"crocodile tears" | 英語の世界観

英語の世界観

私達はことばを通して世界を見ている。そして使うことばによって、見えてくる世界が異なることがある。英語の世界観とはどのような世界であろうか。普段意識しないことばから、その世界観を探りたい。現在ときどきロンドン記事アップ中♪

今回は"crocodile tears"という表現を見てみたいと思います。

たまに英文でも出てくる表現で、今までに英文を読んでいて何度か出会ったたことがあります。

直訳すると、「クロコダイル涙」となります。

「クロコダイル」とは、大形のワニのことです。
昔クロコダイルを専門に捕まえる人がいて、「クロコダイルハンター」などと呼ばれていました。今考えても、彼らのやっていることはとても危険なことだと思います。ただのワニではなく大形のワニなので、更にクロコダイルは凶暴なのです。

このような恐いイメージから考えると、「涙」とは結びつかないように思えますが、いつもどおりロングマン英英辞典(LDCE)の説明を見てみましょう。

shed crocodile tears: to pretend you feel sad, sorry, or upset when you do not really feel that way

最初に"shed"という「流す」という動詞がついていますが、大体の意味は、「本当は悲しく感じていなくても、そのように悲しく感じているふりをする」ということです。

日本語訳には、「いつわりの涙」「そら涙」などがあります。

由来としては、ワニが獲物を食べる時に涙を流すという俗信からだそうです。


クロコダイルが本当に悲しい気持ちを持って獲物を食べているとは人間は思わなかったのでしょう。実際にクロコダイルに悲しいという気持ちがあるかどうか、本当に「涙」なのかは分かりませんが、"crocodile tears"は人間が観察して出来た表現なのです。クロコダイルの「凶暴さ」と「涙」という相容れない二つをつなげてできた表現だと思います。

こういった表現にも、人間の世界の見方、とらえ方が反映されていることが分かるでしょう。