煙に巻かれて | MK from ASOVOYAGE

MK from ASOVOYAGE

その時その瞬間に感じたことをありのままにそのままに。素直に表現。
遊び場 Viva 楽しむ Vida 
"いざ参ろう あそVibaへ"

活発なあそ坊の日記


砂漠の中、どこの砂漠だろうか。

ジェットが故障し、不時着してから、勘をたよりにひたすら歩いて二つの夜を越した。


かわらず昼間は太陽に照らされホットな砂の上を、夜はうってかわって寒い真っ暗闇を星がきれいだなと無理やり気分をコントロールしてここまで来たが。


「ふぅ~限界だ。ここが俺の墓場かな」


岩に腰かけ息を整える。



空腹

疲労

乾き



さすがにここまでのようだ。


思い返すような人生でもない。

でも悪かった人生でもない。


お世辞でもいい人生だったとは言えないが、俺らしい人生だった。


と、納得することができる人生だ。


「・・・まぁこんなもんだろう」


不思議なほど、この現状を落ち着いて受け入れている自分がいる。


思えばむちゃくちゃな行き当たりばったりの自由きままな生活。ここまで生きてこられたのが信じられないぐらいだ。


何度も死を間近で感じた。なんどもこれはもう駄目だなとおもった。それでもなぜか俺はまだ生きている。


もしかしたら今回もなんとか切り抜けられるんじゃないかと楽観的になっているのかもしれない。


「・・・腹減った」


こんなことになるなら、家においてあったパンを食っておくべきだった。


次からは食べよう。

旅に出る前は食べよう。

次があればだけど。


思い返すような人生ではないと思いながら思い返している自分がいる。

矛盾野郎だ。笑えてくる。なんか笑えてきた。


右手でベルトに収めてある銃に触れる。冷たい感触。銃を取り出して構える。この手触り、腰に手を当てて銃を取り出し構えるまでのしぐさ、体に染みついている。



銃弾は二発入っている。



何発入っているかは銃の種類にもよるが、大体のものは銃をもっただけで分かる。


それだけ銃に触れてきた。人も殺した。


体にはいくつか銃痕が残っている。右脇腹と左肩の傷が痛む。一人の人物に撃ち抜かれた傷だ。生きていたのが不思議だ。激しい痛みで気を失った。


一瞬の出来事だった。


あれは本当に一瞬だった。


なんていうんだったか。そんな言葉があったはず。えっと、、、。思いだせない。


最近こういうことが多い。いや、もともとか。


記憶力が悪いのか、そもそも覚えようとしていないのか。たぶん後者だろう。


自分の事なのにたぶんとしか表現できない事が切ない。あ、思いだした。刹那だ。でも今となってはどうでもいい。俺が思いだしたいことを思い出そうがそうでなかろうが。この世界にはなにも影響はない。


飛躍しすぎか。


もう考えることすらしんどくなってきた。それでも考えなければいけないことがある。行動すべきだと体が自分に訴えてきている。 


「あれは・・・竜巻か」


まだ距離は大分離れているが心なしかこちらにむかって来ている気がする。


「あれくらったら俺は死ぬだろうな」


言葉に出してみても、未だに実感がない。


どちらにしてももう走って逃げる元気もない。立ち上がることすら億劫だ。そもそも考えることすら面倒になって来ている。


どこまで行くのか。


このままだと息をすることすら面倒な作業に感じるかもしれない。


普段は無意識で行なっている行動のサイクルが意識しないと通常通りできなくなってきている。



おもしろい。

 

なぜだかそう感じる。遠くで見えてあの大きさの竜巻だ。相当でかいだろう。すでにさっきよりも格段に大きく見える。


強い風を肌で感じる。

足元の雑草も震えている。 


お前達も初めて経験するのか。


何事も初めてはいいものだ。わくわくする。なんだか少し元気が湧いてきた。


運に任せよう。ギャンブルだ。


もし俺がまだ生きるべき存在ならおれは助かるだろう。そうでないならあの竜巻に巻き込まれて死ぬだけだ。


命がけのギャンブル


まぁ勝っただけで少し寿命が延びるぐらいだが


湧いたきた元気を活用して、

構えていた銃を空に向けて一発撃つ。


「パァン」


銃声が鳴り響く。ジンジン体に伝わってくるこの振動。銃の先端を鼻の先にもってくる。


硝煙のにおい。この匂いだ。この匂いがたまらなく好きだ。


純粋な気持ち。

心の安定。


深く鼻から息を吸う。そして名残惜しさを残して口からゆっくりゆっくり丁寧に吐き出していく。


「何事も初体験はいいことだ」


口に出して言ってみる。

最後は笑いながらって決めたんだ。 


「はっはっは」


笑ったことで体から力が抜けて、岩から落ちて砂漠の上にうつぶせで倒れ込む。


目をつぶる


体中で振動を感じる。こちらに近寄ってきているらしい。


神に祈ったりはしない。

信じるのは自分だけだ。裏切られてばかりだけど。俺が信じなきゃ誰が信じてくれる。


振動が強くなる。


風の轟音で耳はその役割を機能できていない。風の音しか聞き取れない。


そう思うと聖徳太子は凄いな。何人もの声を聞きわかることができるなんて。特技だよ。特技。



ってちょっと待て、死ぬ前に最後に考えることが聖徳太子なのか。こんなもんなのか。


これは誰かに伝えたかったな。俺が最後に思った人は聖徳太子だったと。


「・・・・・・・・の」


なんか声が聞こえる。気がする。


もしかして聖徳太子か。


なんて事を本気で考える。


死を間近で感じると、いろいろなリミッタ―が外れてとても純粋な思考になり、純粋な受容体制が蘇るらしい。


本気でこの声の主は聖徳太子だと信じている。


笑える話ではないがそんなこと今はどうだっていい。

だが竜巻がくる前にどうやらくたばりそうだ。


気がどんどん遠くなっている。


聖徳太子の声ももう聞こえない。


体の感覚もない。強大な眠気に抗うことができない。抗う様子も微塵もない。すべての細胞が一丸となって動いている。


なんて優しい光なんだろう。

なんて絶対的な温かみなんだろう。


不可抗力だ。


美しい。


あなたの胸に抱かれて、その美しい唇に一度でも触れられるなら喜んで私のすべてを捧げてあなたのしもべになるだろう。



落ちる。落ちる。落ち・・・・・