ある日O氏から電話があった。
内容は覚えていないが、筆者の抱いた印象は、以下。
おかしい。
あやしい。
それ以降、頻繁に電話がかかってくるようになった。
朝晩2回3日間連続かかってきたこともある。
この電話攻戦を複数人に仕掛けていたら、相当の暇人である。
O氏は、端々に“結婚”の文字を散りばめる。
「あられちゃんに最後の人になってほしいと思ってる。」
「僕たちはすごく価値観が合うよね。絶対結婚すべきだと思う。」
「信じてくれないなら、今度会うときゼクシィ持っていくからな。」
「ご両親への挨拶は、このレストランにしようと思う。6月くらいかな。」
目論みは不明。
筆者に、詐欺でもぎ取るような財産はないし、ネットナンパでワンナイトを狙いたくなるような上等な女でもない。
ただのヤバい奴か。
そもそも、ここまで付き合っている筆者もなかなかの暇人である。
「わたしは話半分で聞いてますけど、30代女性にそういうこと言うのやめた方がいいですよ。結婚詐欺だと思われますよ。」
プロフィールでは開業医となっているが、O氏はまだ開業していない。
知人とともに都内に7月開業予定だという。
現在は名古屋で非常勤の勤務医だそうだ。
おそらく記載された収入も、開業した暁の予想価格。
筆者「Oさんは苗字なんておっしゃるんですか?結婚するなら、名前も大事だなーと思って」
O氏「〇〇だよ。」
氏名を入手。
おしえてGoogleせんせーい
医師であれば、氏名、診療科目、出身大学がそろえば簡単に特定できるはず。
しかし。
検索して現れたのは、別人。
出身大学も、診療科目も、氏名も同じ。
年齢もほぼ同じ。
違うのは、勤務する土地。
そして、婚姻状況。
同姓同名のその医師は、既婚、二児の父であった。
どんなに探しても、O氏と思しき医師の情報は見つからない。
筆者は動揺した。
写真を見比べる。
別人といえば別人だが、同一人物といえば同一人物。
確信が持てない。
FBのアカウントも探した。
O氏のものと思われるアカウントは2本存在する。
1本の友達は、医療関係者や同じ高校出身者など、本アカウントと見える。
もう1本は、アフィリエイト等商用アカウントの友達ばかりで、アプリ用ダミーアカウントの様子。
同姓同名の医師のアカウントもまた別に存在する。
O氏は一体何者なのか。
筆者はまた、医師に騙されようとしているのか。
何もかもを嘘で塗り固めていた耳鼻科医の記憶が、脳裏をよぎった。