またまた見切り発車。
向井せんせです。

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春風に乗せて



実習先は、藤城学園。自由な校風で、生徒たちにいろいろな体験をさせてやりたいという理事長の意向で、学校行事が多めな高校だ。


「こんにちはー」


職員室を覗くと、授業中の先生が多いのか、ガランとしていた。
時計を見ると、授業終了まであと10分弱時間がある。出直そうかと踵を返そうとした所を呼び止められた。


「電話の実習生かな?」


振り返ると、実に穏和そうな先生がにこにことして、立っていた。
少し緊張しつつも、返事をすると、職員室の奥に案内される。


「真山先生──君の指導教諭だけど、もうすぐ授業終わるから、ここで待っていればいいよ」

「ありがとうございます」

「僕は一之瀬、君すごく熱意を持ってるんだね」

「え?」

「実習までまだ時間があるのに、見学だなんて」

「どんな生徒がいるのか気になってしまって。先生の手間を取らせる形になってしまって恐縮です」

「そう思うのなら、やめてもらおうか」


低い声が割って入ってきて、背筋が冷たくなった。眼鏡を掛けた長身の先生が仁王立ちしていた。
こんなにも仁王立ちが似合う教師はいないだろう。


「まぁまぁ真山先生。やる気がある実習生は貴重だよ」

「実力が伴っていればいいがな」

「期待に添えるよう頑張ります」

「ふん。今日は見学だろ?好きに見てもいい、帰るときにまた顔を出せ」

「はい。では、失礼します」


頭を下げて、職員室を出る。なかなか指導教諭は厳しそうで、これは相当な覚悟が必要だなと痛感する。

渡り廊下を越えて、中庭の方へ向かう。広い庭には大きな桜の木が聳えていた。


「凄いな……」


この桜の木はこの場所で、どれだけの生徒を見送り、迎えてきたのだろう。
さわさわと風に揺れる音が優しく耳に響き、思わず目を閉じた。

しばらくそこへ佇んでいると、とんとんと腕をつつかれた。目を開けると、藤城の制服を着た女生徒がこちらを覗き込んでいた。


「大丈夫ですか?」

「え?」

「気分でも悪いのかと思ったのですが…。保健室まで案内しましょうか?」

「いや、大丈夫。ありがとう」

「そうですか。よかった、失礼します!」


ホッと安心したように微笑んで、駆けていく。その背を追っていくと、廊下の向こうで待っていたのか、仲良さげに女生徒の頭を小突く男子生徒が見えた。


「青春だなぁ」


いい生徒がいるようで安心する。
教師になるための僅に与えられた実習期間を、大切に過ごそう。

そう思っていた決意が、より一層固くなったのを感じた。




Fin.




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結論:
真山先生と一之瀬先生が書きたかった。