地方分権万歳。地方がんばれ!という声が結構聞こえてくる。
僕自身も多いなる賛成主義者。自分達のことは自分でやるのは当然。都市部からの補助金に頼って生きているのは間違えていると思うし、政治をゆがめる原因にもなっている。自分達の税金を自分達で使うほうが監視の目も行き届くし、工夫次第でもっともっと豊かになる地域も出てくるだろう。
最近の日本の政治を見ていても、地方のほうが危機感を持って元気にやっているなあという印象も強い。ちなみに、イギリスは中央集権が非常に強い国らしいんだけど、キャメロン政権は地方への権限の譲渡を行おうと奮闘中だ。
しかし、地方分権に対する手放しの賛成には僕は若干疑問だと思っている。
おそらく、地方分権は豊かな地域と貧しい地域、成功した地域と失敗した地域の格差をますます広げる結果になる可能性は高いからだ。もちろん、安易な救済は許されないだろうから、破綻する地域だって出てくる可能性は高い。
今の地方分権万歳の風潮の中でそういった現実の覚悟がどの程度できているのかという疑問も僕は若干抱いているのも事実だ。
たとえば、↓のグラフを見てほしい。
1994年を100としたときの2004年時点までの物価の上昇率(を2004年の全国を100として再度計算したもの)各地域で差はほとんどないのが見て取れるだろう。東京は全国平均を100としたら10%程度物価が高いという状態は1994-2004年まであまり変化がなかったようだ。(統計局の全国消費者物価調査より。2004年までの数字しかなかったのでそれを使った。ちょっと古いがそんなに大きな差はないだろう)
日本の場合は中央集権が強いからなのか、経済がかなり効率的なのか、ばら撒きがひどいせいなのかはわからないが、全国であまり実は差がつかないようにシステムができているように思える。(もちろん、CPIだけだけど)
では、日本よりもより地方分権が強いとされるアメリカの場合はどうだろうか。もちろん国土の広さなどのさもあるけれども。↓
1996年を100として2006年まで。(次のEUのデータと整合性を取るために1996年からにし、日本と同じ11年間でわけるために2006年までとした。北東部を100としたとき)
だいたいCPIの伸びが大きい地域と小さい地域で5%程度の差があることがわかる。もちろん、分け方をもっと細かくしたらもっと差がついているのかもしれない。
では、同じ通貨を使い、金融政策はひとつで人の移動も原則自由だが、規制などに関しては各国の裁量に任される部分もあり、財政政策や社会福祉制度などは国ごとに決定できるEUの場合はどうだろうか?
こちらは1996年を100にして2006年まで。別にいまさらという観もあるかもしれないが、CPIの伸び率に大きな格差が出ている。
いわゆる南欧諸国は「構造改革」というものがまったく進まなかったために国の産業の競争力が低く、インフレ率も高いわけだ。
今日は単純にCPIだけを見てきた。ほんとは他の数字も取れば面白いのだろうけど、集めやすい数字がCPIだったのでそうしたまでで、GDPの伸び率なども取ってみれば面白いだろう。
いずれにせよ、ざっくりではあるが、地方分権が強ければ強いほどに格差はやはり拡大すると言う傾向が見て取れるんじゃないだろうか?
この格差はあるべき格差ではあると思う。当然、正しい政策を遂行した地域がメリットを受けるべきだ。
しかし、地方分権は地域間の格差を拡大させる可能性が多いにある政策である点は認識しておくべきだと思う。出遅れた地域にどこまで財政的に補填するのか?破綻しそうになったらどう対応するのか?といった事項は事前に明確に決めておかないと後々大きな問題になることは間違いないだろうから。
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