくらいは叶えてやろう」

「え…?」

「それまでは願望は願望のままだな」

「っ、頑張ります、先生!」


先生は私の額を小突くと、「まだまだだな」と楽しそうに笑ったのだった。





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おしまい。
真山先生、優しくなってしまったー。






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会いたい、んだもん #2
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メールに書いてあった、午後9時に待機する。
ベッドの上に正座して、目の前にスマフォを置いて。

今か今かと震えるのを待っていると、暗転していたスマフォが明るくなって、私は勢いよくそれに飛び付き、耳に当てた。


「もっ、もしもしっ」


返ってきたのは、意地悪そうな笑いだった。食い付き過ぎたかなと今更に恥ずかしくなって、頬が熱くなる。


『今何をしている?』

「お風呂に入って、寝る準備をした所です」

『そうか。意外に早いな、寝るのが』

「えと、先生と電話するので、出来るだけ用事は済ませておこうと思って」

『そうか』

「はい。先生はお仕事ですか?」

『ああ』

「そうですか……じゃあ早く切らないとですね!メールありがとうございます、嬉しかったです」

『ああ。お前の声を聞きたかったからな。大丈夫か、最近元気がないように見えるが』

「っ、はい、大丈夫です」


一瞬、本音が溢れそうになって、私は慌てた。
言いたいけど、言えない。
だって、どうしようもない。
気軽に会える訳でもない。


「大丈夫です。先生こそ無理しないでください。私、大丈夫ですから」

『それを信じる俺だと思うか?』


返事が出来なかった。
言葉が詰まって、喉の奥から出てきてくれない。


『秘密、だと言ったが、全てを我慢しろとは言っていない。お前の言い分を受け止めるくらい、なんてことはない』

「…………」

『言いたいことがあるんだろ?』

「…………ほんとは」


電話の向こうは静まり返っていて、私は少し怖くなった。一言一言話すだけで、留めていた涙が流れそうだったし、我が儘言って嫌われたらと思うと、それ以上は声に出せない。


『……◯◯』


いつもよりほんのり優しい先生の声がした。
私だけの先生。

頬がどんどんと濡れて、スマフォを持つ手が震える。


「会いたい、んです………先生」


絞り出した声は情けない程に小さくて、それに対しての先生の返事が、耳にやけに大きく響いた。





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次で最後ー


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会いたい、んだもん #1
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秘密の恋をしてる。
友達にも、親にも、内緒。
最初は、そんなこと全然気にならなかった。だって、まさかこの恋が実るなんて思っていなかったし、実際お付き合いできるってなったら、テンションが上がっちゃって、毎日が楽しかったから。

秘密の恋が辛い、って思ったのは。初めは、友達と恋ばなをしてた時。有名なテーマパークに行った、とか、ショッピングに行った、とか、長電話した、とか、幸せそうに話す友達を見て、羨ましくなった。

もちろん、私は心の底から「いいなぁ」を連発して、友達に彼氏作りなよって説得されて、そーだよねーなんて言って、軽くかわして、心の中で溜め息をついた。

それから、目につくカップルの仲良さそうなところとか見て、勝手に落ち込んで…、そんな日々を過ごしていた。


「あっ、◯◯。ケータイ光ってるよ」

「ありがとう」


友達と寄り道したファーストフード店で、ポテトをつまんでいると、友達がテーブルに置いてたスマフォを指差した。

新着情報を見ると、メールが1件。開いてみると、何と珍しい。彼からだった。


「ん?誰から?」

「あ、えと、お母さん!」

「ほんとにー?あやしい」

「ほんとだって!」


動揺した私を疑いの目で見てくる友達に、ほんとほんとと繰り返し、スマフォを鞄にしまった。


「ねぇねぇ、◯◯。紹介してあげるよ?」

「え?何を?」

「彼氏候補」

「うーん……」

「彼氏の友達にカッコいい人がいるんだって!」

「カッコいい人ね……」


カッコいいと聞いて、浮かぶのは彼しかいない。
私は首を振って、断った。ぶうぶう文句を言っている友達には、三本くらいポテトを口に突っ込んで黙らせて、「気が進まないから」ときっぱりと断ったのだった。




