バランスシート不況という詐欺 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

先日、資産効果という詐欺 というタイトルの記事を書いた。

そして、経済系のブログを徘徊していると僕と同じような考え方を持つこのようなエントリーを見つけたので本日は紹介したい。バランスシート不況に関して述べている。

バランスシート不況とは、資産価値が大きく下落することで企業や家計が借金の返済に優先的に資金を使うようになり消費や設備投資が盛り上がらず不況に陥ることを言う。リチャード・クー氏などが好きな理屈だ。


Macro and Other Market Musings
というブログのThe Inadequacy of the Balance Seet Recession View というエントリーはこの理屈がおかしい理由を以下のように二つ挙げている。

①多くの負債を抱えている債務者が居るその裏には必ず債権者がおり、彼らは利益を得ているはずである。

②大恐慌後の1933年から1936年の間に、家計は過剰債務を実質ベースで20%解消したが、同時に経済は実質ベースで8%成長した。

前者は理屈から後者は実際の事実からの説明であり、納得がいくものである。

①に関しては企業や個人が固定金利で借り入れている場合には、景気悪化とインフレ率の低下によって固定金利で借りている側は不利益を被る。しかし、貸し出している側は相対的に有利になり利益を得る。また、資産価格に関しても、買った側がいれば売った側もいるので高値で売りさばいた人は有利になっている。

債務者や資産保有者(あるいは特定資産を高値でつかんだ人)の損失ばかりに焦点を当てて、それが不況のすべての原因であるかのように捉えるのは明らかにおかしい。「儲かっている人」、「上手く損失を切り抜けた人」は声を大にして言わないものである。

②に関しては事実だから説明の必要はない。こういった事実があることを我々はもっと認識すべきだろう。

ただし、この筆者はバランスシート不況はないが、貨幣の供給を増やすことが重要であると説いている。このあたりは残念ながら僕と考え方がまるで違う。そのあたりは前回の記事で詳しく書いたので今日は深くは論じない。

もう一方の事実として貨幣を供給することによって日本の経済停滞とデフレは解消していない。この事実をこのブログの筆者も含めて認識すべきだろう。また、同様のことがアメリカで現在進行形で起こっている可能性は高い。

バランスシートの問題が経済にとって「バランスシート不況」と呼ばれるほど大きなものであるとは僕は考えない。いかにバランスシートが痛んでいようとも、そこに投資機会があれば多くの人は投資する。たとえば、現在のアメリカであれば金融機関や事業会社はキャッシュを溜め込み投資(および融資)先がないことに苦しんでいるからだ。また、①の説明で述べたようにすべての人が資産を高値掴みしたわけでも、固定金利で借り入れていた債務者であるわけでもないからだ。また、日本の例で言えば、日本という国が外国資本を拒んでいるわけでもないから、仮にすべての日本人のバランスシートが痛み、投資が不可能な状況があったとしても、外国資本などによる投資は行われる。バランスシートの大きな毀損は経済にとってマイナスであり、時間をかけて調整されるべきものではあるかもしれないが、大きな問題とはならない。

そして、そうであるならば、貨幣をジャブジャブに供給することでこの問題は解決されることもないのである。もちろん、財政政策によって解決されるものでもない。


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