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浮遊家具

映画 大好き また 始めたいと思います。黄斑変性、SLE、双極性障害で仕事ができなくなり、一人、家の中にいる自分、置き場所のない浮遊して漂う家具よう。ただ、時間だけが進んだ、治癒は進み現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ

サシャは、ピアノを弾くことが好きなヴァンパイア。 彼女は吸血鬼一族のなかでただ一人、ある致命的な問題を抱えていた。 ——感受性が豊か過ぎて、人を殺すことができないのだ。 自ら人を手にかけることはせず、生きるために必要な血の確保を親に頼り続けようとするサシャ。両親は彼女の様子を見て、いとこの“血気盛ん”なドゥニーズと共同生活を送らせることを決める。血液の供給が断たれたサシャは、自分で獲物を狩るようドゥニーズに促されるが、どうしても殺すことができない。心が限界を迎えたとき、自殺願望を持つ孤独な青年ポールと出会う。どこにも居場所がないと感じている彼は、サシャへ自分の命を捧げようと申し出るが——。






製作国・地域:カナダ上映時間:91分


監督

アリアーヌ・ルイ・セーズ

脚本

アリアーヌ・ルイ・セーズ

クリスティーヌ・ドヨン

出演者

サラ・モンプチ

フェリックス・アントワーヌ・ベナール

スティーブ・ラプランテ

ソフィー・カデュー

ノエミ・オファレル






つぶやき

吸血鬼ものに見せかけて、実は「生きることと死ぬことの倫理」の物語だ。サシャは血を吸うために人を殺せない吸血鬼で、だからこそ自分の存在意義や倫理観に常に葛藤している。普通のヴァンパイア映画のような快楽的な暴力や恐怖はほとんどなく、かわりに“他者への共感”や“生きることへの迷い”がテーマの中心に据えられている。

ポールは自殺願望を持つ少年で、学校や家庭での孤独や抑圧から、生きることへの希望を失っている。サシャは彼の血を得るために契約を結ぶが、二人の関係は単なる血のやり取りでは終わらない。むしろ、互いの孤独や痛みを分かち合うことで、不思議な安心感やつながりを生む存在になる。この映画の面白さは、吸血鬼と人間の関係を「互いを支え合う共感」として描くところにある。

後半でサシャは、血を得ることと殺さない倫理の間でどう折り合いをつけるか模索する。ポールとの関係を通して、サシャは単なる生存以上の意味を見出し、ポールもまた絶望の中で小さな希望を見つける。ただし、映画は二人の関係に明確なハッピーエンドを与えるわけではない。救済も破滅も断定せず、二人がそれぞれの孤独を抱えながら、かろうじて支え合う余地を残す。その曖昧さこそが、この作品の核心だ。

映像もまた物語を際立たせている。ネオンに照らされた街、古びたボウリング場やバー、吸血鬼一家の屋敷――現実と非現実のはざまを感じさせる空間が、サシャとポールの内面を反映している。音楽も、血や死の暗さを強調するよりは、静かで繊細なリズムで二人の感情を描き、ダークだが優しさのある世界観をつくり上げる。

結局、この映画が伝えるのは、「生きることも死ぬことも絶対ではなく、互いの存在を感じ合うことこそが小さな救いになる」ということだ。奇抜なタイトルと吸血鬼の設定に隠れているけれど、描かれているのは現代の孤独や生きづらさ、そして他者との共感の可能性であり、その静かな切なさが観る者の胸に残る。