今月の歌舞伎座での『義経千本桜 四の切』ですが、猿之助さんの完全復活
を記念してか、一門そろっての演出がなされております。

舞台をご覧になられた方はもちろん、お正月にも完全テレビ中継がされましたので
全国の皆様に、特別演出の『四の切』を見て頂けましたのは本当に嬉しい事です。
 

 

この演出にすると聞いた時には、一体どこに誰をどう出すの??
と「?」がたくさん飛びました。すでに、主要な配役は発表されておりましたので(笑)

幕切れの勢揃いのお見送りとともに、普段の演出では腰元6人が出る場面を
法眼妻飛鳥、局、近習、腰元のメンバーにした時には、思わず「なるほど」と。

私も近習で出演させて頂いております。

 


先日、家人と話しておりまして聞かれました。
「わかれ、わかれにぃ の役って何年ぶりなん?」と。

なんやその表現と思わず笑ってしまいました。

確かに「なんと皆さん・・・」は、いろいろな場面で使われる発語ですが、
「わかれ わかれにぃ」と云われると『四の切』の庭先のあの場面が真っ先に思いつきます。

私たち仲間内では「つなぎの腰元」や「ぼんぼりの腰元」と云っております。
それはさておき、はて、そう云えばこのお役を最後にやったのはいつだっけ?
早速調べてみました。

最後に勤めましたのが、1996年12月の歌舞伎座。
忠信編として「蔵王堂の場」までの通し上演が最後に行われた時です。
それ以降は、名題になってからは飛鳥の役をすることが多くなっておりました。

最後の「わかれ わかれにぃの腰元」、もう25年前の事でしょうか? 
もちろん、名題にはなっておりません。
歌舞伎データベースで念のため確認しますと、

腰元撫子 = 市川段之(初代) 
腰元千鳥・腰元 = 中村芝のぶ(初代) 
腰元梢・腰元 = 市川笑羽(初代) 
腰元桔梗・腰元 = 市川笑子(初代) 
腰元小菊・腰元 = 中村又之助(2代目) 
腰元紅葉・僧兵 = 市川延夫(初代) 

なんでやねん!ですね(笑)
みな「わかれわかれにぃ」の腰元と、別に腰元を勤めている中、私はこの後
蔵王堂の僧兵になっていたのです(笑)
あ、その前に吹き替えの忠信もやっておりました。


何度か書いたことがございますが、かなり昔の事です。
玉三郎さんと猿翁旦那が久しぶりに『四の切』で共演された時のこと。

私の事を女形の役者と思われたのでしょうか? 腰元のお役を玉三郎さんから
丁寧にご指導いただいた事がございました。

その後の舞台稽古の時に、腰元で出てきた後に、忠信の吹替で出て来た私に
まずびっくりされ、さらにその後に 僧兵で出て来た私に二度びっくり。

そりゃそうですよね、女形として認識してくださっていたと思いますのに。

その後に頂いた言葉がこれです。
「あなた 女形かと思っていたら 吹替もして 僧兵にも出ているの?
 あなた一体何??」

すみません(笑)
本当にすみません(笑)

もちろん吹替や僧兵がもともと本役でしたので腰元はそのあとからと云う事になります。

ですがこの場面の「わかれわかれにぃの腰元」今回改めて何度やったのかを
自分の出演記録から抜き出して数えてみました。
公演数としては19回。

何日間の公演かと云う事があやふやな記録もありますので、おおよそ数えてみますと
海外公演も含めて450回ほど出させて頂いております。


最後の腰元が25年前。
今の猿之助さんよりも少し若い頃に このお役は一旦卒業したことになります。


まさか、今月再び同じく ぼんぼりをもって、「わかれわかれにぃ」という台詞を言うとは。
それも、450回も着続けた腰元の衣裳ではなく、普段着慣れた近習の衣裳を着て、
男性の姿で 再び戻って来られるとは 思いもよりませんでした。


それでは、450回に及ぶ腰元役

そのお役のはじまり は 

ちょっと長くなりすぎそうですので、明日に続きます(笑)