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浮遊家具

映画 大好き また 始めたいと思います。黄斑変性、SLE、双極性障害で仕事ができなくなり、一人、家の中にいる自分、置き場所のない浮遊して漂う家具のよう。ただ、時間だけが進んだ、治癒は進み現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ

何世代にも渡り人間とドラゴンが戦いを続けているバーク島で暮らすヒックは
ある日伝説のドラゴン、ナイト・フューリーと運命的な出会いを果たす。
トゥースと名付け、友情を育む中で、ドラゴンと共生する方法がないか模索していくが
ある古代の脅威が世界を危機に陥れ・・・






監督

ディーン・デュボア

脚本

ディーン・デュボア

原作

クレシッダ・コーウェル

出演者

メイソン・テムズ

ジェラルド・バトラー

ニコ・パーカー

ガブリエル・ハウエル

ジュリアン・デニソン

ブロンウィン・ジェームズ

ハリー・トレヴァルドウィン

ピーター・セラフィノウィッツ

ニック・フロスト






つぶやき

原作にあたるヒックとドラゴンが持っていた魅力は、弱さを抱えた主人公が「戦うこと」を肯定する社会の中で異質な価値観を持ち、その違和感がやがて世界そのものを変えていくという構造にあった。今回の実写版でも、その物語の骨格はほぼそのまま維持されている。舞台となるバーク島は、ドラゴンと人間が長年争い続けてきた閉じた共同体であり、そこに生きるヒックは、戦士としての資質を期待されながらも、それに応えられない存在として描かれる。この「適応できない者」の視点が物語の出発点になっている点は変わらないが、実写になることでその孤立感がより現実的に感じられるようになっている。

ヒックが出会うドラゴン、トゥースとの関係性も、本作の核となる部分だ。アニメ版ではどこかデフォルメされた愛嬌が前面に出ていたが、実写版では質感や動きに生物的なリアリティが強く加わっている。その結果、最初は恐怖と警戒から始まる関係が、徐々に信頼へと変化していく過程に説得力が生まれている。特に、言葉を介さずに距離を縮めていく描写は丁寧で、人間同士のドラマ以上に“通じ合う瞬間”の重みが強調されている印象を受けた。

本作で最も印象に残るのは、やはり飛行シーンの演出だ。空を飛ぶという体験が、単なる視覚的なスペクタクルではなく、身体的な感覚として観客に伝わってくる。高度による空気の変化や速度の加減、旋回時の遠心力といった要素が細かく積み重ねられていて、画面越しに“乗っている感覚”が明確に伝わる。これはアニメ版でも象徴的な要素だったが、実写では風景の実在感が加わることで、より具体的な体験へと変換されている。荒々しい海や切り立った崖、曇天の空気感といった自然環境が、ファンタジーの舞台でありながら妙に現実味を帯びているのも大きい。

一方で、物語構成に関しては、原作に忠実であるがゆえの限界も見えている。展開そのものはよく知られた流れを踏襲しているため、初見の驚きという意味ではやや弱い。また、実写化に伴って情報量が増えたにもかかわらず、キャラクター同士の関係性の掘り下げがそれに追いついていない部分もある。ヒックと父親ストイックとの対立や和解といった重要な要素も、感情の転換がやや急ぎ足に感じられる場面があり、ドラマとしての“溜め”はもう少し欲しかった。

それでも、この作品が成立している最大の理由は、「何を再現し、何を強化するか」の取捨選択が明確だからだ。すべてをリアルに置き換えるのではなく、物語の核である“共存への視点の転換”と“飛ぶ体験”にリソースを集中させている。その結果、ストーリー自体は既知であっても、体験としては新しく感じられる構造になっている。

2025年版の『ヒックとドラゴン』は、実写化の意義を「現実に近づけること」ではなく、「感覚を拡張すること」に見出した作品だ。物語の新規性よりも、同じ物語をどれだけ異なる手触りで再提示できるかに重きを置いている。その意味で、この映画はリメイクというよりも、“翻訳の成功例”に近い。アニメ版で描かれていた感情やテーマを損なうことなく、別のメディアとして成立させた点に、この作品の価値がある。