"cry for the moon" | 英語の世界観

英語の世界観

私達はことばを通して世界を見ている。そして使うことばによって、見えてくる世界が異なることがある。英語の世界観とはどのような世界であろうか。普段意識しないことばから、その世界観を探りたい。現在ときどきロンドン記事アップ中♪

今回も英文を読んでいて出会った表現を見てみたいと思います。

"cry for the moon"です。

文での使用例を上げると、"It is no good crying for the moon."です。

この文では「"cry for the moon"は良くない」という意味になります。

では"cry for the moon"はどういう意味でしょうか?

"cry"「泣く」、"for"「~のために」、"the moon"「月」のように、それぞれ単語を分けて、「月のために泣く」としては通じないでしょう。
では"cry for~"「~を緊急に必要とする」「~を強く必要とする」という熟語を使って、「月を強く必要とする」としても意味が分かりません。


実は"cry for the moon"全部ひとセットで決まった表現なのです。
意味は「不可能なことを望む」や「得られないものを望む」という意味です。
この意味を使うと"It is no good crying for the moon."は、「ないものねだりは良くない」といった意味になるでしょう。

一応ロングマン英英辞典(LDCE)を見てみると、以下のような説明があります。

to ask for something that is difficult or impossible to obtain.
(得ることが難しいことや不可能なことを求めること)

"cry"の他に"ask"が使われることもあります。

実際に月を得ることはできないことから、「不可能なことを望む」や「得られないものを望む」という意味になったのでしょう。

あと一つ付け加えておくと、"moon"は"she"で指示されることがあります。例えば"the moon in her plenitude"(満月)のように、"her"が使われています。つまり「月」という物でも、英語はそれを女性としてとらえる文化を持っているのでしょう。

日本語で「月を求める」と言っても「不可能なことを望む」という意味にならないので、"cry for the moon"は英語の一つの表現として覚えておくといいでしょう。