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今日は外国人がひしめく六本木にいた。
昼食はいつものマック。
カウンター席の窓際だ。
横にはオレみたいなサラリーマン。
毛深い。
彼はランチタイムの鬼混みの店内で
おもむろに鏡と毛抜きを鞄から取出した。
鏡を左手で持ち、
必死に眉毛を抜いていた。
抜いた眉毛は几帳面に
マックのナプキンのMの字に沿って一本ずつ並べていた。
徐々にMの字が立体に浮かび上がってくる。
アバター。
そして腕時計を外した。
お次は鼻毛を切っている。
時計のベルトに切った毛が挟まるのを防いだようだ。
おそらく初犯ではない慣れた行動だ。
アバターになったMのロゴの上に
満開の鼻毛から鼻毛吹雪が舞散る。
そんな彼の行動は不快な光景ながらも
舞散る鼻毛のパレードが
春の息吹きを感じさせる。
僕はタバコを吸いながら生命の尊さを噛み締め、
彼の鼻から繰り出される森林伐採をずっと眺めていた。
お鼻見。
春は出会いもあれば別れもある。
僕には彼が
『バイバイ鼻毛。
この六本木の薄汚れた空気から僕を守ってくれてありがとう』
そう鏡越しの自分に語り掛けているように見えた。
きっとこの鼻毛を伐採したら
鼻の穴をゴルフ場にするのだろう。ゴルフブームだし。
そんな妄想が掻き立てる。
彼が席を立ち去った後、窓辺には一本の極太の鼻毛が置き去りになっていた。
その一本の鼻毛の窓の奥には
ラーメン店の看板
天下一品の文字が力強く描かれていた。
そんな自分も家のなかでは大体鼻毛切ってます。
ブログネタ:家の中では何してることが多い? 参加中
ブログネタ:学校行事で好きだったもの 参加中パラパラと雨の降る夕暮れ時、僕は人込みに紛れながら
地元の駅の改札を出ようとした。
その時、ある一人の女に声を掛けられた。
『PASMOをチャージして下さい』
機械的なその一言で僕の行方は遮られた。
そして後ろのおっさん達も僕に行方を遮られる。
僕はおっさんの流れに逆らい、産卵時の鮭のようにPASMOをチャージしに向かった。
サーモン。
そんな時、彼と再開した。
彼と最後に会ったのは小学校の卒業式以来。
当時の彼は襟の伸び切った、
沢山のシミが付いたグンゼのようなTシャツを
いつも着用していた。
偶然にも彼は清水という苗字だった。
シミにもシミーズにもかかっているその名前は、
どこか神様の悪戯にさえ感じる。
そしてズボンはゴム製の霜降りジーパンがトレードマークだった。
朝を繰り返す度に少しずつ増えていくシミーズのシミは当時、
アンパンマンごっこの後押しもあり、一部では
カビルンルンと囁かれていた。
やなせたかしは残酷だ。
そんな彼も現在ではタイトなクラッシュジーンズが股間にねじ込む
イマドキの青年に成長していた。
昔の彼は毎朝ハチミツの匂いが口から漂っていたのだが、今は微かだがハンバーグのような香が漂う。
『バイト先なのだろうか。きっと制服にはデミグラスソースのシミが付いているんだろうな。』
なんて妄想を掻き立てる。
もう当時の彼の面影はなく、僕も最初は誰だか全く気付かなかった。
昔のシミーズはすかいらーくのようにどこかへと消えてしまったんだ。
そんなタイトな彼も昔はだらしなかったようで、よく給食の割烹着を洗い忘れ、罰として給食当番をヘヴィーローテーションさせられてたのを覚えている。
罰とはいえシミ付きグンゼがトレードマーク。
洗ってない割烹着を着用し業務を懸命にまっとうしようとする彼の姿には、
はっきりいってみんな困惑していた。
しかし彼の当番は毎度お馴染みだ。
回をこなす度に着実とスキルが磨かれていた。
いつしかスパゲティのパスタの量、五目あんかけ焼きそばの麺の量といい、
クラスメイト全員分を均等に分け与えることも、
いとも簡単にやり遂げるのであった。
彼はその屋台のおっさんのような汚い風貌から
チャルメラと呼ばれた。
パンを乗せる為にトングを握る彼の姿は、早朝の寒空の下アルミ缶を拾い上げる鉄拳の平八に似た地元の土手のおじさんを思い起こさせる。
でも実はそんな彼、今不動産の営業らしい。
鉄拳じゃなく宅建だ。
僕は今でもたまに、炊きたての炊飯器のフタを開け、吹き出た
蒸気のオナラのような香りを嗅ぐと、彼の霜降りジーパンを思い出す。
昔の僕も、霜降り肉に有り付けない今の僕を見たらエレベータ
ーの中でこっそりカメハメ波の練習をする事も辞めていただろう。
これでまた、霜降りを履かない子どもと霜降りを食べられない
大人が増えそうだ。
そんなわけで
僕はやっぱり好きな行事は給食の時間



