大工技術伝承に取り組む
いま、環境への配慮などから、建設業界では住宅の長寿命化が課題となっている。日本国内では木造の住宅が多く、うまく長持ちさせるには高度な技術を持った職人が必要とされている。
円昭代表の前田が理事長を務めている「職業訓練法人愛知県建設センター」では、教えられる機会が少ない伝統的な大工技術の継承に取り組み、2009年度には建設業の経験者を対象に規矩(きく)術などの高度な技術を教える講座を新設する計画となっている。
どのような考えで大工技術の伝承に取り組んでいますか?
建築補修の仕事をしていて、住宅の価値は大工の技量の善し悪しで決まると感じました。 例えば、北海道の住宅では断熱材の配し方によって結露などの問題が生じたり、省エネの効率が違ったりと(施工した)大工の能力や心配りで差が生じます。 正しい知識を得て、技術や技能をきちんと身につけた人を世に出さなくては、と思うようになりました。
どのようなことを身に付けて欲しいと考えていますか?
電動ではない、ノミなどの手作業の工具をうまく扱えるようになってもらいたい。 その方が木材の木目や節などをよく知ることができ、正確で繊細さのある作業ができるようになります。 昔からの技術と現代の技術を合わせて、よりいいものにしていって欲しいと思います。
伝統的な大工技術というと宮大工の仕事をイメージされることが多いです。 ただ、宮大工は寺社など特殊な建築物を扱う仕事で、構造からして住宅とは違います。 愛知建設センターではそれとは違った、住宅などを建てる『普通の大工』の養成を目的としています。 生活する場の建設に、伝統技術が活かされるようにしたいと考えています。
具体的にどういった取り組みを考えていますか?
すでに実施している大工技能養成科の他に、さらに高度な技術を教える講座の開設を検討しています。 建設業で働いていて、より高度な技術の習得を必要とする人を対象としています。 カリキュラムは、規矩術を中心にどのようなニーズがあるのかを参考にして決め、指導員については現在調整している最中です。 伝統的な大工技術はこれまで徒弟制度で教えてきたもので、学校形式では教える側も経験がありません。 様子を見ながら計画を進め秋口の開始を目指しています。
今後の展望としては、愛知県建設センターを大工や木造建築についての情報が集まる拠点にしたいと考えています。 大工は、ライフスタイルの変化に合わせて学んでいかなければなりません。 伝統的な技術だけでなく、大学などでの木材関係の研究成果や、職に就く機会も提供していきたい。 今はまだスタートラインだと思っています。
大工技術の伝承と発展について、行政に対して要望などはありますか?
今は、若者から大工の仕事が敬遠されてしまっています。 学校教育の早い段階から、もっとこの仕事に興味を持ってもらえるようPRしてほしいですね。 子供の頃は、建設現場の重機などに興味を持つことが多いです。 そうした興味を伸ばすために、『ものづくり』そのものの魅力を伝えられるように教育の現場から変えていってほしいと思っています。
建通新聞から引用
前田由紀夫