人間の重心の位置/「動き続ける重心」と「止まった重心」 | 股関節が硬い 徹底究明!中村考宏の超スムーズ股関節回転講座

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骨盤後傾から骨盤をおこし股関節を超なめらかに。体幹と四肢を連動させ動きの質を追及する。運動とは人の重心が移動することである。運動を成立させるべく構造動作理論(Anatomical Activity)に基づくトレーニング方法と身体観察について綴ります。

運動とは重心が移動すること。
構造動作トレーニングでは、この運動が成立するために骨格ポジションを築き上げる。
私はモーションキャプチャー装置による測定 で「動き続ける重心」と「止まった重心」を確認した。
「動き続ける重心」とは、構造動作トレーニングが求めるものである。
重心はアイドリング状態から常に動き続けていて「不安定という安定」を保つ。
「止まった重心」とは、教科書的なものでアイドリング状態がなく「静止した安定」を保つ。
両者の運動の質は全く異なる。


「股関節が硬い」徹底究明!中村考宏の超スムーズ股関節回転講座-重心位置


教科書的には、

地球上の物体にはすべての部分に地球に向かう重力が作用している。
重力は力の方向が平行であるため、その作用点は1つの点に合成できる。
この点を物体の重心という。
重心から地球の中心に向かう仮想の線を重心線という。
人体の重心は3つの要素で規定される。
1、身体があらゆる方向に自由に回転しえる点。
2、身体各部の重量が相互に平衡である点。
3、基本矢状面、基本前額面、基本水平面の3つの面を交差する点。
人間の重心は骨盤内で仙骨のやや前方にある。
重心の位置を足底から計測すると、成人では身長の約56%、女子では約55%の位置にある。
重心の位置はプロポーションによって個人差がある。
小児では相対的に高位にあるために立位姿勢保持が不安定となる。
(引用 基礎運動学)

身体内部の仮想の重心の位置を体表面から観察することができないため、解剖学的指標をもとに理想的な立位姿勢を想定し重心線の指標としている。
例えば、側方からみて、耳垂肩峰大転子膝蓋骨後面外果の約2センチ前部の5つの指標が一直線に整列しているときが重心線に似通っているという。
そのため、多くの人が壁に背中をつけて理想的な立位姿勢をつくろうとする。

この教科書的な基準は後ろ重心だ。
この教科書は古いもので、どのような人たちからデータを集めたのか不明だが、腰痛や膝痛などの筋骨格系疾患のリハビリには向かないし、特にスポーツ選手は、このような姿勢を基準にしない方がいい。
なぜなら、「止まった重心」の姿勢であり適切な重心移動が起こらないからだ。
これで動き続ければ身体に相当の負荷がかかるし、リハビリなら上手くいくのか疑問だ。

さて、「動き続ける重心」を求める構造動作トレーニングでは、人間の重心はお腹辺り(腹表面)を目指す。実際、私の重心位置も後ろ重心ではなかったが、そこまではまだまだ到達していない。本当に姿勢の世界は奥深い。だが、「動き続ける重心」と「止まった重心」を比較できるようになっただけ少しは進歩していると思う。

最近は、骨潰し法というか骨束ね法がマイブームになっていて、私自身の趾(あしゆび)がどれほど眠っているか気づかされる日々だ。どのようなトレーニングも何を目標にするのかということが大切だと思う。

*「完全に静止する立ち方」と「いつでも動き出し可能な立ち方」については趾でカラダが変わる をご覧ください!