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真山先生と付き合ってる設定で。
やっぱいろいろあるよね。


スピンオフ。
笑って許せる方のみ、よろしくー


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恋した相手は空手部の彼女でした。#1






「もも、これ部費の追加承認出たから部長に渡してくれ」

「はいはーい。ちゃんと遊馬先輩って呼ぶって約束しただろー」

「あ・す・ま先輩、これ、よろしくお願いします」

「よろしい」


目の前でにこにこと、生徒会の判子が押された紙を受け取っているのは、遊馬百汰。学年はひとつ上だけど、隣に住んでいる幼馴染み兼親友だ。

生徒会役員の下っ端である俺は、遊馬先輩に、部費に関する書類を届けに来たんだが。遊馬先輩、なんて、呼べる訳ないだろ。


「なあ、も──」

「遊馬先輩」

「…………遊馬先輩、これっていつまで続けるん……ですか」

「とりあえず、今日1日。何なら放課後、また勝負受けてあげるけど?」

「ぐっ……望むところだ!ハンデつけろよ!」

「つけてください?」

「……つ、つけてください…」


悔しいが仕方がない。男と男の勝負だ。
悔しすぎて、全速力でももの前から去ると、「廊下を走るな!」と鬼の真山に捕まってしまった。




#2へ続く…かな。



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俺得だよ俺得。
遊馬先輩難しいね。



またまた見切り発車。
向井せんせです。

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春風に乗せて



実習先は、藤城学園。自由な校風で、生徒たちにいろいろな体験をさせてやりたいという理事長の意向で、学校行事が多めな高校だ。


「こんにちはー」


職員室を覗くと、授業中の先生が多いのか、ガランとしていた。
時計を見ると、授業終了まであと10分弱時間がある。出直そうかと踵を返そうとした所を呼び止められた。


「電話の実習生かな?」


振り返ると、実に穏和そうな先生がにこにことして、立っていた。
少し緊張しつつも、返事をすると、職員室の奥に案内される。


「真山先生──君の指導教諭だけど、もうすぐ授業終わるから、ここで待っていればいいよ」

「ありがとうございます」

「僕は一之瀬、君すごく熱意を持ってるんだね」

「え?」

「実習までまだ時間があるのに、見学だなんて」

「どんな生徒がいるのか気になってしまって。先生の手間を取らせる形になってしまって恐縮です」

「そう思うのなら、やめてもらおうか」


低い声が割って入ってきて、背筋が冷たくなった。眼鏡を掛けた長身の先生が仁王立ちしていた。
こんなにも仁王立ちが似合う教師はいないだろう。


「まぁまぁ真山先生。やる気がある実習生は貴重だよ」

「実力が伴っていればいいがな」

「期待に添えるよう頑張ります」

「ふん。今日は見学だろ?好きに見てもいい、帰るときにまた顔を出せ」

「はい。では、失礼します」


頭を下げて、職員室を出る。なかなか指導教諭は厳しそうで、これは相当な覚悟が必要だなと痛感する。

渡り廊下を越えて、中庭の方へ向かう。広い庭には大きな桜の木が聳えていた。


「凄いな……」


この桜の木はこの場所で、どれだけの生徒を見送り、迎えてきたのだろう。
さわさわと風に揺れる音が優しく耳に響き、思わず目を閉じた。

しばらくそこへ佇んでいると、とんとんと腕をつつかれた。目を開けると、藤城の制服を着た女生徒がこちらを覗き込んでいた。


「大丈夫ですか?」

「え?」

「気分でも悪いのかと思ったのですが…。保健室まで案内しましょうか?」

「いや、大丈夫。ありがとう」

「そうですか。よかった、失礼します!」


ホッと安心したように微笑んで、駆けていく。その背を追っていくと、廊下の向こうで待っていたのか、仲良さげに女生徒の頭を小突く男子生徒が見えた。


「青春だなぁ」


いい生徒がいるようで安心する。
教師になるための僅に与えられた実習期間を、大切に過ごそう。

そう思っていた決意が、より一層固くなったのを感じた。




Fin.




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結論:
真山先生と一之瀬先生が書きたかった。