毎日、桜並木を通って通勤している。

この季節には、多くの人々が足を止め、薄紅色に染まる空を見上げ、笑顔になる。



一年で一番幸せな季節。



そんな桜並木の足元には、クリスマスローズが植えられている。

彼女たちは、桜の蕾が膨らみ始めたころから、咲いていた。
寒い雪の中でも、ただひっそりと、うつむいて。



筆者は昔からクリスマスローズが好きだ。
その控えめな出で立ちと、お洒落な色。
厳しい寒さの中で咲く、力強さ。



しかし、この桜並木で彼女たちを気に留める者はいない。
皆、上を見上げ、足元になど目もくれない。
それどころか、桜を見ようと彼女たちを下敷きに腰掛ける。



この光景を見ると、毎年胸が苦しくなる。

彼女たちのうつむいた姿が、まるで桜から目をそらすようで。
自分など咲くべきではなかったと悔やむようで。



筆者は、彼女たちに自分を重ねているのだ。

皆に愛される花ではない。
誰も気に留めない地味な花。
美しい花から目をそらしたくなる気持ちはよくわかる。

しかし、わずかな望みを持っていた。
地味な花に目を向けてくれる人がいるかもしれない。
1人でいい。誰か。




久々に開いた婚活アプリで、男性からこんなメッセージを頂戴した。

「女性は異性に対するニーズが多様だと思うんです。外見がイマイチでも内面で逆転できる男性もいるし、草食系好きな女子もいるし、肉食系好きな女子もいるし。年齢で見ても40代のおじさま好きな方とかもいるし。」

男性の方が好みの分散は小さいです。ですが、こと外見の話で言うと、女性は化粧とか、服装とか、男性より努力のし甲斐があるんですよね。だから、ニーズは偏ってるけど、そのニーズに合わせて、努力した女性が勝つのかと。」



↑この方もそうであったが、アプリの男性は親切である。
見ず知らずの筆者に、桜の正しさを教えてくれるのだから。



知ってます。
わかってはいるんです。
わたしだって、桜が好きだもの。




というわけで、自我を捨て、自尊心を捨て、お見合い写真を撮り直した。

これでダメなら、花ではなく、シダ植物だったのだと諦めよう。


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