あらすじ
「行方不明の友人を探しています。」・・・から始まる衝撃展開の連続!これは、あなたを“ある場所”へと誘う、近畿の禁忌の物語。行方不明になったオカルト雑誌の編集者。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象の数々。彼はなぜ消息を絶ったのか?いまどこにいるのか?同僚の編集部員は、女性記者とともに行方を捜すうちに、恐るべき事実に気がつく。それらの謎は、“近畿地方のある場所”へとつながっていたのだった・・・。すべてが白日のもとに晒された時、衝撃の結末が待ち受ける。
製作国・地域:日本上映時間:103分
監督
白石晃士
脚本
大石哲也
白石晃士
原作
背筋
主題歌/挿入歌
椎名林檎
出演者
菅野美穂
赤楚衛二
つぶやき
なんとなく軽い気持ちで再生したはずなのに、見終わったあとしばらく部屋の空気が変わったように感じた作品がある。タイトルは近畿地方のある場所について。いわゆるホラー映画の枠には収まるのだけど、観ている最中よりも、観終わったあとにじわじわ効いてくるタイプの、厄介な一本だった。
物語は、オカルト雑誌の編集者の失踪という出来事を起点に、いくつもの奇妙な断片が提示されていく構成になっている。ひとつひとつは、どこかで聞いたことがありそうな話ばかりだ。子どもの失踪、よくわからない集団現象、ネットに上がった不可解な映像、誰かの体験談のような曖昧な語り。最初はそれらがバラバラに浮かんでいるだけで、正直なところ「これはどこに向かうんだろう」と少し戸惑う。しかし、不思議なことに、その断片を眺めているうちに、観客の側が勝手に“繋げよう”としてしまう。点と点の間に意味を見出そうとしてしまう。その感覚自体が、この映画の仕掛けなんだと思う。
この作品の怖さは、とにかく「説明しなさ」にある。普通のホラーなら、終盤に向かうにつれて種明かしがあったり、少なくとも何が起きていたのかの輪郭は見えてくる。でもこの映画は、あえてそれを拒む。むしろ、断片は最後まで断片のままで、決定的な答えは与えられない。ただ、その“欠けている感じ”が、妙に現実的で気味が悪い。現実の噂話や都市伝説だって、結局は断片の寄せ集めでしかないわけで、この映画はその不完全さをそのまま恐怖に変えている。
映像の作りもかなり印象的だった。劇中に登場する動画や記録映像は、いかにも作り物という感じが薄く、どこかで実際に見たことがあるような質感をしている。手ブレや解像度の粗さ、音の途切れ方まで含めて、妙にリアルで、「もしかして本当にありそう」と思わせる力が強い。とくに現代的だと感じたのは、それらの断片がネットやSNS的な感覚で提示されていくところで、観ているこちらもまるで“まとめサイトを延々と漁っている人”のような気分になってくる。気づけば、自分も作品の中の調査の一部に巻き込まれているような感覚になるのが面白い。
ただ、その分だけ好みははっきり分かれると思う。物語としての起承転結やカタルシスを求める人にとっては、かなり物足りないはずだし、「結局何だったのか」が曖昧なまま終わることにフラストレーションを感じる可能性は高い。実際、観終わったあとにすっきりするタイプの作品ではまったくない。でも逆に言えば、その“消化不良感”こそがこの映画の本質でもある。理解できないまま残る違和感や、説明されなかった部分を頭の中で反芻してしまう感じ。それが長く尾を引く。
個人的に強く残ったのは、「場所」というテーマだった。特定の地名やスポットそのものが恐怖の中心にあるというよりも、「誰かが語り、記録し、広めてしまった場所」がどう変質していくのか、という視点がずっと通底しているように思う。存在を知らなければただの場所だったのに、知ってしまったことで意味が付与され、近づきたくないものに変わってしまう。そのプロセスがとても現代的で、インターネット以降の恐怖のあり方をうまく掬い取っていると感じた。
派手な演出や分かりやすい恐怖を期待すると肩透かしを食らうかもしれない。でも、日常の延長線上にある不気味さや、「気づいてしまったこと」そのものの怖さをじわじわと染み込ませてくる点では、かなり独特な体験ができる作品だと思う。観終わったあと、ふと検索欄に何かを打ち込む手が止まる。そんな小さな変化を残していく映画だった。
