中央銀行は必要か | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

先日「小さな政府を語ろう 」でKnightLiberty氏も取り上げられていた 一冊を紹介しながら今日は考えたい。

以前、紹介したロン・ポール氏の一冊である。ロン・ポール氏はいわゆる典型的なリバタリアン政治家である。


ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ

この一冊の主張は明白だ。多くの人が自由な経済システムを今や支持している。少なくとも計画経済は基本的には自由な市場に劣るというのが現在の多くの人のコンセンサスである。

が、こと金利に関してはどうだろうか?

中央銀行が金利を決定し供給するマネーの量を調節するという強大な権限を有しているのだ。これは明らかに計画経済である。そこまで行かなくても一部の中央銀行の政策決定者たちが現在の経済状態に適切な金利水準をなぜ決めることができるのか?政府の失敗を数多く見てきた我々ならそういった疑問を持つはずだ。

そういった疑問に適切に、かつ簡潔に答えているのが本書である。

本書の中央銀行への批判は適切だと思わされる部分が多い。本質的に中央銀行から金利や通貨の供給量を決定する権限を奪うべきである。あるいはルールによる運営を徹底すべきであると僕も考えている。そして、中央銀行が適切に短期金利を決定できないことや中央銀行の関係者の発言などによってマーケットや経済に要らぬ歪みが生じていることは事実だと僕も考えている。

一方で、中央銀行の間違いを強調しすぎるのはどうかと僕は思っている。

たとえば、金融危機や市場の混乱時の市中銀行への緊急の融資は少なくとも以前はそんなことをしようものならとんでもないお叱りが来る制度であったから日米ともにほとんどの金融機関が事実上依存せずに資金繰りを行っていたのだ。

それが、いつの間にかここ20年ほどの間に金融危機が頻繁に起こったこともあって各国中央銀行ともそのような緊急融資制度を普通に利用することを推奨するようになった。ひとつはそこに中銀と民間銀行の癒着があると見る向きもあるだろう。が、一方で政治家や経済の混乱を恐れるなんちゃって評論家・マスコミそして世論が中央銀行の危機対応に期待し圧力をかけているという側面があるのを忘れてはならない。

また現代社会においては企業の銀行からの借り入れ依存度は非常に小さいものとなっている。世界中の金融機関が無尽蔵に銀行に資金を貸し出しているがそれが民間経済へ出回らない原因がここにあると言えるだろう。われわれが思うほどに旧式の銀行システムは大きな役割を果たさなくなっているのである。

だから、良くも悪くも現在の中央銀行の役割は強調されすぎているのは間違いない。マネタリズムの伝統を貫くドイツ連銀などはそのことをよくわかっていて金融緩和や信用緩和が決して本質的な問題を解決するものではないと強調している。

むしろ重要な点は政治家や世論が中央銀行に金融緩和をしろというプレッシャーをかけ続けることにある。しかし、それは所詮対処療法(いや、それにすれならない)であり、事態を大きく好転させることはない。また、ロンポールが本書で述べるように中央銀行がない時代や金本位制の時代に経済が悲惨な状態にあったわけではなくむしろ物価は生産性の向上を伴って下落基調にあり人々の購買力がドンドン増していた時代でもあった。

もう一つの重要な点はたしかに中央銀行は仕方なく問題のある銀行を救済しているという点だ。低金利によって銀行が不当な利益を得ているのはどうも僕には納得がいかない。高収益の事業はあまり低金利とは関係がない市場関係の業務であるからだ。しかし、このところの相次ぐ金融機関の救済。(欧州では国家までも!)そして、その後の銀行システムの改革案が規制・規制のオンパレードなのだから上手く行くはずもないだろう。改革の方向が間違えている。安易な規制は物事を複雑にし問題発生時の対処がさらに遅れる原因となるはずだ。

多くの中央銀行家は金融政策の限界を理解している。だから、僕に言わせればむしろ彼らは被害者だろう。金利をおもちゃにしようとたくらんでいる政治家や世論から彼らを守るためにも中央銀行の権限を大幅に縮小すべきだ。

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