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浮遊家具

映画 大好き また 始めたいと思います。黄斑変性、SLE、双極性障害で仕事ができなくなり、一人、家の中にいる自分、置き場所のない浮遊して漂う家具よう。ただ、時間だけが進んだ、治癒は進み現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ

ティム・バートン監督によるストップモーション・アニメの第2弾。ジョニー・デップが声優として出演。結婚間近の青年ビクターが死者の世界に引きずり込まれることからはじまるダークファンタジー・ラブストーリー。






製作国・地域:イギリス上映時間:77分


監督

ティム・バートン

マイク・ジョンソン

脚本

パメラ・ペトラー

キャロライン・トンプソン

ジョン・オーガスト

出演者


     役名              原語版声優           日本語吹替

ヴィクター・ヴァン・ドート      ジョニー・デップ            木内秀信

コープスブライド (エミリー)      ヘレナ・ボナム=カーター      山像かおり

ヴィクトリア・エヴァーグロット    エミリー・ワトソン         小林さやか

ネル・ヴァン・ドート         トレイシー・ウルマン        さとうあい

ヒルデガード                            定岡小百合

ウィリアム・ヴァン・ドート      ポール・ホワイトハウス       鈴木勝美

ポール・ヘッド・ウェイター                     いずみ尚

モーデリン・エヴァーグロット     ジョアンナ・ラムレイ         宮寺智子

フィニス・エヴァーグロット      アルバート・フィニー        土師孝也

バーキス・ビターン卿         リチャード・E・グラント        山野井仁

ゴールズヴェルス牧師         クリストファー・リー        家弓家正

グートネクト長老           マイケル・ガフ           西川幾雄

クロゴケグモ             ジェーン・ホロックス        まるたまり

ミセス・プラム                           磯辺万沙子

マゴット               エン・ライテル           チョー

東西屋                               大西健晴

ちび将軍               ディープ・ロイ           宮田幸季

ボーンジャングルズ          ダニー・エルフマン         南木直樹

エミール               スティーブン・バランタイン     岩崎ひろし

厳粛なビレッジボーイ         リサ・ケイ             本城雄太郎






つぶやき

この作品は“死と生”という重たいテーマを、恐ろしいほど軽やかに、美しく、そして優しく描き切った稀有なアニメーションだと思いました。ストップモーションで作られた世界は、人形たちが息を吹き込まれた瞬間から、まるで演劇を観ているかのような温かみがあって、特にヴィクターのぎこちない所作やエミリーの可憐な身のこなしは、アニメならではの誇張と、人間くさいリアリティが絶妙に同居している。

まず印象的なのは、生者の世界と死者の世界のコントラストだ。どちらが本当に“生きている”のか、観客に問いかけるような大胆な構図になっていて、生者の世界はグレーで冷たく、どこか空気が張りつめている。一方で死者の世界は、鮮やかで賑やかで、自由に満ちている。この反転した世界観は、ティム・バートン作品らしいブラックユーモアに満ちているが、同時に「生を楽しむことの大切さ」を静かに語りかけてくる。

エミリーの存在は、この物語の心臓部分だ。彼女は悲劇と共に死を迎えたにもかかわらず、悲しみや執着に縛られているだけのキャラクターではなく、純粋で、誰よりも愛に憧れている。その姿は観ているこちらの胸を強く締めつける。特に、ヴィクターとヴィクトリアの絆を悟って“身を引く”シーンは、彼女自身の物語に静かな幕が下りる瞬間であり、同時に彼女がようやく過去から解放される救いの時間でもある。あの白い蝶が羽ばたくラストは、悲しみと安堵が穏やかに混ざり合った、忘れがたい余韻を残す。

音楽についても触れないわけにはいかない。ダニー・エルフマンの楽曲は、バートン作品の空気そのものを形作っていて、特にピアノを通じて描かれるヴィクターとエミリーの心の交流は、言葉以上に雄弁だ。ストップモーションの骨がきしむような音、ろうそくの揺らめき、足元の布の擦れる感触……それらと音楽が一体になって、幻想的でありながらどこか切ない、唯一無二の世界を形作っている。

改めて思うのは、『コープスブライド』はホラーでもラブロマンスでもファンタジーでもありながら、そのどれにも完全には収まらないということだ。これは“死後の世界を描く映画”ではなく、“愛に不器用な人たちの物語”なのだと思う。それぞれが抱える孤独や不安、そしてほんのわずかな希望が丁寧に積み重ねられ、最終的には誰もが自分自身を見つめ直すきっかけをくれる。

ティム・バートンらしい陰鬱さと、驚くほどの優しさが同時に存在するこの映画は、観るたびに新しい感情を呼び起こしてくれる。現実が少し息苦しいとき、ふとこの作品に戻りたくなるのは、生きることの軽やかさと、愛することの重さの両方を、静かに抱きしめてくれるからなのかもしれない。