昨日のコメント欄である方から「長谷川一夫さんとの共演はありましたか?」
とご質問を受けました。

そう云えば昨夜「新にっぽんの芸能」で長谷川一夫先生の特集が放送されていましたね。
ついうっかり録画し忘れてしまいました。

かっての「盲目物語」の舞台放送や大河ドラマの「赤穂浪士」またタカラヅカの
「ベルサイユのばら」の演出など懐かしい映像がダイジェストで流れたみたいです。

コメント欄で思い出しましたが時すでに遅し・・・(笑)
でも今は配信と再放送がありますね、それを録画予約致しました。



以前にも書きましたが私、長谷川先生と舞台をご一緒したことはありませんが
1979年(昭和54年)8月の明治座で林与一さん 先代門之助さん 
甲にしきさん 長谷川稀世さんの「鬼あざみ」と云うお芝居に出して頂いた事があり
その時の演出が長谷川一夫先生でした。

私は当時27歳。

 

この時に私がこのお芝居に出させて頂きましたのは、なぜかと申しますと・・・

その前の月が歌舞伎座で『伊達の十役』をやっておりまして、出演しておりました。

その際に、狂言方の人から「8月の明治座の人数が足りない」という情報を得まして、

それなら、翌月お休みなので、是非とも出してください!と直談判したと云う訳なのです。



お稽古などでは、とてもとてもお話しできるような立場ではなかったのですが、

舞台稽古の最中、魚屋の扮装でたまたま長谷川先生のそばを通りましたら、
「魚屋の衣裳はこうやって着なさい。」とまだ駆け出しの私に細やかに
衣裳の着方をご指導下さいました。

初めて長谷川先生と交わした言葉、これは私の宝物です(笑)


私の父はよく長谷川先生のお芝居に出して頂いていたので
舞台はよく見に行っておりました。

長谷川先生、照明の使い方が非常に斬新的でした。

例えば梅田コマ劇場で「藤娘」を踊られた時、本来の歌舞伎舞踊では幕が開くと

そこはすでに藤の木の前で明るいのですが、長谷川先生の演出は薄暗い舞台で幕が開き
藤娘が後ろ向きでせり上がって参ります。

藤は天上から大きな花が吊り下げられております。

鼓の音でせりが上がり舞台に止まる頃に正面を向かれると同時に
曲が始まり全照明が一斉に明るくなります。

その華やかさにつられて思わずお客様は感嘆の息をはかれ一斉に大拍手です(笑)
私は「うわ~ 上手いなあ~」と感心しましたね。

長谷川先生 女形をされるには決して小さくはなく 
それよりも藤の花を大きくしてご自分を小さく見せ 舞台稽古の時なども
照明の位置などは念入りにチェックされていたのだそうです。


歌舞伎座で那須の「与一」を踊られた時も七三すっぽんから後ろ向きで
せり上がって来られ如何にも馬に乗っているが如く正面を向かれると
お客様は大拍手と云う独特の踊り方でしたね。


お嬢さんの長谷川稀世さんとは、後年共演させて頂き、その時にも

「鬼あざみ」の話をさせて頂きました。

写真も撮らせて頂いたのもいい思い出です。

コメント欄のお陰で長谷川先生の思い出が蘇りました(笑)

「新にっぽんの芸能」長谷川先生の特集の再放送は9月8日午後2時15分から
NHK‐Eテレビでございます。

見逃された方はぜひご覧下さいませ。