藍色の傘

藍色の傘

一日中、猫を膝に乗せて、本を読んで暮らしたい。

⠀「夜の谷を行く」桐野夏生




連合赤軍が舞台の小説は結構読んできた気になっていたが、これはアジトから途中で逃亡した池田啓子の40年後の物語で、新しい角度のものだ。

連合赤軍の奴らも、啓子を取り巻く肉親も、啓子自身も、それぞれに言い分はあるだろうが、どいつもこいつも身勝手だ。

それは40年前も今も変わらず、人間の〝業〟とでもいうのか。


結末は、うーん…。

そういうのを皆さんお望みなのか…。



NHKのドラマ「燕は戻って来ない」が良くて、積読本にしていたものを引っ張り出して一気に読了。

勇気を持って踏み出した先が正しい場所とは限らないが、正しさは往々にして退屈なものだ。

時代が違えば、私も洗脳されて永田〝フーセン〟洋子の下で自己批判していたかもしれない。







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⠀「王国」中村文則




「掏摸」の姉妹篇。

帯には「美しき犯罪者vs絶対悪」とあるが、クズのハニトラ女vsイカれた支配者で良い。


誰しもハニトラ女に感情移入してしまうのは仕方なく、一気に最後まで読ませる。


後半は風呂敷を広げすぎて余計なエピソードと思える部分もあり、消化不良気味なのは否めない。


中村文則氏の奥深くには木崎的なものがマグマのように発泡しているのか、

神を否定し、救済を求めない諦観思想が横たわっているのが中村文則イズムなのかもしれない。


ちょっと疲れた。








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⠀「掏摸」中村文則




掏摸を生業とする男は金持ちしかターゲットにしないことが彼なりの矜恃だったが、裏の世界に巻き込まれ、否応なく仕事をさせられることになる。


中村文則は嫌いじゃないけど息苦し過ぎる。


読み応えは充分すぎるほどあるが、このストーリーなら、やはり伊坂幸太郎で読みたいかも。


そうは言っても姉妹作の「王国」も読むけれども。


2010年大江健三郎賞受賞作。

2012年、英訳が米「ウォール・ストリート・ジャーナル」が選ぶ年間ベスト10に選出された。








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⠀「ごんぎつね  でんでんむしのかなしみ」新美南吉




大正から昭和初期に書かれた新美南吉の童話集だが、教訓めいた話は少なく、主人公は皆、ちょっと間抜けだったり生真面目過ぎたり頑固だったりだらしなかったりで、どの話も懐かしく、愛しい。


息子たちに繰り返し読み聞かせをしていた「手袋を買いに」は今も坊やの狐の台詞などは憶えているが、黒井健氏の美しい絵のない活字だけの物語は違う趣きがあってまた何度も読んでしまった。


美智子さまがお好きだという「でんでんむしのかなしみ」を初め、題だけは知っていたが読むのは初めてのものばかりだった。


ごんぎつね
でんでんむしのかなしみ
花のき村と盗人たち
久助君の話
おじいさんのランプ
和太郎さんと牛

(詩)
朝は
貝殻

最後の胡弓弾き
手袋を買いに
花を埋める
小さい太郎の悲しみ

(詩)
春風
疲レタ少年ノ旅

以上27篇


「和太郎さんと牛」は三回読んだ。

美しい六篇の詩は必読。

今更ながら早逝が惜しまれる。







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⠀「悪霊(下)」ドストエフスキー




混乱極まる「慈善パーティ」がようやく終わり「河向こうの火事」辺りからやっと物語が動き出すが、
四五日読まないとすぐ「この人どういう人だっけ」と相関図や覚え書きの確認が必要になり、
読了までには何しろ時間がかかった。


7週間もあちこち置いたり持ち歩いたりしたので、
カバーは破れてボロボロになった。
読んでも読んでも重く苦しい展開の連続であるため、気乗りがしないのも原因の一つだろう。


そもそも日本人に「無神論者」の認識がどこまでできるのか、というドストエフスキーを読む時のモヤモヤが、この「悪霊」においてはMAXである。



ついに640ページまで来て、やっとこれで「完」だ、何とか読み切った、終わってみれば手強かったけど面白かったなあ…

と安堵したのも束の間、

次の641ページからは「スタヴローギンの告白」の章が始まり、実はこれが最も読むべき章だった。


最後は一気に読んだが、どっと疲れた。


消化不良感がどうにも否めないので、次は亀山郁夫の新訳で再挑戦したい。


必ず!




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